いろいろわかる… おかゆ ロングインタビュー!「それが、最高に幸せな瞬間なんです…」2019年「流し」からメジャーデビューした 異色の 歌謡曲シンガーソングライター! 最新シングル『渋谷のマリア』! 3作目となるカバーアルバム・シリーズ『おかゆウタ カバーソングス 3』が 2023年12月27日に発売!
インタビューの最後に、サイン色紙の読者プレゼントあり!
OKAYU
おかゆ
5th Single
『 渋谷のマリア 』
Cover Album
『 おかゆウタ カバーソングス 3 』
★「流し」から、2019年に自作のシングル『ヨコハマ・ヘンリー』でメジャーデビュー!
★ 歌謡曲と演歌を歌い、作詞・作曲もする 異色の 歌謡曲シンガーソングライター!
★ インディーズ時代から「おんな ギター流し」として話題に!
★ メジャーデビュー直後に、「流し」で全国制覇達成!
★ 最新シングル『渋谷のマリア』は、キャッチーなメロディが耳に残る歌謡曲調!
★ 3作目となる カバーアルバムは、原点となった歌謡曲を収録!
★ 新たに詞を付けた、平和を祈る歌『Amazing Grace』も収録!
★「母が亡くなってなかったら、歌手になってなかったです…」
★「それが、最高に幸せな瞬間なんです…」
■ シングル リリース 情報
■ カバー アルバム リリース 情報
おかゆ 「おかゆウタ カバーソングス 3」【初回限定盤】
アルバム CD + DVD
2023年12月27日 発売
VIZL-2265
¥5,500
Victor Entertainment
<CD 収録曲>
01 ロンリー・ガール (佐東由梨) (作詞:松本隆 / 作曲:筒美京平 / 編曲:鈴木 豪)
02 翼の折れたエンジェル (中村あゆみ) (作詞:高橋研 / 作曲:高橋研 / 編曲:鈴木 豪)
03 ジョニィへの伝言 (ペドロ&カプリシャス) (作詞:阿久悠 / 作曲:都倉俊一 / 編曲:斉藤真也)
04 CAT'S EYE( 杏里) (作詞:三浦徳子 / 作曲:小田裕一郎 / 編曲:綾瀬 悠)
05 フライディ・チャイナタウン (泰葉) (作詞:荒木とよひさ / 作曲:海老名泰葉 / 編曲:鈴木 豪)
06 くれないホテル (西田佐知子) (作詞:橋本淳 / 作曲:筒美京平v編曲:斉藤真也)
07 夜空 (五木ひろし) (作詞:山口洋子 / 作曲:平尾昌晃 / 編曲:鈴木 豪)
08 グッドバイ・モーニング (サンディー) (作詞:庄野真代 / 作曲:中島 薫 / 編曲:阿部靖広)
09 化粧( 中島みゆき) (作詞:中島みゆき / 作曲:中島みゆき / 編曲:多田三洋)
10 女のブルース (藤 圭子) (作詞:石坂まさを / 作曲:猪俣公章 / 編曲:おかゆ)
11 Amazing Grace (讃美歌より) (作詞作曲不詳 / 日本語詞:おかゆ / 編曲:多田三洋)
*カッコ内はオリジナル歌手
<DVD 収録内容>
ライブ映像(2023.7.2 Veats Shibuya デビュー5周年 記念ライブ「渋谷のオカユ」より)
1 プロローグ
2 朝日楼〈朝日のあたる家〉(ちあきなおみ) アメリカ民謡 訳詞:浅川マキ 編曲:斉藤真也
3 リハ風景1
4 一杯のジュテーム(秋元順子) 作詞:おかゆ 作曲:おかゆ 編曲:おかゆ
5 翼の折れたエンジェル(中村あゆみ) 作詞:高橋研 作曲:高橋研 編曲:斉藤真也
6 リハ風景2
7 枯葉(シャンソンより) 日本語詩:岩谷時子 作曲:J.Kosma 編曲:斉藤真也
8 グッドバイ・モーニング(サンディー) 作詞:庄野真代、作曲:中島 薫 編曲:斉藤真也
9 エピローグ
*カッコ内はオリジナル歌手
おかゆ 「おかゆウタ カバーソングス 3」【通常盤】
アルバム CD / Digital
2023年12月27日 発売
VICL-65906
¥3,300
Victor Entertainment
<CD 収録曲>
01 ロンリー・ガール (佐東由梨) (作詞:松本隆 / 作曲:筒美京平 / 編曲:鈴木 豪)
02 翼の折れたエンジェル (中村あゆみ) (作詞:高橋研 / 作曲:高橋研 / 編曲:鈴木 豪)
03 ジョニィへの伝言 (ペドロ&カプリシャス) (作詞:阿久悠 / 作曲:都倉俊一 / 編曲:斉藤真也)
04 CAT'S EYE( 杏里) (作詞:三浦徳子 / 作曲:小田裕一郎 / 編曲:綾瀬 悠)
05 フライディ・チャイナタウン (泰葉) (作詞:荒木とよひさ / 作曲:海老名泰葉 / 編曲:鈴木 豪)
06 くれないホテル (西田佐知子) (作詞:橋本淳 / 作曲:筒美京平v編曲:斉藤真也)
07 夜空 (五木ひろし) (作詞:山口洋子 / 作曲:平尾昌晃 / 編曲:鈴木 豪)
08 グッドバイ・モーニング (サンディー) (作詞:庄野真代 / 作曲:中島 薫 / 編曲:阿部靖広)
09 化粧( 中島みゆき) (作詞:中島みゆき / 作曲:中島みゆき / 編曲:多田三洋)
10 女のブルース (藤 圭子) (作詞:石坂まさを / 作曲:猪俣公章 / 編曲:おかゆ)
11 Amazing Grace (讃美歌より) (作詞作曲不詳 / 日本語詞:おかゆ / 編曲:多田三洋)
*カッコ内はオリジナル歌手
YouTube で 聴く(YouTube アルバム 全曲 再生リスト)
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おかゆ ビクターエンタテインメント
おかゆ オフィシャルサイト
おかゆ YouTube
おかゆ 歌詞一覧
■ アルバム発売記念 インターネットサイン会
ビクターオンラインストア「おかゆウタ カバーソングス3」リリース記念!インターネットサイン会
開催日時 : 2024/1/13 (土) 19:00 スタート
注文期間 : 2024/1/13 (土) 配信途中まで
配信サイト: ビクターオンラインストア YouTube チャンネル
※ 特製ポストカードにサイン&お客様のニックネームが入ります。
※ 視聴のみは無料。
■ キャンペーン情報
ミュージックブース 文化堂 ヨシヅヤ西春店【愛知県】
2024年 1月21日(日)13:00~
ミュージックプラザ・インドウ 2F イベントスペース【福岡県】
2024年 1月27日(土) ① 12:30~ / ② 15:30~
■ ライブ情報
「おかゆウタ カバーソングス 3」発売記念 年末 Live 【東京】
2023年 12月30日 (土) 開場:16:30 / 開演:17:00
南青山 MANDALA
「おかゆウタ カバーソングス 3」発売記念 LIVE in Breath 【名古屋】
2024年 1月20日 (土) 開場:16:30 / 開演:17:30
名古屋 Breath
「おかゆウタ カバーソングス 3」発売記念 LIVE in 福岡 【福岡】
2024年 1月28日 (日) 開場 14:00 / 開演 14:30
80’s music and culture bar reflex
■ いろいろわかる… おかゆ ロング インタビュー!
5th Single 『 渋谷のマリア 』
Cover Album 『 おかゆウタ カバーソングス 3 』
なんともユニークな、一度、聞いたら忘れない「おかゆ」という名前の歌手は、「平成のおんなギター流し」というキャッチフレーズで、2019年5月に、ビクター・エンタテインメントから シングル『ヨコハマ・ヘンリー』(作詞・作曲:OKAYU / 編曲:野々田万照)でメジャー・デビューした。
その名前だけでなく、「歌謡曲と演歌を歌う歌手」であり、「作詞・作曲もするシンガーソングライター」であるという存在もユニークだ。
さらに、インディーズ・デビューする前から、自ら決めて「流し」を始め、続けていたことが話題となってメジャー・デビューに繋がったという出自も異色としか言いようがない。今の時代、「流し」をやることで歌手になれるとは誰も考えない。そういう意味では、誰も考えなかった「スーパー銭湯」での活動からスターとなった「純烈」とも似ている。
北海道の札幌で生まれた「おかゆ」は、小学生のころから母親に連れられて行っていたスナックで、髙橋真梨子や美空ひばりら昭和歌謡や演歌を聴いて育った。もともと、歌手になるつもりは全くなく、17歳のときには、どうしても「ギャル」になりたくて上京した(一般的に、1990年代、渋谷を中心に活動する前衛的なファッションをする若い女性のことで、その独特のファッションスタイルや文化のことを「ギャル」と言う)。夢が叶い、ギャルとなって、当時、人気の雑誌『egg』などの読者モデルにもなったが、上京後、すぐに、母親が事故死した。
歌好きで歌手になりたかった母親の死をきっかけに、初めて「歌手になる」ということを決心し、オーディションを 100以上受けるが、いずれも落選。しかし、その中のあるオーディションがきっかけとなり、ハタチのころには、水産業界を盛り上げる目的で結成された「ギャルが漁師の好きな演歌を歌う」というグループ「ウギャル音楽部」のメンバーとなった。だが、「おかゆ」以外の 5人のメンバーは、歌手になりたかったわけでもなく、ただ単にギャルをやっていたかっただけだった。
「自分が歌いたい歌謡曲や演歌を聴いてもらえるのは、子供の頃、母親によく連れて行かれていたスナックだ」と考え、2014年、23歳のころ、ギターを練習し、スナックに飛び込んだ。初日は、鳥羽一郎の『兄弟船』1曲しかレパートリーもなく、しかも、32軒連続で断られた。
そんな中、憧れの 髙橋真梨子 のバックバンドのメンバーでもあるサックス奏者の 野々田 万照(ののだ まんてる)と出会ったことで、本格的に作詞・作曲もはじめ、2017年には、インディーズ・デビュー。その間も、「流し」は続け、メジャー・デビュー後の 2019年 には、「流し」で全国制覇を達成した。これまで、日本全国のスナックを 1000軒以上まわったと言う。
「若い女性が本格的に流しの活動をしている」ということが、雑誌やテレビなどでも注目され、さらに、テレビ東京系の人気カラオケ番組『THEカラオケ★バトル』では 2回 優勝するなどし、インディーズ時代の 2018年には、インディーズ歌手にも関わらず、『徳光和夫の名曲にっぽん』(BSテレ東)の司会アシスタントに抜擢された。
メジャー・デビューしてから、来年、2024年の 5月で、まる 5年となるが、来年、1月には、「流し」を始めてまる 10年となる。
メジャー・デビュー後、今年、2023年 5月に発売された最新曲『渋谷のマリア』(作詞:おかゆ / 作曲:おかゆ / 編曲:新田高史)まで、計5作のシングルをリリースしており、これらは、いずれも、「おかゆ」自身が作詞・作曲をしたものだ。『渋谷のマリア』は、発売後、6月12日付の「オリコン」ウィークリー 演歌・歌謡曲シングルランキングで、初登場 1位を獲得している。
そして、先日、2023年 12月27日に発売となったアルバム『おかゆウタ カバーソングス 3』は、その名の通り、「おかゆ」のカバーアルバム企画の 3作目となる。
