鱗角

涙さえも凍てついた日々が来ないように

意思を消す部屋に一人きりは嫌だし、
畳まずに干したままのシャツの襟はよれたままで
待っても共に移ろいだ靴の底は薄く、
とうに何処へも行けやしないのに
洗いざらした輪郭に触れ、触れる

涙さえも凍てついた

日々が来ないようにと
咲った花を愛でるような柔い乱暴を湛えた
その鋭い爪が、誰にも届かぬように
僕が必ず、壊さなきゃ

ほどけてもつれる布のように不可逆なテセウスの船に乗って
僕は未来を歩んでみたいと
願えば願うほどそれは遠ざかるものだ

雨垂れが穿つ石の穴に、
暮らす日々の花を手向けるまで

この涙さえも無意味に消えた
泣いていただけ、あの忌み嫌った弱さを二度と許さない
甘い菓子ひと呑みにするような無邪気で眩い目の光と
鋭い爪や、傷に触れる鱗や角が、誰にも届かぬように
僕が必ず、僕が必ず壊さなきゃ
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