インナージャーニー
14歳
2026年10月21日に“インナージャーニー”がメジャー1st EP『その瓶を覗けば』をリリース! 今作には、疾走感あるシンガロングナンバーの「Toi toi toi !」や初TVアニメタイアップの「終わらない夜の守り方」、オルタナティブに新境地を開拓した「海底ランデヴー」、そしてタイトルトラック「その瓶を覗けば」など、聞き応えのある全7曲が収録されております。
今日のうたではそんな“インナージャーニー”のカモシタサラによる歌詞エッセイを3週連続でお届けします。第2弾は、音楽に衝撃を受けた14歳の頃のお話です。自身の世界を変えた、あの日の出会い。今、かつての“私”に伝えたいことは…。
音楽に衝撃を受けた14歳の頃の話をさせてほしい。14歳、中学2年生。わたしは注目されたかった。絶対に世界を変えるという根拠のない自信があった。どうして世界はわたしの存在に気づいてないのだろう。自分の部屋の窓から見える横断歩道を歩く人に向かって何度も手を振ってみたり、ポケットの中で中指を立てたり、結局どちらも誰にも気づかれることなく、だけれどそれに安心したり、そういう中途半端な承認欲求を抱えていた。まだ1曲も作っていないというのに!周りから飛び出していたかった。
家から中学校までは徒歩30分。山を登って下ってまた登った先にわたしの通う中学校はある。この通学の時間はわたしの想像や妄想のために用意されていた。今日はどんなことが起こるのだろうか。なぜかわたしを無視してくる女の子は今日も無視してくるのだろうか。好きな人とうまく話せるだろうか。付き纏ってくるあの子を巻けるだろうか。クラスのみんなのこと、別に嫌いじゃない。嫌いじゃないけど気づいたらなんか無理して笑ってる自分がいる。なんとなく薄っすらずうっと居心地が悪くて、全員と対等に話せるけれど、それはきっとすべて上澄みを掬い取ったコミュニケーションだからで。みんな同じ鞄を持って同じ制服を着て同じ靴を履いて、それでなにがわかるというのだろうか。わたしのなにがわかるというのだろうか。本当のわたしのことなんて誰も知らない。
家に帰るとイラストレーターの両親が仕事をしていて、わたしは両親の顔色を伺ってしまう子どもだったから、反抗期は特に目立った反抗もできないまま日々が過ぎていった。父と母の機嫌が良いと嬉しい。けれど本当は、ずっとずっと1人になりたかった。家の中でいい子でいるのは限界があった。わたしが1人になれるのは学校と家の往復かお風呂場だけ。行き場のない感情をシャワーで流しても、胸の奥にはなにかがずっとつっかえていて、少し変な気持ちになる。
中学2年生の5月。息苦しかった吹奏楽部を辞め、自由になった。ピアノ以外に特にすることもなくて、夜22時に向かった勉強机。勉強のお供ってたぶんラジオとかかも。なんとなく横に置いたピンクのラジカセの電源をつけてみる。砂嵐の中必死にチューニングを合わせて手繰り寄せた80.0 TOKYOFM。
宇宙が広がった。知らない音楽が、知らないはずなのに昔から知っているような歌声が、わたしの心のもやもやを一瞬の風でかき消していく。なんだこれ、今聴いてた音楽って全部バンドってやつなんだ。楽しい。ずっと未知のバンドと出会える。ずっと知らない街に住む同い年の子の悩みが聞こえてくる。楽しい。ラジオってすごい。わたしだけじゃなかったんだ。あっという間に2時間が終わって、それが毎日の秘密の楽しみになって、わたしの居場所はここだ、と思った。
そんなふうにして、わたしはバンドに憧れた。SEKAI NO OWARI、爆弾ジョニー、Czecho No Republic、THE BAWDIES、、、TSUTAYAで借りたCDをipodに入れて、登下校30分の想像ロードはいろんなバンドがかわるがわる、わたしだけにライブを届けてくれる最強の道へと変わった。人はひとりだけど1人じゃない、見えないところで繋がっている!作りたい!そうして鴨下沙羅はギターを持って、カモシタサラになったのだった。
今、カモシタサラがかつての鴨下沙羅のようなあなたに言えることといえば、自分の感情に蓋はしなくていいよ、ということと、どんなに傷ついても、友だちがいなくても、全部曲にしちゃえばいいよ、曲が無理なら絵だっていい、なにかひとつ、言葉にできない感情を出せるなにかを持っておくといいよ、と伝えたい!どうにか生きて、10年後の自分と笑って会えるといいね。
<インナージャーニー・カモシタサラ>
◆メジャー1st EP『その瓶を覗けば』
2026年10月21日発売
配信: https://innerjourney.lnk.to/Messageinabottle <収録曲>
01.その瓶を覗けば
02.風のひと
03.Toi toi toi !
04.海底ランデヴー
05.ノイズラジオ(AL ver.)
06.終わらない夜の守り方
07.誰も知らないところ