自身、憧れであり原点だと言う 髙橋真梨子(ペドロ&カプリシャス)の『ジョニィへの伝言』をはじめ、ギャルのころに聴いた『ロンリー・ガール』(佐東由梨/ECD/加藤ミリヤ)、もうひとつの原点、「流し」でよく歌った『女のブルース』(藤圭子)、さらに、杏里や中村あゆみ、泰葉らのポップスに、中島みゆき、西田佐知子や五木ひろしのカバーも歌っている。そして、アルバムの最後には、平和を祈る詞を自ら付けた『Amazing Grace』も収録されている。
「髙橋真梨子」と、「往年のヒット曲をリクエストされて歌う」という「流し」は、「おかゆ」にとって、自身が作詞・作曲したオリジナル曲のシングルとはまた別の原点であり、また、それらは、自身のオリジナル曲にも大きな影響を与えているから、「おかゆ」にとってカバーを歌うということは当たり前のことであり、なくてはならないものだ。
「おかゆ」という名前は、中学時代のニックネームに由来している。本名が「ゆか」で、それをひっくりかえして「お」を付けたものだ。おそらく、最初は、ただ単に「お」を付けただけの「おゆか」だったのではないかと思っている(「しおり」という子が「おしり」と呼ばれていたのを耳にしたことがある)。いずれにしろ、以来、友達からは、ずっと「おかゆ」と呼ばれている。
「おかゆ」の歌声は、カドが立っていない「やわらかさ」があり、しかも、ヌケがいい。低めのトーンで話す声も魅力的で耳に残る。
明るく、元気で、自分でも「私、すごい喋るの好きなので」と言っているように、早口で、よく喋る。早口で話せるということは、頭の回転が速いからだし、よく喋るということは、言いたいことがたくさんあるということだ。常に、いろいろ考えているという証拠だ。
その話しぶりからは、エネルギーというか、強い生命力のようなものが感られ、そのエネルギーは、不思議と聞いている方を元気にさせる。
「おかゆ」という、なんともふわっとした名前や、「ギャルだった」というプロフィールに騙されがちだが、その話しぶりからは、知的で、芯の強さを感じる。そもそも根性がなければ「流し」などできない。
以前、「おかゆ」は、「私は小さい頃からあまり環境に恵まれずに生きてきましたが、その経験が 1番の武器だと思っています。マイナスから始まっているので、後は登るしかないんです」と言っていた。
それが、エネルギーの源かもしれないと思った。
<もくじ>
1 最新シングル『渋谷のマリア』は、80年代の歌謡ロック風
〜「自分自身がすごく愛して歌える曲になった…」〜
2 3タイプ、それぞれ違うタイプのカップリング曲
〜「主人公の設定を若くして書き直しました…」〜
3 カバーアルバム 第3弾『おかゆウタ カバーソングス 3』に入れたかった曲
〜「それがまた、自分の創作のエネルギーになる…」〜
4 新たに歌詞を付けてカバーアルバムに収録した『Amazing Grace』
〜「本当に思ってることを書かせてもらった…」〜
5 おかゆ ヒストリー ① ギャルになるために上京
〜「母が亡くなってなかったら、歌手になってなかったです…」〜
6 おかゆ ヒストリー ② レパートリー1曲で「流し」
〜「歌謡曲を聴いてもらえるんじゃないかと思ったんです…」〜
7 おかゆ ヒストリー ③ インディーズ・デビュー
〜「(髙橋)真梨子さんとか見てると、頑張れたんですよね…」〜
8 おかゆ ヒストリー ④ メジャー・デビュー
〜「たまたま見に来てくれてたんですよ…」〜
9 デビュー 5周年、今後やりたいこと
〜「それが、最高に幸せな瞬間なんです…」〜
1 最新シングル『渋谷のマリア』は、80年代の歌謡ロック風 〜「自分自身がすごく愛して歌える曲になった…」〜
ーー 2019年 5月のメジャー・デビュー以来、毎年、新曲をリリースしている「おかゆ」。メジャー通算 5作目となる最新シングル『渋谷のマリア』(作詞:おかゆ / 作曲:おかゆ / 編曲:新田高史)が、今年、2023年5月31日に、それぞれ、カップリング曲とジャケット違いの全 3タイプ(GM盤、黄昏盤、雪舞桜盤)で発売された。
ーー タイトル曲の『渋谷のマリア』は、前作の『赤いひまわり』(作詞・作曲:おかゆ / 編曲:多田三洋)(4th Single、2022年)に続き、キャッチーなメロディが耳に残る、マイナー調の歌謡曲。オジサン世代には、どこかなつかしい感じもする、80年代の歌謡ロック風。発売後、6月12日付の「オリコン」ウィークリー 演歌・歌謡曲シングルランキングで、初登場 1位を獲得している。
おかゆ: ありがとうございます!『渋谷のマリア』は、「5周年の曲の A面」「テーマは渋谷」ってことで、決め打ちで作りました。私、「地名+名前」(『ヨコハマ・ヘンリー』)でデビューしてるじゃないすか。渋谷に憧れて上京してきたので、5周年の曲は、もう「渋谷の誰々」だと……、「なんとかの渋谷」とか、いろいろ考えたんですけど。
ーー メロディもそうだが、どこか切なく、儚い感じのする歌詞もいい。「♪歌うのが大好きな 母の姿見て」「♪ハチ公で待ちぼうけ」「♪画面で鳴り響く 失恋ソング」「♪着飾る理由が 欲しいだけだった」「♪いつしか仲間は 会社に勤めて」……などは、自身の経験を重ねた部分なのだろうと感じる。
おかゆ: まあ、もともと、渋谷に憧れて上京してきて、で、今は、「流し」で、「CrossRoad」っていう(渋谷の)道玄坂にあるお店で弾き語りのライブを、毎月……、ちょっと今回は 3ヶ月あいちゃったんですけど、ほぼ毎月、全部リクエストをもとに「流しライブ」っていうのをやっているんですね。
おかゆ: だから、私にとって、その(渋谷の)「道玄坂」っていう街は、「流し」をやってるときからの……、今回の MV(ミュージックビデオ)にも出てくるその「CrossRoad」とはまた違う「BACKTOWN CAFE」っていう同じ(渋谷の)道玄坂にあるバーで、インディーズ時代、YouTube の番組『おかゆの時間』っていうのを撮ってたんですよ。
おかゆ: そこは、実際、『独り言』(作詞・作曲:吉幾三 / 編曲:野々田万照)(2nd Single カップリング曲、2020年)って、吉(幾三)さんが作ってくださった曲の MV(ミュージックビデオ)にも出てきたり、『オトナのワカレ』(インディーズ時代のシングル『女三楽章』収録曲、2017年)っていう曲のジャケット写真とかも、そこで撮ってたりとか、結構、今まで何回か出てきてる店なんですよ。
おかゆ: そこが、私の「道玄坂の原点の店」でもあって……、だから、まさに、渋谷に憧れて上京してきて、歌手になるためにいろいろ紆余曲折あったけど、インディーズ時代、最終的に「流し」っていう活動を経て、それで、デビューして、今度は 5年経ったっていうっていう今の私のこの「道玄坂・渋谷」……、そこで「また強く生きていくんだ」っていうのが『渋谷のマリア』なんです。
おかゆ: でも、「私」って限定しちゃうと世界観が狭くなっちゃうので、「マリア」っていう主人公ベースにしたんですけど、でも、「おかゆちゃんなのかな?」って思われちゃうかもしれないけど、「マリア」っていうのは、「渋谷の街で強く生きてく女性」っていうことで……。
おかゆ: 渋谷って、世界中からいろんな人も集まりますし、いろんな人たちの思いが交差していく街でもあって、でも、時代とともに変わらないものは変わらないんだけど、やっぱり流行の変化が一番最先端の街なので、疾走感っていうか、なんか駆け抜けていく感じっていうのは、そのサビとかにもメロディーにも反映させてるんです。そこは意識してます、かなり。だから、シンコペーションもいっぱい……、あれも全部そういう「渋谷」っていう感じで。
ーー 「おかゆ」は、17歳のときに、ギャルに憧れて上京してきた。ギャルの聖地でもあった渋谷を歌うことは、自身の原点を歌うようなことだ。
おかゆ: ですね〜。だから、渋谷の歌にして良かったと思うし、なんか、この曲を歌っていて、「吹っ切れたね」みたいこと言われるんですよ、最近。なんか、自分でも、この曲は、今まで歌ってきた中で一番自分らしく、自分がこの曲を好きな気持ちで歌えてるところはありますね〜。初めて、素直に「スの自分」で歌えてるっていうか。
おかゆ: いままで、ずっと「渋谷の曲をいつか作りたい」と思ってて、2年目か 3年目か、その頃からずっと言ってたんですけど、ずっとボツになってました……(笑)。それが、今回、やっと満を持して……、まあ、でも良かったです、このタイミングで……、コロナとかもあったから。
おかゆ: だから、 MV(ミュージックビデオ)も、これまでで一番、再生されていて……、21万回(取材時)だったんですけど、今までそんなに再生されたことはなかったんですよ。もしかしたら、そういった海外の人とかにも、なんか「東京・渋谷」みたいな感じで観られてるのかもしれないな〜って思ってるんですけど。
ーー そもそも、曲は、どういうふうに作っているのだろう?
おかゆ: いや、もう詞先(歌詞が先行)が多いですね、うん。メロディーだけ出ることもあるんですけど、圧倒的に詞先(歌詞が先行)の方がいい曲が多いです。ま、ホントは、同時にできるのが一番いいんですけど……。でも、作りやすいのは、正直、詞が先にできてる状態、詞がある方が作りやすい。
おかゆ: 私は、メロディはいくらでもできるんです。たとえば、文章があれば、そこに音をつけることはいくらでもできるんですけど、あの……、メロディーから出来ちゃうと、その文字数に縛られすぎる、とらわれすぎるんですよ。字数(合わせ)もそうなんですけど、メロディがあると、「さびしそう」とか「悲しそう」とか、そのイメージに縛られすぎちゃうんで。
おかゆ: だから、なんかヘンな言葉でもいいから、たとえば「愛してよ」とか……、『愛してよ』(作詞・作曲:おかゆ / 編曲:野々田万照)(2nd Single、2020年)は、曲先(メロディ先行)なんですよ。『愛してよ』 は、朝起きた瞬間に、ド頭からサビまでメロディが全部出てきたんですよ。だから、「すぐ録音しなきゃ」って。
ーー 一度、出来上がっても、何度も修正を繰り返すと言う。『渋谷のマリア』も、そうだった。
おかゆ: はい、ぜんぜん違いましたね。めちゃめちゃ書き直しました。もう、相当、変わりましたね。(レコード会社のスタッフとの)会議で、何度も(歌詞が)ボツになったりとか、「なんかやっぱちょっと違う」ってなったりとか……。
おかゆ: (デビュー曲の)『ヨコハマ・ヘンリー』(作詞・作曲:OKAYU / 編曲:野々田万照)(メジャーデビュー曲、2019年)の時からそうでした……(笑)。実は、『ヨコハマ・ヘンリー』って、もっと純愛の曲だったんですよ。「改札で待ち合わせして……」って、ピュアな感じの初恋みたいな感じだったんですよ。それが、全然、変わっちゃったので……(笑)。でも、それも、まあ、結果として良かったですけどね。
ーー そういうふうに、身を削って作ったものを、スタッフから「あ〜でもない、こ〜でもない」とダメ出しをされて、「このやろう!」とは思わないのだろうか?
