カメレオンの憂鬱

固く閉ざした瞼の奥に 誰にも知られぬ闇がある
右向け右を汚さぬように 倣って身体を差し出した

人と違うと唾をかけられて
はみ出すなと杭を打ち込まれて
紛れ方 覚えたカメレオン

板についてきた迷彩 万全で守る体裁
違和感に気付いても 口に出すのは大罪
上手く馴染めたでしょうか 上手く笑えたでしょうか
いつの日か ありのままで 救われることを信じて

鈍色に憂う瞳孔に 映り込む世界は極彩で
真実(ほんとう)の色など 霧の中

強く握った拳の中に 誰にも譲れぬ夢がある
その為ならば何も厭わない 誓いが呪いに変わろうと

必要とされる幻想 居場所があるだけ上等
あの頃は良かったと 思うことすら大罪
上手く馴染めたら正解 上手く笑えたら正解
少しずつ着実に 蝕まれて澱むグラデーション

いつしか心まで染められて
それでも足りないと塗り重ねて
自分の色 忘れたカメレオン

どんなに繕ったって どんなに着飾ったって
埋まらない 満たせない 泣くことすらも出来ない
誰か本当の私を 色を失くした私を
もう一度 抱き締めて 全て赦してくれないか

鈍色に歪むこの世界に 佇む私は一体誰
救いなんて何処にも無かった
死んだように生きる 憂鬱なカメレオン
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