わかっていても<君といられるなら>って思っちゃうな。

―― 2曲目「No More」を最初に聴いたときの印象はいかがでしたか?

川畑 「1曲目とは全然タイプの違う楽曲だなぁ、久々にこういうテイストだなぁ」と思いました。ただ「Play The Game」で結構ノッちゃっていたので、この物語の主人公の気持ちまで降りるのが大変でした(笑)。

堂珍 1回聴いただけでは本音が掴めないなとも感じて。相手の心変わりや嘘、そういうものに対する自分の距離の置き方、けじめのつけ方として<君と君を好きな僕に say goodbye>と言葉を投げている。ということは、気持ちにひとつクッションを置くような人物像なのかな、とか。強がりなのかな、とか。主人公の<僕>はどんな性格なのかよく考えて。歌っていくなかでどんどん感情を入れ込んでいって、作り上げていく感覚でした。

川畑 好きすぎたんだろうね。自分でも<こんな僕はきっと重すぎたかな>って言っているけど。

堂珍 よく言えば優しいし、悪く言えば脆いし。

川畑 惚れたもん負けって感じするよな。

堂珍 あとやっぱり最初の<わりと昔から 気づいていたよ 君がつく嘘に>というワンフレーズに、曲の特徴がいちばん表れているかなと思ったので、その入り口の登場の仕方はとくに意識しましたね。

―― この冒頭は意味深ですよね。“昔から気づいていた嘘”とは一体…。

川畑 どんな嘘だろうって思いますよね。だから<僕>はかなりの時間、我慢していたんだろうなと。

堂珍 <君>がやり手だったのかな。

川畑 でも<僕>に気づかれちゃっているから。

堂珍 じゃあ<僕>の心が広かったのか。優しくて。好きすぎて。

―― 「No More」の<僕>もまた、先ほどお話した“CHEMISTRY楽曲の主人公像”に当てはまる気がします。

川畑 本当だ。たしかに遠慮がちで…。

堂珍 こういう<僕>の心情というか、男性側の気持ちって女性からすると共感しにくかったりするのかなぁ?

川畑 女性ってスパッとしているからね。「なんだこいつ」とか思わないですか?

―― いえ、むしろ女性のほうがこういう“沼恋”にハマりがちな気が…。相手が自分を好きじゃないとわかっていたとしても、<会えなくなるほうがつらいから>と思ってしまうようなところはとくに共感できると思います。

堂珍 あー、なるほど。

川畑 そうか、女性も<僕>側になり得るのか。

―― お二人が<僕>だとしたら、とくにどのフレーズに共感しますか?

photo_01です。

堂珍 あ、俺あるよ。

川畑 どこどこ(笑)。

堂珍 俺はね、<不似合いでもいい ふぞろいでいい 君といられるなら>っていうところ。こういう気持ちには命をかけるかもしれない。

川畑 いやぁ、俺もそうかな。わかっていても<君といられるなら>って思っちゃうな。好きだから。

堂珍 そこは俺と近い部分があるよね。

―― 歌割りを考える際、おふたりの歌声にそれぞれ似合う言葉などは意識されるのでしょうか。

川畑 昔はありました。でも今は、「似合いすぎちゃって面白みがないから、逆にしてみよう」ってパターンも多かったりします。今作は歌割りをかなり松尾潔さんにお任せしていて、どこを自分が歌うのか知るのが楽しみなんです。それって傍から見た僕たちのイメージじゃないですか。「お、こっちを俺が歌うんだ!」みたいな。経験を重ねて、なんでもハマるようになってきたからこそ、楽しめるようになってきた部分だと思います。

堂珍 あと「Play The Game」に関しては、共作詞だったので、自分の書いたフレーズを歌っていることが多いですね。それはもう歌詞をまとめてくださった松尾さんなりの、「それぞれ書いてきてくれた部分は、本人に歌ってほしいな」というシンプルな思いなのかなと感じました。

―― おふたりが、歌詞面で影響を受けたアーティストっていらっしゃいますか?

川畑 僕はやっぱりTHE BLUE HEARTSさんと尾崎豊さん。シンプルで情熱的。普段も使うような言葉なのに、置き場や表現を変えるだけでどうしてこんなに刺さるんだろうって。もう満遍なく好きですけど、とくにTHE BLUE HEARTSさんは「青空」と「終わらない歌」、尾崎豊さんは「Forget-me-not」と「I LOVE YOU」かなぁ。「I LOVE YOU」を18歳で書くって、どんな18歳だったんだ!と思いますね。

堂珍 今でも影響を受け続けているのはスピッツさん。たとえば、歌詞にふっと動物の名前とかを出されるじゃないですか。自分はあまりできないことだから、すごいなぁと思います。それに誰も傷つけない歌詞ですし、スッと言葉が入ってくる。

あと車谷浩司さん。Spiral LifeとかAIRとか。こないだSpiral Lifeの楽曲がリマスターされている『デビュー30周年記念BOXセット』が届きました。あの収録曲の「STEP TO FAR」とか「CHEEKY」は僕もカバーさせていただいていて。10代のときの自分が聴いていた曲だし、今でも変わらず歌詞が響きますね。

―― ありがとうございます! 最後に、これから歌ってみたい、書いてみたい歌を教えてください。

堂珍 今日お話に出たように、CHEMISTRYの主人公像ってやっぱりどこかアンニュイで、優柔不断で、優しい心の持ち主であることが多い気がして。だとしたら、まったく違う竹を割ったようなタイプの主人公の歌はおもしろそうですね。

川畑 僕は今「We Are The World」が浮かんでいますね(笑)。みんなで歌っているやつ。やっぱり大きいことを歌うなら、みんなで集まって、いろんな世代を巻き込んで、いろんな垣根を越えて挑戦できたらいいなと思っています。今なかなかそういう歌がないじゃないですか。震災を含めいろんな災害が起こっているし。そういうとき、一緒に声を合わせられるような、ずっと忘れないような歌を残したいなと思っています。


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