おかゆ: いや、思いますよ〜……(笑)。だって、自分の曲っていうことは、全人格を否定されるぐらいのレベルってことですから……(笑)。けど、まあ、結局……、結果、良いものにはなるので……、そういうことが、最近、やっとわかってきました……(笑)。
おかゆ: 『渋谷のマリア』は、メロディも、結構、書き直しました。(所属レコード会社の)ビクターに来て、「ダメだ」ってなったんで、(ビクターの担当ディレクターの)河村さんの前で、ギター弾きながら「これはどうですか?」「これでどうですか?」「これでどうだっ!」って何十回も……(笑)。で、(レコード会社のスタッフとの)会議ギリギリまで、自宅で録音してて……って感じでしたね。
おかゆ: なので、『渋谷のマリア』は、結構、なんだかんだ難産だったけど、でも、結果、すごく良くなって、自分が、自分自身がすごく愛して歌える曲になったという感じですね。この曲に出会えてよかったと……。
2 3タイプ、それぞれ違うタイプのカップリング曲 〜「主人公の設定を若くして書き直しました…」〜
ーー 今年、2023年5月に発売された最新曲『渋谷のマリア』(作詞:おかゆ / 作曲:おかゆ / 編曲:新田高史)は、カップリング曲とジャケット違いの 全 3タイプ(GM盤、黄昏盤、雪舞桜盤)が発売されており、それぞれ、全く違ったタイプの 3曲が収録されている。
ーー 「黄昏盤」のカップリング曲『黄昏の雨を抱いて…』(作詞・作曲:おかゆ / 編曲:多田三洋)は、メジャー調の切ないラブソングで、綺麗なメロディの王道ポップス・バラードだ。
おかゆ: ありがとうございます。『黄昏の雨を抱いて…』は、あれも、曲先なんですよ……。ファンの方からも、「『黄昏の雨を抱いて…』がいい」っておっしゃってくださる方も多くて……。
ーー JUJU とか 中島美嘉らが歌っていそうな、綺麗な王道バラードだ。とくに、『奇跡を望むなら…』(JUJU)のようなイメージもある。
おかゆ: え〜っ! めっちゃめっちゃうれしいです。JUJU さんに歌ってもらいたいです! たしかに、系統そっちかもしれないですね。
ーー サビの「♪あと少しだけ あと少しだけ」が耳に残るが、ブレスとともに、Aメロの低い声も印象的で新鮮だ。
おかゆ: ありがとうございます。たしかに、低いです。私、あの……、小田和正さんが「原曲キー」なんですよね、歌うとき。小田和正さんとか、あと、森進一さんも……。森(進一)さんも高いんですけど、森さんは「原曲キー」で出るのと、あと、サザンの桑田(佳祐)さんの声が「2コ上げ」ぐらいでちょうどいいくらいっていうか……。キーが低いんですよね。「声の高い男性」がちょうどいいくらい。だから、女性の歌は、ほとんど「めちゃくちゃ下げないと」って感じですね、いつも歌うとき。
ーー しかし、聴感上は、そんな感じはしない。
おかゆ: ああ〜、そうなんですよ〜、言われます。それは、ありがたいですよね。でも、意外と、「歌ってみたら、こんなに低かったんだ〜」ってなるみたいです。
ーー 「雪舞桜盤」カップリング曲『雪舞桜』(作詞:おかゆ / 作曲:おかゆ / 編曲:多田三洋)は、マイナー調で、綺麗なメロディの歌謡演歌だ。サビが耳に残るよくできた曲で、もともとは、他の演歌歌手への提供曲として書いたようだ。
おかゆ: ああ……、ありがとうございます。うれしいです。これは、最初、ある(有名)女性演歌歌手に「書けるかも……」って話があって、「ぜひ!」と思って……。で、すぐ作って、その歌手の人に合うような歌詞を書いてたんですよ。なんですけど、お話がちょっと別の方になっちゃって……、で、「自分で歌っちゃえ」と思ったんですけど、あまりにも年齢が高い感じ、お姉さんな感じで書いたので、自分用に、もうちょっと主人公の設定を若くして書き直しました。
ーー サビの「♪雪舞桜〜」のウラ声がいいし、「雪舞桜」という言葉も耳に残る。
おかゆ: ああ〜、あはははは……(笑)。いや〜、もう、その歌手に歌ってもらえれば、そこもピッタリだったんですよ〜。
ーー そして、「GM盤」のカップリング曲『グッドバイ・モーニング』(作詞:庄野真代 / 作曲:中島薫 / 編曲:阿部靖広)は、メジャー調 3連のミディアムバラードで、カバー曲だ。1976年の「第7回 世界歌謡祭」で、グランプリと最優秀歌唱賞を受賞した サンディー が歌っていた曲で、1992年には、宇徳敬子 と 近藤房之助 のコラボレーション・シングルとしてもカバーされている。この『グッドバイ・モーニング』は、以前から「おかゆ」もライブで歌っていた。
おかゆ: 去年くらいからですかね。「おかゆちゃんに合うから、きっとうまく歌えるから、歌ってみたら?」って勧められたので、「あ〜、じゃあ、歌ってみようかな」と思って 1回 歌ってみたら、なんか「あれ〜?」みたいな……、「もともと、これ、私、歌った方が良かった曲じゃん」ぐらいの、なんか素直な気持ちで歌えたんです。私の声とか音域とか歌い方とかも、「曲に合う歌い方だった」っていうか……、髙橋真梨子さんの『for you…』みたいな感じで歌えたというか……。
おかゆ: もともと、子供のころから、(髙橋)真梨子さんが憧れで、リスペクトしている人なんですけど……。『ヨコハマ・ヘンリー』(作詞・作曲:OKAYU / 編曲:野々田万照)(メジャーデビュー曲、2019年)とか、『愛をはじめないで』(作詞・作曲:OKAYU / 編曲:高田透)(メジャーデビューシングルのカップリング曲、2019年)とかもそうなんですけど、私、「(髙橋)真梨子さんが歌っているような曲」を書いてるんですよ。『赤いひまわり』(作詞・作曲:おかゆ / 編曲:多田三洋)(4th Single、2022年)もそうです。『赤いひまわり』も、(髙橋)真梨子さんが歌っているような世界観を作りたいから、ああいうメロディを作っているんですよね。
おかゆ: だから、『グッドバイ・モーニング』は、「歌ってみたら?」って言われて歌ったら、もう自分が(髙橋)真梨子さんになったかのような……(笑)、なんか、そんな気持ちで歌えたんです。なので、「あ〜、これは出会った!」と思って。そしたら、そう言って勧めてくださった方々も、「もう、おかゆ、めちゃめちゃドンピシャでハマってる」みたいになって、皆さん、すごい感動してくださって、それからですよね……、本当に「正式にカバーしよう」ってなったのは。
おかゆ: あと、(『グッドバイ・モーニング』は)ヤマハの「ポプコン」(『POPCON』『ヤマハポピュラーソングコンテスト』)の曲なので……。私、ヤマハのギター使ってて、ヤマハさんが結構、応援してくれてるっていうのもあって、中島みゆき さんの曲とかもやっぱり歌わせていただくこともすごい多くて、『うたコン』(NHK)で(中島みゆき の)『時代』を歌ったら好評で……、で、その「ポプコン・シリーズ」っていうのもありますね……(笑)。
3 カバーアルバム 第3弾『おかゆウタ カバーソングス 3』に入れたかった曲 〜「それがまた、自分の創作のエネルギーになる…」〜
ーー 先日、2023年 12月27日には、カバーアルバム 第3弾『おかゆウタ カバーソングス 3』が発売となった。自身、憧れであり原点だと言う 髙橋真梨子(ペドロ&カプリシャス)の『ジョニィへの伝言』をはじめ、ギャルのころに聴いていた『ロンリー・ガール』(佐東由梨/ECD/加藤ミリヤ)、もうひとつの原点、「流し」でよく歌った『女のブルース』(藤圭子)、さらに、杏里や中村あゆみ、泰葉らのポップスに、中島みゆき、西田佐知子や五木ひろしのカバーも収録されている。
ーー いろんなタイプの曲が収録されているが、「おかゆ」の歌声がひとつにまとめていて、通して聴いていて全く違和感はない。
おかゆ: ありがとうございます。カバー曲は、レコーディングの時に、全て歌い方を変えています。全く違う人格の Aさん、Bさん、Cさんで 歌ってみて、聴いて良かったものをよりブラッシュアップする感じですね。
ーー このカバーアルバム・シリーズは、2021年に 1作目の『おかゆウタ ~カバーソングス~』、2022年に 2作目の『おかゆウタ カバーソングス 2』がリリースされ、今作が 3作目となるが、そもそも、この「おかゆウタ」というカバーアルバム・シリーズをはじめたきっかけは何だったのだろう?
