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Wienners ライヴレポート

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【Wienners ライヴレポート】 『TREASURE TOUR 2022』 2022年9月30日 at Spotify O-EAST

2022年09月30日@Spotify O-EAST

撮影:かい/取材:小川智宏

2022.10.12

ニューアルバム『TREASURE』を引っ提げて、7月26日・千葉LOOKを皮切りに2マン形式で全国を回ってきたWiennersの『TREASURE TOUR 2022』。約2カ月間のツアーのファイナルは9月30日、渋谷・Spotify O-EAST。この日の対バン相手は、Wienners、そして玉屋2060%とは切っても切り離せない存在、そう、でんぱ組.incだ。玉屋が彼女たちに多くの楽曲を提供してきたこともあり、たびたび対バンをしてきた両者。前回の対バンは2018年9月のでんぱ組.inc主催イベント『コスモツアー2018 ~既知との再会~』で、今回はちょうど4年振りの邂逅となる。当然Wiennersのファンもでんぱのファンもそのへんの関係値は十分に分かっているわけで、会場はさながらお祭りのような熱気に満ちあふれていた。

■ でんぱ組.inc ■

そんなO-EASTのステージにまず登場したのはでんぱ組.inc。手拍子が鳴り響きペンライトが揺れるフロアーを前に1曲目から玉屋が彼女たちに初めて提供した楽曲である「でんぱれーどJAPAN」を投下して一気に盛り上げる。さらに立て続けに繰り出されたのは「でんぱーりーナイト」。もちろんこれも玉屋の曲だ。オーディエンスの手拍子に乗って、ダンスパフォーマンスもますます切れ味を増していく。

実はこの日、でんぱ組.incは“ぺろりん”こと鹿目 凛と“こずこず”こと愛川こずえが体調不良により欠席。だが、いつもよりメンバーが少ないということを感じさせない熱演だ。さらにそのふたりのピンチヒッターとしてステージに古川未鈴が呼び込まれる。産休明けでまだ徐々に活動に復帰しつつある段階の彼女だが、欠席メンバーふたりのぶんも背負って急遽出演することにしたらしい。久々のWiennersとの対バンに、でんぱ組.incの総力戦である。髪型を“玉屋さんに寄せてきた”というピンキー!こと藤咲彩音は“好きなんです! 嬉しい!!”と、この対バンの喜びを叫んでいる。また、ここまでのセットリストを見ても分かるとおり、この日は“あおにゃん”こと空野青空がいうところの“玉屋スペシャル”ということで、その後も玉屋がかかわった楽曲が次々と披露されていった。

ハードなロックサウンドが鳴り響く「衝動的S/K/S/D」、オーディエンスの拳も突き上げられたパンクな「アイノカタチ」、再び古川も加わってキレキレのダンスを披露した新曲「でんぱっていこーぜ!!」(これは玉屋が編曲で、∴560∵がベース演奏で参加)、ピンキー!の“足腰折ってこーぜ!”という煽りから突入したラストスパートでは「千秋万歳!電波一座!」に「プレシャスサマー!」を連打すると、気合の入りすぎた相沢梨紗が締めの挨拶を盛大に噛むというMCを経てラストは「でんでんぱっしょん」。リボンを使ったダンスも鮮やかに決まり、次のWiennersにバトンをつないだ。

■ Wienners ■

びっくりするぐらい短い転換(このへんももしかしたらタフな2マンツアーを繰り広げてきた成果かもしれない)を経て、いよいよWiennersのライヴがスタート! “バンド史上最強になって、Wiennersが帰ってきたぞ!”。そんな玉屋の不敵な宣言から「MONSTER」をぶちかますと、「GOD SAVE THE MUSIC」でパンクバンドとしてのDNAを爆発させる。玉屋のピンク色のロン毛が眩しい。それにしてもさすがツアーファイナルと言うべきか、バンドのパフォーマンスはキレキレである。KOZOの力強いドラムも、∴560∵の安定感のあるベースプレイも、楽曲の中で時に主役として、時にスパイスとして作用するアサミサエのキーボードと歌も素晴らしい。その真ん中で楽曲を引っ張るのが玉屋のヴォーカル。グッシャグシャでバカでかい音の中でも、彼の歌がズドーンと伝わってくる感じは、以前のWiennersにはなかったものだ。

