廃墟の森

振り向けば 名も知らぬ木が 伸びていた
知らぬ間に 名も知らぬ木が 伸びていた

その木は いつも埃臭くて
夢という名のベールに隠されながら 増えてゆく

鉄の匂い 土も空も 削りとられ

その幹は 仰ぎ見るほど 煌びやか
その根には けれど草木が 育たない

その木は 沈みゆく時代の上に
沈みゆくスピードと同じ速さで 伸びてゆく

誤魔化すように 甘い蜜で 誘い出せど

夏が過ぎ 祭りも去れば 蜃気楼
人も去り 蛻の殻が 残される
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