おかゆ: 一番最初は……、やっぱり「流し」だし、リクエストをいただいて歌を歌ってきたので、カバーアルバムを出すっていうのも……、やはり、カバー曲で、正直、生業にしてた時期があったので、カバーはもう「流し」の必須だったので。なので、インディーズの頃から、もう既にオリジナルとカバー曲は入れてて……、そこをですね。
ーー 「おかゆ」は、2014年、23歳のころ、歌謡曲や演歌を聴いてもらうために、ギターを練習し「流し」を始めた。インディーズ時代、そして、メジャー・デビュー後も続け、2019年には「流し」で全国制覇を達成している。だから、「カバー曲を歌うこと」は、当たり前のことでもあり、自然なことだ。
おかゆ: そうですね。私は、人の曲を歌うことが……、なんか(シンガーソングライターでカバー曲を歌うのが)嫌な方もいるじゃないですか。でも、私は、逆に、カバー曲でずっとやってきたから、もうカバー曲が大好きで、とくに歌謡曲が大好きなので、仕事でも、歌謡曲のカバー曲を歌わせていただけるってことに、すごく喜びを感じるので……。シンガーソングライターでは珍しいかもしれないですね。やっぱり「流し」だったからかもしれないですね。
おかゆ: でも、それ(カバー曲)を歌うことで、それがまた、自分の創作のエネルギーになるんですよね。聴いてると、自然と何か自分のエッセンスに組み込まれていくんですよ。だから、(『渋谷のマリア』のカップリング曲のひとつ)『黄昏の雨を抱いて…』も、たぶん、『グッドバイ・モーニング』をちょうど知ったぐらいのときに、できた曲なんです。私の曲の中で、転調してる曲ってあれしかないんです。『グッドバイ・モーニング』って転調してて、覚えようと思ってちょうどよく聴いてたあたりに、あの曲が降ってきてるから、そこで、影響と刺激を確実に受けてますね。
おかゆ: そういったカバー曲が、自分の創作の中の要素に繋がってるので、(カバー曲は)絶対的に必要なものです。なので、これからも、カバーもいっぱいしていきたいし、(「おかゆウタ ~カバーソングス~」が)、1、2、3 まで出ましたけど、これからもシリーズ化していきたいっていうのもありますね。
ーー 今回のカバー・アルバムのコンセプトを聞いてみた。
おかゆ: まず、やっぱり、『渋谷のマリア』を作ったっていうこともそうなんですけど、私、やっぱ、ギャルになりたくて渋谷に出てきたっていうのが最初の原点で、そのころ、私は、加藤ミリヤさんの『ディア ロンリーガール』っていう曲を上京する前から聴いてて、「渋谷ってこんな街なのかな〜、かっこいいな〜、いいな〜」と思って聴いてて、ミュージックビデオとかもいつも見て「いいな〜、渋谷 行きたいな〜」とか、常に憧れてはいたんですけど、「流し」やってる時に、作詞・作曲を画面で見たときに、「あれ? 歌謡曲の先生方が作ってたの?」みたいな……。「(加藤)ミリヤって、シンガーソングライターじゃなかったっけ?」ってところから、原曲じゃなくてサンプリングだってことを後から知るんです……、サンプリングとかっていう手法があることも知らなくて。で、原曲(佐東由梨)を聴いて、「なんじゃこりゃ! めっちゃ歌謡曲じゃん!」みたいな……(笑)。
ーー アルバム 1曲目に収録されている『ロンリー・ガール』(作詞:松本隆 / 作曲:筒美京平 / 編曲:鈴木 豪)は、1983年に、その前年にデビューしたアイドル歌手 佐東由梨 のセカンド・シングルとしてリリースされた。その後、1997年に、ラッパーの ECD が、『ロンリー・ガール』と、マーヴィン・ゲイの『セクシャル・ヒーリング』(Marvin Gaye "Sexual Healing")をサンプリングして『ECD の ロンリー・ガール』を発表。さらに、そのアンサーソングとして、2005年に、当時、ギャルと呼ばれる若い女性たちのカリスマだった 加藤ミリヤ が『ディア・ロンリーガール』としてリリースしている。もともと「おかゆ」は、オリジナルの 佐東由梨 のバージョンではなく、加藤ミリヤ のバージョンを聴いていたということだ。
おかゆ: はい、そうです。で、「いつかカバーしたいな」と、ずっと思ってたんですけど、でも、そのときはまだ、今みたいな歌謡曲のブームが来てなかったんですよね。でも、「いつか昭和歌謡のブームが必ず来る」と思ってたし、私は歌謡曲が大好きなので、必ずそのときが来るとは思ってたんです。
おかゆ: で、今回の(カバーアルバムの)ラインナップの中でも、とくに、五木(ひろし)さんの『夜空』(作詞:山口洋子 / 作曲:平尾昌晃)もそうなんですけど……、私が「流し」で青森に行った時に、DJ の方が『狼のバラード』(五木ひろし、1973年)っていう曲を教えてくれて、それがきっかけで「グルーヴ歌謡」というものに目覚めて、(メジャーデビュー曲の)『ヨコハマ・ヘンリー』が出来たんですね。
おかゆ: で、『ヨコハマ・ヘンリー』って「グルーヴ歌謡」がベースになってるんですけど……、『渋谷のマリア』にも入ってますし『すすきのルルル』にも入ってますけど、私の一番好きな歌謡曲って「グルーヴ歌謡」なんですね。
おかゆ: たとえば、ちあきなおみ さんの『夜へ急ぐ人』(作詞・作曲:友川かずき / 編曲:宮川泰、1977年)とか『四つのお願い』(作詞:白鳥朝詠 / 作曲:鈴木淳 / 編曲:小谷充、1970年)とか、奥村チヨ さんの『恋の奴隷』(作詞:なかにし礼 / 作曲:鈴木邦彦 / 編曲:川口真、1969年)とか、そういう「四つ打ち歌謡」みたいな……。
おかゆ: それは……、たぶんなんですけど、私は、ちっちゃいときからスナックに連れて行かれて、演歌とか歌謡曲とかよく聴いて育った自分、ちっちゃいときから歌謡曲で洗脳されて育った自分と、ギャルに憧れてギャル時代に聴いてた 加藤ミリヤ さんとか、その時代にあった「パラパラ」とか聴いてたときの曲が融合したのが「グルーヴ歌謡」だったんですよ。ただ、ギャルの時には、詞の世界は入ってきてなかったんです。「なに言ってんのかわんない」みたいなのがあったんですけど、共感っていう部分では、演歌・歌謡曲にめちゃめちゃ共感してたんですよ。
おかゆ: とくに、五木(ひろし)さんの『狼のバラード』を聴いたときに、「これは、かっこよすぎる!」と思って、もうそこから「グルーヴ歌謡」に目覚めてしまって、世の中の「グルーヴ歌謡」っていうか、往年の曲を、めちゃめちゃ聴きまくってたんですよね。
おかゆ: で、それが、今、自分の一番のベースになっていて、『ヨコハマ・ヘンリー』作ったときも「グルーヴ歌謡」をベースにしてたところがあったんですけど、この 五木(ひろし)さんの『夜空』も「グルーヴ歌謡」なんですよ。
ーー 『夜空』は、たしかに、ノリの良い「グルーヴ歌謡」だが、収録されている「おかゆ」のカバーでは、よりロックっぽくなっている。
おかゆ: あ〜……、ちょっと、ロックになっちゃったんですけど……(笑)。今回、アレンジャーさんも 鈴木(豪)さんて、初めての方だったんですよ。ジェロさんの『夜空』がめちゃくちゃかっこよくて、で、(ビクターのディレクターの)河村さんに、「この方にアレンジしていただけないですか?」って私からお願いしたんです。
おかゆ: 『ロンリー・ガール』も 鈴木(豪)さんのアレンジなんですけど、この方の感性だったら、今のこの時代、昭和歌謡がバズってるこの時代に絶対マッチするから、この方に『ロンリー・ガール』もアレンジしてもらえば間違いないと思うっていうことも言ったんです。
ーー アレンジャーの 鈴木 豪 は、今回のアルバムでは、『ロンリー・ガール』『夜空』の他にも、『翼の折れたエンジェル』(中村あゆみ)、『フライディ・チャイナタウン』(泰葉)も編曲を担当している。
おかゆ: でも……、「私、こうした方がいいと思うんですけど」って言ったりとか、そういう自分の意見が言えるようになったのも、この『渋谷のマリア』のときからですね。
ーー 「おかゆ」の歌う『ロンリー・ガール』は、「おかゆ」のしっかりした歌で、あらためて、楽曲の良さが伝わる。
おかゆ: ああ……、ありがとうございます。原曲を超えたいっていうのはありました。でも、ホント、いい曲なんですよ〜。今の時代には、めちゃめちゃ合うし、ちょっとさみしい感じもあるんだけど、ちょっとやさぐれてるっていうか……、「私なんか……」みたいな可愛い部分もあるし。
おかゆ: でも、私世代だと、『ロンリー・ガール』っていうと、「あれっ? (加藤)ミリヤの曲?」って感じで、この間も、名古屋のショッピングセンターにキャンペーンで行って、ちょうど『ロンリー・ガール』を歌ってたときに、若い子たちがエスカレーターを降りてきて、「あれ? ねぇねぇ……」みたいになってたんですよ。「よし! しめた!」みたいな……(笑)、「そうそう、(加藤)ミリヤの『ロンリー・ガール』(『ディア・ロンリーガール』)のカバーだよ」みたいな気持ちで歌えたので……(笑)。
おかゆ: でも、やっぱり詞は歌謡曲じゃないですか。お客さん方も、たぶん、初めて聴かれた方も多かったと思うんですけど、「いい曲だね。詞がなんかいい曲だし、『渋谷のマリア』にもなんか世界観が通じるものがあるように感じるんだけど、どうなの?」とか聞かれたりとか、まさに、本当に、『渋谷のマリア』の世界観と『ロンリー・ガール』は、何か繋がりを持たせたいっていうこともあったので、私はこの『ロンリー・ガール』を、なんかもう「バズらせたい」っていうのありますね、バズってもおかしくないくらいいい曲だと思うので。
4 新たに歌詞を付けてカバーアルバムに収録した『Amazing Grace』〜「本当に思ってることを書かせてもらった…」〜
ーー カバーアルバムの企画となると、一般的に、ディレクターやスタッフが選曲をすることの方が多いが、この「おかゆウタ」というカバーアルバム・シリーズでは、選曲も、ほとんど「おかゆ」自身がやっているようだ。
おかゆ: はい、もう、ほとんどは……。あと、今、「昭和歌謡曲 DJ」を本格的に始めてるんですけど、そのイメージも含めて選曲しましたね。
おかゆ: とにかく、今回、「『ロンリー・ガール』を入れたい」っていうのを先にまず最初に提案させてもらって、最初、だいぶ、ぶつかり合いましたね……(笑)。(ビクターのディレクターの)河村さんの言うことは、いつも当たってるし、意見も、もちろん、すごく大事だけど、この『ロンリー・ガール』に関しては、やっぱり、王道歌謡曲でもあり、幅広い世代に向けられるので、私は、この曲をリバイバルさせること、そして、今、このシティ・ポップ、昭和歌謡ブームのど真ん中に今来てることを踏まえて、「これでやってみてほしい!」っていうお願いをさせていただいたんです。
おかゆ: たぶん、この曲は、マーヴィン・ゲイの『セクシャル・ヒーリング』(Marvin Gaye "Sexual Healing")にインスパイアされて書かれたんだと思うんですけど、だから、「なんとなく聴いたことあるぞ」って思われる人もいると思いますし、きっと、音楽好きの玄人の方にも絶対受けると思ったんです。
ーー そして、この「おかゆウタ」というカバーアルバム・シリーズでは、1作目には『別れの朝』、2作目には『五番街のマリーへ』、そして、今作では『ジョニィへの伝言』と、毎回、髙橋真梨子(ペドロ&カプリシャス)の曲が収録されている。
おかゆ: そうですね……、(髙橋)真梨子さんは、もう原点なので。次の『カバーソングス 4』では、(髙橋)真梨子さんのソロに、ついに行くのかなとは思ってます……、ペドロ&カプリシャス時代の歌は、ある程度歌ったので。でも、ペドロ&カプリシャスは、(髙橋)真梨子さんの原点でもありますし。