「TRADITIONAL」で手拍子の嵐を巻き起こすと、“用法用量を守って、ぶち上がってください!”と「Magic Bullet Music」へ。音源では玉屋がリードヴォーカルだが、実はアルバムにはボーナストラックとしてアサミサエが歌うバージョンも収録されていて、この日はそのアサミサエバージョンを披露。マイクを握ってお立ち台に上って歌うアサミサエに、フロアーからも大きな拍手が贈られた。この日のライヴの主役はある意味、アサミサエだったんじゃないかと思うほどだったのだが、それを象徴していたのが中盤のセクション。「FACTION」を終えると、どこからかドープなビートが聴こえてくる。そして、マイクを握った玉屋とアサミサエの2MCで原曲とはまったく違う姿に変貌したリミックスバージョンの「ASTRO BOY (Black Hole ver.)」を投下すると、さらに「BIG BANG」でもラップを披露し、玉屋、∴560∵、KOZOがステージから離れると、ひとり残ったアサミサエがカラオケで「日本中I WANT YOU」を歌い上げる。まるでアイドル歌手のようにフロアーに手を振りながら歌って楽しそうだ。即座に反応してペンライトを灯すオーディエンスも見事である。

そんなアサミサエオンステージを終えると、ライヴも終盤戦に。玉屋の“みんなの前でライヴがやれている、それだけで胸がいっぱいです”という言葉からの「HORO NOVA AZIO」ではフロアーに大きな手拍子を巻き起こし、「LIFE IS MY LANGUAGE」では∴560∵の叩くフロアタムがますますお祭り騒ぎを助長する。オーディエンスの熱もさらに高まってきたところで押しも押されぬアンセム「UNITY」(声は出せない状況ながらも、あえてサビをオーディエンスに預けた玉屋のパフォーマンスも胸熱だった)を繰り出すと、まさにタイトルどおりのアツい一体感が会場を包み込んだ。そして、アルバムの中でもバンドの空気感を一番よく伝えていたショートチューン「よろこびのうた」でこのツアーそのものを祝福してみせ、最後は突き抜けたポップさを爆発させるサマーチューン「SOLAR KIDS」。『TREASURE』で到達したバンドの最高地点を鮮やかに見せつけた。

■ Wienners×でんぱ組.inc ■

アンコールではでんぱ組.incのメンバーも呼び込み「サクラあっぱれーしょん」と「GOD SAVE THE MUSIC」をセッション。ピンキー!はじめでんぱのメンバーもみんな超絶楽しそうで、観ているこっちも自然と笑顔になる。この日2回目の「よろこびのうた」を鳴り響かせると、玉屋が叫んだ。“開戦前夜の胸の高鳴りが今しています!”。つまり、この最高の場所から、Wiennersのさらなる挑戦が始まっていくということだろう。その宣言に相応しいパワフルなツアーファイナルだった。...と思っていたら、終演を告げるアサミサエの影アナウンスを玉屋がジャックしてバンドがステージに戻ってきた。“ちょっと待って! どうしてもやりたい曲がある”という玉屋がメンバーと話して演奏したのは1stアルバム『CULT POP JAPAN』からの「Idol」。でんぱ組.incとWienners、アイドルとパンクバンド、両方への愛をあふれさせるような熱演で、夢のような対バンは幕を下ろしたのだった。

撮影:かい/取材:小川智宏

Wienners

ウィーナーズ:2008年に吉祥寺弁天通りにて結成。予測不可能な展開、奇想天外かつキャッチーなメロディーに人懐っこい男女ツインヴォーカル絡み合う、類を見ない独自の音楽で、子供から大人まで聴くもの全ての喜・怒・哀・楽を電撃的にロックする銀河系パンクバンド。

でんぱ組.inc

秋葉原発信のアイドルグループ。メンバーは古川未鈴、相沢梨紗、夢眠ねむ、成瀬瑛美、最上もが、藤咲彩音の6人。全員がアニメ、ゲーム、美術、ネットカルチャーなどに特化したオタクであり、またライヴ&バー・秋葉原ディアステージに所属するスタッフである。2008年12月、1stシングル「Mirror Magic」でインディーズデビュー。音数が多く奇抜なアレンジが印象的な楽曲と、アグレッシブなパフォーマンスで話題を呼ぶ。2010年2月、「kiss+kissでおわらない」でメジャーデビュー。2度のメンバーチェンジを経て、2012年5月、4thシングル「でんぱれーどJAPAN/強い気持ち 強い愛」を発売。2013年1月、メンバーのいじめや引きこもりなどの挫折経験と現在に至るまでを綴った「W.W.D/冬へと走り出すお!」を発表。オリコンチャート10位を獲得し、一躍知名度を上げる。グラビアモデル、個展開催、DJなど、アイドルに留まらず多方面に渡る活動を見せ、同年9月には映画『白魔女学園』でスクリーンデビューを果たした。同年12月、2ndアルバム『WORLD WIDE DENPA』を発表。

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