ーー 今回、収録されている「おかゆ」が歌う『ジョニィへの伝言』は、声があってるし、実にうまく歌っている。CD でも、テレビ番組でも、この曲をカバーしている人は少なくないが、その中でも相当いいと思う。楽曲の理解度の高さみたいなものを感じる。
おかゆ: え〜っ、ホントですか〜! うれしい〜! そうですね……、やっぱり、ちっちゃいころから聴いてる曲だし、(髙橋)真梨子さんのコンサートも何度も見に行って涙してたので、いろんな想いは入ってますね。
おかゆ: あと、昔みたいに、チカラ入れて歌わなくなったかもしれないです。(髙橋)真梨子さんの歌を研究すればするほど、チカラ入ってないんですよね、全然。『for you…』とかも、チカラを入れて「♪あなたがほしい〜」って歌われる方もいらっしゃるんですけど、(髙橋)真梨子さんは、決してそうは歌ってないんですよね。それに気づけたんです。『ジョニィへの伝言』なんて、とくに、全くチカラ入ってなくて……、なので、そこを意識して、今回は歌いましたね。
ーー 『女のブルース』(藤 圭子)(作詞:石坂まさを / 作曲:猪俣公章 / 編曲:おかゆ)は、ギター 1本で、「流し」スタイルをイメージして収録されている。
おかゆ: はい、ギター 1本で、弾いて歌ってます。まさに、「流し」で飛び込みで行って、歌っても「みんな聴いてない」っていう感じですね……(笑)。これも、「流し」の原点の曲です。
ーー ほかにも、『翼の折れたエンジェル』(中村あゆみ)、『CAT'S EYE』(杏里)、『フライディ・チャイナタウン』(泰葉)などのポップスもいいが、西田佐知子の『くれないホテル』、中島みゆきの『化粧』もよかった。
おかゆ: 中島みゆき さんの曲は、初めて入れたんですけど、これも、やっぱり シンガーソングライターとして、これから進むべき道と思っているってことですね。同じ北海道出身で、もう大スターですけど、シンガーソングライターの先輩なので。
おかゆ: なんか……、この間、ファンミーティングで、ファンの人に「おかゆちゃんが、一番こうなりたいっていう歌手を挙げてください」って言われて、「一番」と言われたときに、やっぱり誰って言えなかったんですよ。で、「将来的にこうなりたい」って歌手を 3人挙げたんですよ。髙橋真梨子さん、中島みゆきさん、さだまさしさん、その 3人が私の中で出てきたんです。
おかゆ: (中島)みゆきさんも、さだ(まさし)さんも、お二人ともギター弾いて歌うし、自分で曲を書いてらっしゃるので、やっぱり「そこなのかな」って自分で思ったんですよね。将来的に、やっぱり長く歌って、ああいう感じでコンサートツアーもしていけるようにはなりたいですね。
おかゆ: でも、私、すごい喋るの好きなので……(笑)、さだ(まさし)さんみたいに『生さだ』(NHK 総合テレビの番組『今夜も生でさだまさし』)じゃないですけど、『生がゆ』みたいなのもやりたいっていうのは、ちょっと、ありますね……(笑)。
ーー アルバムの最後には、もとは讃美歌だが、世界的に知られる曲となった『Amazing Grace』(作詞・作曲:不詳 / 日本語詞:おかゆ / 編曲:多田三洋)に、「おかゆ」が日本語詞を新たに付けて歌ったものが収録されている。平和への祈り、命の大切さを歌っている。
おかゆ: あの……、一昨年なんですけど、私、『戦場のメリークリスマス』に、詞を付けたんですね。ラジオ(番組)をやってるんですけど、クリスマスの時期に曲をかけようと思っていろいろ聴いてたら、(『戦場のメリークリスマス』に付けた)詞が降ってきたんです。で、それをライブで歌って、好評いただいたんですけど、その曲を作って歌う前の日に、ウクライナで戦争が起きちゃったんですよね。全く、それを想像しないで書いた詞だったのに、そういうふうに、何かタイミングっていうんすかね、重なってしまったということがあって、よりその曲に対して、いろんな思いが交差したんですよね。
おかゆ: ただ、『戦場のメリークリスマス』は、いろんな事情もあって、今回、(アルバムに)入れられなかったので、だったら、「(新たに)詞を書いてもいい曲」っていうか、もともと、そういう PD曲(「パブリック・ドメイン」の略で、著作権の保護期間が経過して社会の公共財産になり、だれでも許諾なしに自由に録音などの利用できる楽曲)がいいのかなと思って、PD曲 を探してはいたんですけど、その中で、「自分が詞を付けられるな」って一番思ったのが、この『Amazing Grace』だったんですよね。で、「作ろう」ってなっているときに、また、今度は、イスラエルの戦争が起きて……。
ーー そういうメッセージを伝えるにはいい曲だ。
おかゆ: 『戦場のメリークリスマス』に付けた詞も、今回の『Amazing Grace』にかなり近いんですよ。でも、そっち(『戦場のメリークリスマス』)は、「誰の味方でもない、俯瞰してる人が思ってること」っていう感じの詞の世界観だったんですね。
おかゆ: でも、今回は、「どうすることが実際に平和なのか」、「どうすることで争うことを防ぐことができるのか」っていう、自分の中の正解として「私はこう思う」っていう気持ちを表現したっていう部分もあります。俯瞰して「誰派でもありません」ではなくて、「私はこう思ってます」っていうメッセージというか、本当に思ってることを書かせてもらったというか……。
おかゆ: たとえば、あした生きることに対して、不安だったりとか……、みんなそうだと思うんですけど……、日本って、すごく平和なところで、守ってもらえてるじゃないすか。けど、現実には、守ってもらえてない国がたくさんあって、あした生きていくことも、正直、「どうなっていくんだろう」って不安ばっかりになってしまうと、やっぱり、絶対に争うんですよね。
おかゆ: その憎しみとか、悲しみとか、不安とか、怒りとかが、そういう争いに繋がってしまうことだから、だったら、まず、「生まれてきた子供たちをハッピーにする」っていうか、その子たちが悲しまないことを、その子たちが楽しく、ちっちゃい子たちが楽しく笑顔になっていく世界だったら、争ういうことが起きないと思うんですね。っていうことを、詞に書いたというか……。
おかゆ: 私達は星に生まれてるけど、絶対、いつかは死んじゃうじゃないすか……、星になっていくわけですけど、その星になってく運命の中で何ができるかなと思ったときに、思い出したことがあるんですよ……。
おかゆ: 徳光(和夫)さんとの番組(『徳光和夫の名曲にっぽん』BSテレ東)で、カンボジアに行ったんですよね。そのときに、市場にいた子供たちが、すごい衝撃的で……。なんか……、衛生環境とかもめちゃくちゃなところで、市場のお肉とか魚とかに虫がたかっているとこに座って、昼に……、たぶん、学校とかはないのかな……、で、その隣には、普通に美容室があって……って、普通にもうめちゃくちゃなんすよ。隣で頭洗ってシャンプーしてる人がいる横で、肉とか魚とか切ってるみたいな……、「大丈夫なのかな?」みたいな。
おかゆ: でも、そんなとこに、ずっとそこに座っている子供がいっぱいいて、その子たちを見たときに……、でも、すごい楽しそうではあるんですよ、私のギターとか見た時に「なにそれ〜」みたいな感じで、なんか、それを見たときに「ああ……」と思って……。
おかゆ: なんか、この子たちを救うことを、世界が、みんながチカラを合わせて考えれば、絶対、平和になる道があるんじゃないかなって、ちょっと思ったというか……。みんな平等じゃないんですけど、でも、同じ人間じゃないですか。生まれてきたってことは一緒で……、っていうことを、考えるきっかけになったんですよね。
おかゆ: みんな、きっとオギャーって生まれてきて、ひとりひとり、みんなに運命があって……、今、「親ガチャ」とかみんな言ってますけど、でも、みんな愛を持って生まれてきてるわけだから、う〜ん……、愛を育てていくというか……、うん……、命を……、命をとにかく大切にすること、愛することが、一番の平和なんじゃないかなと思ったんですよね。命を愛することが、「尊いことだよ、すごいことだよ」ってことを、みんながちゃんとわかっていれば、絶対、人を殺したりとかしないはずなんですよね。と思ったんで、それを伝えたくて……。
ーー まさに、正論だ。「おかゆ」の『Amazing Grace』を聴くと、素直に考えさせられるし、そういうことがストレートに伝わってくる。
おかゆ: まさに、そこですよね……、「愛を全てを君に」っていう……。裏テーマは、『for you…』なんですけど、『for you…』って「あなたに」だけど、「♪愛が すべてが欲しい」じゃないですか……、「欲しい」って……。でも、(愛を)「あげる」っていうか、「与えること」かなと思っていたので、「愛を 全てを 君に」「あなたたちに」という思いで作りました。
ーー まさに、愛とは「求めるものではく、与えるもの」というキリスト教の考え方とも相通ずるものがある。
5 おかゆ ヒストリー ① ギャルになるために上京 〜「母が亡くなってなかったら、歌手になってなかったです…」〜
ーー 北海道の札幌で生まれた「おかゆ」は、小学生の頃から、札幌の繁華街「すすきの」などにあるスナックに、母親に連れて行かれていた。歌手になることが夢だった母や、他の客が歌う、歌謡曲や演歌を聴いて「おかゆ」は育った。母が大好きでよく歌っていた 髙橋真梨子 が耳に残って、「おかゆ」も好きだった。
おかゆ: とにかく、母が歌ってた 髙橋真梨子さんが、一番、耳に残っていて、そのころから好きでした。あとは、美空ひばりさんとか、セリーヌ・ディオンとか、小柳ゆきさんとか、そっち系の歌を、(母は)よく歌ってましたね。
おかゆ: でも、私が、自分で聴いてたのは、また全然違うんですよ。初めて買った CD は『だんご三兄弟』です、はい……(笑)。幼稚園の年長さんか、小学校 1年生ぐらいですね。小学生のときは……、「はっぱ隊」(フジテレビ系の番組『笑う犬の冒険』でできた お笑い 6人組ユニット)とか聴いてたかな……、ははははは……(笑)、学校で流行ってたからかな……(笑)。
おかゆ: 中学校 2年か 3年生のときは、「東京事変」がすごい流行ってて聴いてました。なんか、私も、ちょっとそのときは、心の中では、若干、屈折してたのかな……(笑)、思春期だったんでしょうね……(笑)。たぶん、スナックとか連れてかれてた自分……、「母親がすごい嫌だ」みたいな……(笑)。スナックには、小学校のころから連れて行かれてましたし、中学校のころは……、行ってなかった気はするんですけど……、行ってる姿は見た気がします……(笑)。
おかゆ: で、(高校 2年生で)ギャルになってからは、加藤ミリヤさんとか、lecca(レッカ)、浜崎あゆみさんとか、当時、めっちゃ好きでした。だから、私は、安室(奈美恵)ちゃんとかの下の世代なんですよね……、加藤ミリヤさんとか、西野カナさんとかが流行ってた時代のギャルなので。
ーー ギャルになるために、17歳、高校 2年生の時に上京した。
おかゆ: あの……、これまでは、話が長くなるので割愛してたんですけど、実は、私、茨城に住んでた時期があるんですよ。その当時、母親があまりにも嫌すぎて、そのころ、仕事の関係で茨城県に父親が住んでたので、そっちに、中2 の時に札幌から転向して 1年半だけ住んでて、そのときから、東京にちょくちょく行ってたんです。
おかゆ: でも、転向したら、ヤンキーしかいなくて……(笑)、全然、馴染めなくて、「なんか違う」って……。それもありましたね、ギャルに目覚めた大きなきっかけでもあるというか。中学を卒業してからは、バイトしながら、通信制の高校に……。で、「ギャルになりたい」ってなってからは、ひとりで東京に遊びに行ってました。
おかゆ: 17歳で上京したんですけど、もう、とにかく、とにかく東京に出て行きたかったので、家出同然だったんです。上京してからは、平和島でルームシェアして、で、バイトしながら、毎週、渋谷に出てきて、で、友達もできてきてみたいな感じで……。もうすごい最高で、ギャルになりたい夢を叶えて、バイト先も家から徒歩3分くらいで、髪の毛もネイルも自由だったから、正社員になって「ギャルで土日遊べていいや〜」って思ってたら、母親が亡くなったんですよね。そっから、一気に人生が変わりました。
ーー 上京したその年に、突然、母親が事故で亡くなった。
おかゆ: そうです。母が事故で亡くなってから、さらに、リーマンショックが起きて(2008年9月)、私、会社をリストラされたんですよ。そっから、また人生が変わりましたね、一気に。17歳にして、いろんなものを一気に失うという経験をして……。その経験、一回、何もかも失ったという経験は大きいですね……、絶望みたいなものを一度味わったので。
ーー そのころ、『egg』など、人気ギャル系雑誌の読者モデルをやっていた。自分が見ていたギャル雑誌に、自分が出られるようになって、さぞ嬉しかっただろう。
おかゆ: 楽しかったです。で、最初は、母が生きてたころも「読モ」(読者モデル)やっていて、『egg』とか『Ranzuki』(ランズキ)とか……、あと、黒かったんで、サーフ系の『Fine』(ファイン)とかもやってましたね。で、母が亡くなったあとは、「読モ」(読者モデル)というよりは、「歌手にならなきゃ」というのがあったから……。
ーー それまでは、全く考えていなかったが、歌手になることが夢だった母が亡くなったことがきっかけで、歌手になろうと思った。
おかゆ: はい、初めてです。それまでは全く思ってなかったです。だから、母が亡くなってなかったら、歌手になってなかったです。
ーー そして、様々な歌手オーディションを 100回以上受けたが、どれも合格しなかった。
おかゆ: 受けてましたね〜。avex とかのオーディションとか、いろいろ受けてました。私は、加藤ミリヤさんとか、Leccaさんとか、西野カナさんとか、そういうのを歌えば「歌手になれるのかな」と思ってたんですけど、どこのオーディションに行っても、「演歌に聴こえます」って言われてたんです。
おかゆ: 歌って、レッスンとかも受けたことなかったし、ちゃんとやったことがなかったから……。でも、とにかく「母のために歌手にならなきゃ」と思っていたので……、髙橋真梨子さんの『ごめんね…』が母の十八番だったので、とにかく『ごめんね…』ばっかり(オーディションで)歌ってたんですよ。
おかゆ: そしたら、「演歌に聴こえます」って言われたので、「レッスンに行った方がいいのかな」と思って、ネットで検索して、一番上に出てきたところを選んでレッスンに行って歌ったら、やっぱり「演歌に聴こえますけど、演歌やってましたか?」って言われて、「やってないです。母親がスナックでいつも歌ってました」って……。それを、ず〜っと聴いてたから、コブシとか入っちゃってて、もう染み付いちゃってたんでしょうね。
おかゆ: で、オーディションでも、「もしかしたら、演歌とか歌謡曲の方を受けた方がいいんじゃないですか」とか言われて、私、それ、なんかムカついちゃって、「違うし!」みたいになっちゃって、「私はそういうのじゃないし!」「演歌とかわかんないし!』みたいな……(笑)。
ーー そのころ、六本木にあったライブバーで昭和歌謡曲を歌うアルバイトもしていた。
おかゆ: 六本木の「BRAVE BAR」ってとこで歌ってました。それこそ、『ごめんね…』(髙橋真梨子)とか、森高千里さんの『雨』とか、あと昭和歌謡とか歌ってましたね。で、いろんな人が来て、ピアノの人が来て弾いてくれたりとか、ギターの人が来て弾いてくれたりとか、いい店だったんですけど、そこ、もうなくなっちゃったんですよね(2015年3月で閉店)。
ーー そんな中、2012年、20歳のとき、「ウギャル音楽部」というグループのメンバーになることができた。「ウギャル音楽部」とは、水産庁の公式認定プロジェクトで、若者に魚食の魅力を伝え漁業振興に努める運動として「ギャルが漁師の好きな演歌を歌う」という、ギャル 5人組のグループだった。
おかゆ: やってました〜。ちょうどハタチのとき「ウギャル」でしたね。もう、私も、結局、無理だろうと思って 100ぐらい受けたオーディションのうちのひとつが、「ウギャル」をやってた会社が当時やってた「アジア歌姫オーディション」っていうのだったんですよ。そのときも、『ごめんね…』(髙橋真梨子)を歌ったんですけど、その「アジア歌姫オーディション」では、投票でセミファイナルで落ちちゃったんですよ。そしたら、後から、その事務所の人から連絡があって、「ウギャル音楽部っていうのを結成することになったんで」って言われて誘われたんです。
ーー 「ウギャル音楽部」は、当時、2013年、日本クラウンから、『兄弟船』(鳥羽一郎を)『北の漁場』(北島三郎)、『祝い船』(門脇陸男)の 3曲をデジタル配信限定リリースして、日本全国の港に行って歌った。
おかゆ: イベントとかでは、500円 で CD も売ってました。でも、リーダーがもうお子さんできちゃって、すぐに、活動ができなくなってしまったんです。いなくなっちゃった子もいて、最初、5人だったのに、最終的に 3人で活動してましたね。
おかゆ: で、10年ぶりに、メンバーのひとりだった 佐々木詩織 ちゃんって子が、私の渋谷のライブに来てくれたんです。マネージャーさんが、「ずっと泣いてる子がいる」って言ってたら、その子だったんですよね……、うれしかったですね。もう、みんな結婚して子供が生まれて、フリーは、私と詩織ちゃんだけになりました……(笑)。
6 おかゆ ヒストリー ② レパートリー1曲で「流し」〜「歌謡曲を聴いてもらえるんじゃないかと思ったんです…」〜
ーー 「ウギャル音楽部」は、活動休止状態になっていたので(最終的に 2014年11月に卒業)、「おかゆ」は、ギターを練習して「流し」をはじめた。
おかゆ: ギターは「流し」と同時にはじめました。2014年の1月24日から「流し」をはじめてるんですけど、でも、まず、「流し」って言葉を知らなかったんですよ。知らないで、とにかく「店を回らなきゃ」っていう……。母親にいつもスナックに連れて行かれてたんで、そこだったら演歌とか歌謡曲を聴いてもらえるんじゃないかと思ったんですよね。
おかゆ: で、アカペラで歌ってもお客さんになっちゃうし、ピアノとかキーボードは持っていけないし、でも、ギターだったら「普通にコードを覚えて、自分で弾き語りすればいいか」って思ってコードを覚えました。とりあえず 1曲だけ、『兄弟船』(鳥羽一郎)は(「ウギャル音楽部」で歌ってたから)歌詞が入ってるし、(3つのコードだけで弾ける)スリーコードなんで、「とりあえず『兄弟船』でいいか」みたいな感じで……。
おかゆ: そもそもが、もうオーディションとか落ちまくって、もうハタチも超えちゃってるし、「ウギャル」も、5人だったのが、ひとり減って 4人、で、リーダーが子供ができて 3人になって、そのうち、ひとりが「頭イタ〜イ」みたいになっちゃって来ないとか……(笑)、みんなギャルなんで……(笑)、もう、ホント、当時は、みんな本当にギャルだったんすよ。もうほとんど活動もできない状態だったんです。
おかゆ: それに、だれも、別に「歌手になりたい」なんて思ってやってないから……、私だけだったんですよ、歌手になりたかったのは。だから、そもそもが違いすぎちゃって……。で、私が、歌手になりたいことも、ひとりでデビューしたいことも、(「ウギャル音楽部」のメンバー)みんなが知ってたから、その会社の「ウギャル」の担当の人に、「ひとりで歌いたいんです」って言ったら、その会社の人もみんな「おかゆは、その方がいいよね」ってなってましたね。
ーー 23歳で「流し」をはじめた初日、真冬の 2014年1月24日は、32軒連続で断られ、33軒目で、初めて歌うことができた。知らないスナックに飛び込んで行って「歌わせてください」と言うのは、相当な勇気がいると思う。なかなかできることではない。しかも、相手は酔っ払いばかりだ。
おかゆ: 最初から「おかゆです!」って言ってやってました。「流し」という言葉も知らなかったので、「演歌・歌謡シンガー」って言って……。とにかく、(スナックは)母親との思い出の場所だから、スナックを回れば、大好きな歌謡曲を聴いてもらえるんじゃないかと思ったんですよね。演歌というよりは、どちらかというと歌謡曲を歌いたかったので。
おかゆ: なんか、路上で歌うのは違うと思ったんですよね。みんな(路上では)ポップスとかばっか歌ってるし、だけど、スナックとか行って歌うと、歌謡曲を聴いてくれる人はいっぱいいるかなと思って……。何か歌手の道に繋がればとも思ったし……、「これがダメだったらやめよう」っていう思い出づくりのひとつとして、「人生の中で、こういうこともやってきた」って……、完結じゃないですけど、「もうやりきったよ」って母にも言えればいいなというような思いもありました。
おかゆ: でも、しんどいから、辞めちゃうだろうから、まず、やっぱり「目標を作ろう」と思って、で、母親の口癖だった「七転び 八起き 幸せに」っていうのを数字に置き換えて、出会った 7842人の人と写真を撮ろうっていうところからスタートしたんです。
ーー 最初、『兄弟船』1曲しかなかったレパートリーも 100曲以上となり、そのうち、作詞・作曲もするようになっていった。
おかゆ: 勝手に(作詞作曲を)してたっていう感じです。詞は、ず〜っと書いてました。だいたい、「流し」をしている最中にも、作曲みたいなこともしなきゃならなかったんです。知らない曲も歌わなきゃいけなかったから。その……、間を持たせなきゃいけないっていうので、酔っ払ってる人たちに、知らない曲でも「何となくこんな感じかな」みたいな……、わかんないから「なんとなく歌いきればいい」ていう状況があって……。
おかゆ: もちろん、その歌を覚えてるのが一番いいんですけど、知らない曲とか、めちゃくちゃ(リクエストが)来たんですよね。でも、「何とか、その場で歌い切って、やり切らなきゃいけないから」って、「赤本」(生伴奏用に使われている「歌謡曲のすべて」という楽譜集、通称「赤本」)を持ってたので、それを見て、なんとなく歌ってみたいな。
おかゆ: でも、本格的に、作詞・作曲を始めたのはインディーズのころですね、ちゃんと、1曲にするっていうのは。
ーー 「流しで日本全国を回ること」と、「そこで出会った 7842人と写真を撮ること」を目標に、「流し」を続けていると、そのうち、「若い女性が流しをやっている」ということが話題となり、流しを始めて約1年10ヶ月後、雑誌『BRUTUS』(マガジンハウス)の「スナック好き。」特集で、「“平成のおんなギター流し”おかゆの九州突撃記。」として大きく紹介されたことが、「おかゆ」が知られていく最初のきっかけとなった。
ーー その後、インディーズ・デビュー、そして、メジャー・デビューと繋がっていくが、その間も「流し」は続けていて、2019年のメジャー・デビューした年に、目標のひとつだった「流しでの全国制覇」を達成した。
7 おかゆ ヒストリー ③ インディーズ・デビュー 〜「(髙橋)真梨子さんとか見てると、頑張れたんですよね…」〜
ーー 「おかゆ」は、ただ「流し」をやっていただけで、最終的にメジャー・デビューできたわけではない。「流し」をはじめて約 3年後の 2017年には、インディーズで CD をリリースし、オリジナル曲も発表している。インディーズ時代、2016年 11月から、プロデューサーとして「おかゆ」を支えたのが、サックス奏者で作編曲家でもあり、髙橋真梨子のバックバンドなどでも演奏している 野々田 万照(ののだ まんてる)だった。
おかゆ: その……、万照(まんてる)さん(野々田 万照)との出会いも、また話が長くなるんですけど……(笑)。
おかゆ: まず、私が、もともと、母の代から(髙橋)真梨子さんの大ファンで、「流し」やってる途中、2015年くらいかな……、「自分への誕生日プレゼント」って今までしたことがなかったんですけど、たまたま、私の誕生日に(髙橋)真梨子さんのコンサートが横須賀芸術劇場であるって知って、見に行きたいって思ったんです。で、たまたま、そのチケットが手に入ったんで、自分の誕生日プレゼントだと思って見に行こうと……、初めて生(髙橋)真梨子さんを、そのとき見たんですよ。
おかゆ: そのときに、「ヘンリーバンド」(髙橋真梨子の夫のヘンリー広瀬がバンマスのバンドで、髙橋真梨子のバックバンドも務める)のみなさんが、(髙橋)真梨子さんのお色直しのときに、余興みたいなのをやってたんですよ。毎年、「ヘンリーバンド」ってなんかやるんですけど、その年は、「万☆照と熱燗党」って言って、ムード歌謡をやってたんですよ。「すっごい、面白い人たちがいるな」と思ったんですけど、でも、私のお目当ては(髙橋)真梨子さんだから……。
おかゆ: でも、その「ヘンリーバンド」のメンバーでは 万照(まんてる)さんだけ、その当時から SNS、ツイッターとかをやっていらして、私は(髙橋)真梨子さんのファンクラブには入ってなかったんですけど、万照(まんてる)さんのツイッターとかを通じて、(髙橋)真梨子さんの近況とかをいつも見てたんです。母のことがあったから、カーネギー・ホールで歌ってる(髙橋)真梨子さんとか見てると、頑張れたんですよね。「ああ……、私、まだ歌わなきゃな〜」とかって……。
おかゆ: で、その年かな……、万照(まんてる)さんのお誕生日に、「お誕生日おめでとうございます。いつも(髙橋)真梨子さん見てます。体に気をつけて頑張ってください」っていうのを、普通に、ツイッターで送ったんですよ。そしたら、なんと返事が返ってきたんですよ。その返事が、「ありがとう。ところで、キミ、事務所入ってる?」ってあったんですよ。
おかゆ: それは……、万照(まんてる)さんは、そのころ、その「ヘンリーバンド」のユニットの「万☆照と熱燗党」で、なんか、全国で「流しツアー」みたいなのをムード歌謡でやってたんです。たぶん、ライブハウスとか 100人ぐらいのところで。で、そのデュエット相手の歌手を探してたんです。
おかゆ: で、実は、「ヘンリーバンド」のキーボードの 小松崎 純 さんて方がいるんですけど、その 小松崎 純 さんて、私が茨城に住んでた頃の親友のリナちゃんって子が、土浦の純喫茶『シャルム』ってとこに嫁いだんですけど、その嫁いだ先が、その 小松崎 純 さんの仲間の家だったんですよ。喫茶店なんすけど、ライブとかもできるお店で、(小松崎)純さんが歌いに来たりもしてたんです。
おかゆ: で、その親友が、「そういえば、ユカ(おかゆ)、髙橋真梨子さんが好きって言ってたけど、なんか、髙橋真梨子さんのバンドの人がウチの喫茶店に来くるらしいから、飛び入りしたら?」って連絡が来て……、で、「絶対、行きたい!」って言って、で、ギター持って行ったんです。
おかゆ: で、(小松崎)純さんとも、1回、コラボしたことがあるんです(2015年12月)。『圭子の夢は夜ひらく』と『別れの朝』を歌ったんですけど、そしたら、(小松崎)純さんが Facebook に「流しのおかゆちゃんとコラボしました」ってのっけてたんです。それを、偶然、万照(まんてる)さんをが見てて、だから、知ってたんです。でも、「どうせ事務所に入ってる」と思ってたみたいで、事務所に入っていて、「なんか 流し とかやらされてて、かわいそうだな、若いのに」と思ってたらしいんです……(笑)。
おかゆ: それで、その誕生日のメッセージのあと、「ライブを見に来てください。デュエットもしてください」ってなって、私は、もう「スゲ〜!」みたいになって……(笑)、「ありがとうございます! ぜひお願いします!」って言ったんですけど、「招待しますから、一度、ライブを見に来てください」って言われた日に、ちょうど東北で「流し」をやってたから断っちゃったんですよ……、「流し」を優先して……(笑)。そのころ、とにかく「流し」で忙しかったんですよ。「流し」で全国制覇したかったんで、もう「そっちが先だ」とか思っちゃってて……、バカなんですけど……(笑)。
おかゆ: そのころは、どこの事務所にも所属してなかったので、「担当者連絡先」も自分の携帯とかを載せて回ってたので、それからメッセージとか 万照(まんてる)さんともやりとりするようになったんです。で、たまたま、新橋に打ち合わせでいらっしゃるときがあって、そのとき、ちょっとお会いしてお話しさせていただいたんですけど、そしたら、「いや、もう、それは何かグッズとか売った方がいいと思うし、それこそ ヘンリーバンドで演奏して、 CD を自主制作で作って、それを 流し で売っていけば、足しになるんじゃない?」みたいな話をしてくださって、そっからなんです。
ーー そうして、2016年11月から、野々田 万照 が、「平成のおんなギター流し おかゆ」のプロデュースをはじめ、翌2017年には、「おかゆ」の個人事務所「株式会社デルコラソン621」を設立。2017年3月には、オリジナル曲とカバー曲を収録したインディーズ・デビュー CD『おんな流しのブルース』をリリース。同年12月には、「おかゆ」が作詞・作曲した『オトナのワカレ』を収録した CD『女三楽章』をリリース。翌2018年には、オリジナル曲とカバー曲を収録した インディーズ 3作目となる CD『オンナナガシ』をリリースした(いずれも「デルコラソンレコード」)。
ーー これら、インディーズ時代の曲の中にもいい歌がたくさんある。『オトナのワカレ』のほかにも、母への思いと決意を歌った自分への応援歌『七転び八起き幸せに』(作詞:おかゆ / 作曲・編曲:野々田万照)、失くした人を思う心に沁みる歌『82回目の春』(作詞:野々田万照 / 作曲:おかゆ / 編曲:野々田万照)や、『おんな流しのブルース』(作詞:おかゆ / 作曲・編曲:野々田万照)などは、2019年のメジャー・デビュー後に、ビクターから発売されたアルバム『平成オリジナル BEST』に収録されていて、聴くことができる。
8 おかゆ ヒストリー ④ メジャー・デビュー 〜「たまたま見に来てくれてたんですよ…」〜
ーー 2017年3月3日に、初のソロアルバム『おんな流しのブルース』でインディーズ・デビューしてからは、テレビからも呼ばれるようになっていった。2017年4月から『あなたが出会った昭和の名曲』(BS11)では「おかゆの日本列島流し」というコーナーができた。また、5月には『徳光和夫の名曲にっぽん』(BSテレ東)で『おんな流しのブルース』を歌唱、6月には『由紀さおりの素敵な音楽館』(BS-TBS)、7月と8月には『歌え!昭和のベストテン』(BS日テレ)にも出演した。また、この年は、4月から12月まで、テレビ東京系の人気カラオケ番組『THEカラオケ★バトル』にも 5回出場し、そのうち、『女のブルース』と『曼珠沙華』で、2回で優勝している。
おかゆ: そうですね〜。当時、ありがたいことに、「流し」で、いろんな人と出会っていたので、それこそ、そのテレビ局の人とかにも「流しのおかゆちゃん」っていうのを知ってもらってた時期だったんですね。
おかゆ: それで、ちょうどそのころ、私が、増位山太志郎 さんの「ちゃんこ屋」さんで「流し」をしてたときがあったんです。そのころ、(おかゆの)チラシやフライヤーがいろんなところに出回っていたみたいで、徳光(和夫)さんの番組(『徳光和夫の名曲にっぽん』BSテレ東)のプロデューサーの方とか、日音さん(「にちおん」TBS系の楽曲管理をする音楽出版社)とか、いらっしゃってたんですよ。
おかゆ: でも、そのときも、すごい、いろいろやっぱりあったんですよ。事務所に入ってなかったから、それこそ、いろんな人に紹介させられたりとかあったんです。でも、当時、私は、それで、すごくいろいろ悩んでしまったんです。
おかゆ: で、ビクターの社長さんとか、永田さんって今の部長さんとかも、増位山太志郎 さんの「ちゃんこ屋」さんに見に来てくれてて、歌も聴いていただいてて、「よかったら、ウチに一度、話を聞きにこない?」とかも行ってくださってたんですけど、ちょっと、いろいろ、本当、悩んじゃった時期で……。
おかゆ: ちょうど、そのあたりが、東北の「流し」から帰ってきて、万照(まんてる)さんと新橋で話をしてたころで、「実は、そういったお話もいただいてるんですけど、私は、やっぱり髙橋真梨子さんさんが一番の憧れで、(髙橋)真梨子さんっていうのは "母との想い" で来てるから、自分が後悔しない道を選択するのが一番いいなっていうのがあって」という話をしたら、「だったら、事務所を作って一緒にやってけばいいじゃん」みたいな。そんな、ちょっと軽い感じで、何も業界の知らない 2人が作るっていう……。それで、(2017年に)万照(まんてる)さんと個人事務所(「株式会社デルコラソン621」)を立ち上げたんです。
おかゆ: それで、『徳光和夫の名曲にっぽん』のスタッフの方とか、増位山さんお店で出会った業界の方たちに、「野々田万照さんと一緒に事務所をやることになりました。ここに所属しましたから、これからよろしくお願いします」と……。で、その時、「がんばれ!」って言ってくださったのが、『徳光和夫の名曲にっぽん』のスタッフさんたちだったんです。
ーー そして、2017年3月のインディーズ・デビューから約1年半後の 2018年10月からは、大手レコード会社に所属していないインディーズ歌手であるにも関わらず、『徳光和夫の名曲にっぽん』(BSテレ東)で、司会の徳光和夫のアシスタントに抜擢され、レギュラー出演することになった。この『徳光和夫の名曲にっぽん』では、現在も司会のアシスタントを続けている。それまで、この番組の司会のアシスタントは、2年半やった 椎名佐千子 を除き、毎年、1年でアシスタントは代わっていたが、「おかゆ」は、もう 5年も以上も続けている。
おかゆ: そうなんですよ〜。ホント、ありがたいですね。メジャーデビュー前、インチーズのときから、もう、5年もですからね。いろんなこと思うんですけど、やっぱり、この『徳光和夫の名曲にっぽん』には、本当に育てていただいてるなっていうのはありますね。
ーー その間も、「流し」を続けていて、2019年のメジャー・デビューした年に、目標のひとつだった「流しでの全国制覇」を達成した。
おかゆ: はい、メジャー・デビューする前の月……、令和が発表になった日、4月1日か……。いや、もう……、1000軒は超えてますね、軽く……。でも、まだ 7842人を達成してなくて、コロナでずっと止まってたんですけど、でも、あと何百人かなんですよ。
おかゆ: で、私、来年(2024年1月)で、「流し」やって、まる 10年なんですよ、2014年からはじめてるんで。だから、絶対、来年、何としても達成したいと思ってます。そこは、完結しようと思って。できれば、地方に行きたいですね。本当に、みんなにお世話になったので。いろんな出会いも、いろんなドラマもあったので。前に行ったところも行きたいですね〜。コロナの時も、なんとか踏ん張って営業されてるところもあるので。もう、相当たくさん、やめちゃったところもあるんで。
ーー 「流し」はラクではないだろうが、今となっては楽しいのだろうか?
おかゆ: まあ、いろんな出会いは、ありますけど……、楽しくは……、ないですね……。
ーー もちろん、うれしいこともあったり、満足感を得られたりすることもあるとは思うが、それより、7842人という目標のための義務感のようなものと、「始めた以上、きちんと完結したい」という想いが、原動力なのだろう。
ーー そうして、2019年 5月1日、ビクターエンタテインメントから、シングル『ヨコハマ・ヘンリー』でメジャー・デビューした。
おかゆ: (ビクターのディレクターの)河村さんは、その増位山さんのお店には来てなかったんですけど、インディーズ時代、カラオケバトルに出てるころ、CD のキャンペーンでショッピングセンターを回ってたときに、たまたま見に来てくれてたんですよ。
おかゆ: そのとき、「なんで、この人はインディーズなんだろう?」ってみたいな感じで声かけられて、「デビューとかされないんですか?」って言われて……、そっからです。なので、二人三脚みたいなところは結構ありますね。河村さんは、本当、恩人です。
9 デビュー 5周年、今後やりたいこと 〜「それが、最高に幸せな瞬間なんです…」〜
ーー 来年、2024年の5月で、メジャー・デビューして、まる 5年となる。デビュー5周年にあたり、今後やってみたいことを聞いた。
おかゆ: あっ、本を書きたいですね。「流し」をやっていて、いろんなことがあったんです。本当に、いろんな人との出会いだったり、そこのママさんたちのドラマというか話を聞いてたきたこととか……。『愛してよ』(作詞・作曲:おかゆ / 編曲:野々田万照)(2nd Single、2020年)とかは、そういったママさんたちの実体験とかベースになったりしますけど、やっぱ「訳ありの人」がめちゃめちゃ多かったんですよね。そういう話とか、お客さんの物語とか……。それはやりたいんですよね……、「流し放浪記」みたいな。
おかゆ: 1回、東京新聞さんで『私の東京物語』っていうコラムを、毎週、書かせていただいて、10回かな……、連載させていただいたんですけど、あれをやったときに、「まだまだ足りない」って思ったんです。なので、本にしたいな〜って思ったんですよね。
おかゆ: あと、音楽的なことでは、編曲を、もうちょっとしっかりやってみたいなと……、DTM とかやってみたいのもありますね。あるけど、「でも、どうなのかな?」って……、そこはプロに任せた方がいいのかなっても思いますね。
おかゆ: プロのアレンジャーさんの見てると、「やっぱり、さすがに、これは……」って思いますね。やっぱり、ちゃんとそのベースというか、「基礎がないとな」とか思ったりして。今回の 鈴木 豪 さんとか、バークリー(音楽院)とか行ってらっしゃるから、全然、違うんです、やっぱり、もう「あ〜、やっぱり、すごいな〜」と思って……。
おかゆ: あと、そうですね……、アナログレコードをずっと集めてて、「昭和歌謡 DJ」を、今年、やっと本格的にちょこっとやらせていただいたので、来年(2024年)は、そこをもうちょっと、そっちのイベントみたいなものをできるようになればいいですよね。それこそ、DJ OSSHY(DJ オッシー)さんと、できたらいいなっていうのはあります。
ーー これまで、「おかゆ」は、椎名佐千子、小金沢昇司、水田竜子ら、他の演歌歌手への楽曲提供もしている。「おかゆ」とクレジットされていることもあれば、「六月ゆか」(むつき ゆか)という「おかゆ」のペンネームの場合もある。
おかゆ: とにかく、楽曲提供は、今後もしたいですね! すごく勉強になりますし、楽しいですね。自分とはまた全く違ったやりがいがあります。で、その曲を歌ってくださってる姿を見るとうれしいし……。去年は、秋元順子さんに書かせていただきました。
ーー 秋元順子のシングル曲として提供して、2022年10月5日に発売された『一杯のジュテーム』(作詞・作曲:おかゆ / 編曲:多田三洋)は、NHKラジオ『ラジオ深夜便』で「深夜便のうた」としても放送された。今回、発売された「おかゆ」のカバー・アルバム 第3弾『おかゆウタ カバーソングス 3』の初回盤には、2023年7月に渋谷で行われた デビュー5周年 記念ライブの DVD が付属している。その中では、秋元順子に提供した『一杯のジュテーム』を「おかゆ」がセルフカバーしたバージョンも収録されている。秋元順子の歌とはまた違った魅力があり、作った本人のみが持つ説得力のようなものを感じる。
おかゆ: ホントですか〜? ありがとうございます〜!あれは、(秋元)順子さんになりきって作ったんですよね。最初は、もっとドロドロした曲を書いてたんですけど、『愛のままで…」みたいな……。そしたら、「なんか違います」ってなっちゃって、「ガーン!」ってなって……、もう、これは「おかゆタッチでいくしかないな」と思って、ちょっとフォークっぽい感じにして、締め切りギリギリに「すいません、こんな感じはどうでしょうか」って……。そしたら「これでいきましょう!」ってなって、「これでいいんだ……」みたいな。
ーー 最初、秋元順子のこれまでの曲をイメージしすぎていたのだろう。「おかゆ」に頼むと言うことは、「おかゆ」らしさを求めてたから、「違う」となったのだろう。
おかゆ: そうですね〜……。で、この間、YouTube で、どっかの 80歳くらいのおばあちゃんがカラオケで歌ってる映像を見たんですよ。その時、「これ、もしかしたら、旦那さんのことを思って歌っていらっしゃるのかな」って思ったら、沁みちゃって、自分が作った曲なのに涙でちゃって。作って良かったというか、それが、すごいうれしかったんですよね。
おかゆ: なんか、そういう経験っていうのも、本当、(秋元)順子さんっていう大先輩に書かせていただいたからこそ、させていただける喜びであって……、う〜ん……、書いていきたいですね、これからも……、ライフワークにしたいし。
おかゆ: 私は、私の声しかないじゃないですか、持ってる声が。でも、他のいろんな方だったら、もっと世界が広がるというか……、自分の分身みたいな存在なんですよ、曲っていうのが。それを歌っていただいたりとかすることって、その方の才能と声によって、輝きが増したり変わっていくじゃないですか。それが、最高に幸せな瞬間なんです。
おかゆ: だから、私は、もちろん、今は、シンガーソングライターで、自分で作って自分で歌えば一番いいんですけど、もしかしたら、「ソングライターとしての自分」っていうのがひとり、自分の中でいて、「そっちの自分が、自分かもしれないな」ってちょっと思ってはいます。
おかゆ: なにか、「幸せ度」が、ちょっとやっぱり……、「責任」なのかもしれないです。自分で作ったものを自分で歌うっていうのって、生身できちゃうから、傷つき度合いも違うので……、プレッシャー、責任感も全て含めてですね。なんか、他の人の方が、素直な気持ちで書いたり作ったりできるのかもしれないです。自分だと、ちょっと構える部分あります。
おかゆ: たとえば、MV(ミュージックビデオ)にも、今回は、自分で出てますけど、(前作の)『赤いひまわり』(作詞・作曲:おかゆ / 編曲:多田三洋)(4th Single、2022年)も自分で出ましたけど、それまで(ミュージックビデオに自分が)出なかったのは、(詞の主人公が)「私って思われるのは、どうなんだろう?」って思った部分もあったんですよ。
おかゆ: 『愛してよ』(作詞・作曲:おかゆ / 編曲:野々田万照)(2nd Single、2020年)のとき、(ミュージックビデオで)自分が演じなかったのは、そういう理由もあって、私を知ってる方からすると、私って想像されすぎちゃうと「(詞の)世界観がどうなんだろう?」みたいな……。
おかゆ: 気にしちゃいけないと思うんですけど、ちょっと意外と、そういうところを気にしてて、だから、どっちかって言うと、人に書いて歌っていただくって方が、なんかフラットな気持ちで、ナチュラルに聴いたり感じたりできる歌になるっていうのはありますね。
(取材日:2023年11月30日 / 取材・文:西山 寧)
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