カスガイチリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | キミならボクの命さえも奪えるだろう ボクの光をさえぎるのは簡単さ ああ秋の花が放つ香りは恒に ふと頭にキミを映しだすような麻薬 差し込む木漏れ日がボクを刺しても 少しも痛みなど感じないように ああ知らず知らずにボクは取り憑かれてる キミの影がキミを裏切らぬように 光さえ灯せばボクは生きぬいていけるよ ああどこまで行けば満たされるのだろう 嫉妬、失望そして憎むこともやり終えた 耳を通り過ぎる歌がキミの心を揺さぶることがあるように ああボクはちょっとの期待を傷にたらす 過ぎ去る季節が必ずボクの身体を衰えさせていくから ああ明日ではもう遅すぎるかもしれない キミならボクの命さえも奪えるだろう 全てはキミの手に委ねてしまった 深くゆがんでる彼方まで続く闇 ボクの手を離すキミさえも受け入れる |
はなむけチリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | 岸に辿り着いてふいによぎったこと 「もうあの温度は還らない」 君の期待を仇にするほど 冷めた大人になったようだ 赤と青に走る脈のように繋がれていた ひとつに向かっていくつもりだった 左胸の奥に繋がる灯火があれば すれ違いざまに見る不安などない ブレーキの効かない道は続いていく 宵闇、交錯するわだち 行方知れずのあの胸の音 待てど暮らせどもう戻らない 赤と青の狭間に黄色の点滅が彷徨う ひとつになれば繋がると思っていた つきまとう追い風、抜け出せない記憶の中を 遠くまで走れど、手のひらの上 赤と青に走る脈のように繋がれていた ひとつに向かっていくつもりだった 左胸の奥に繋がる灯火があれば すれ違いざまに見る不安などない |
タルトチリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | 卵と小麦粉で動物の型抜いて、 仲良く手を取り共に作り上げた。 白い粉を叩いてさあ隠しましょ。 目を覆いたいようなことに蓋をして。 ヨダレも滴るような甘い誘惑は、 現代の生き物に進化する間を与えない。 藍色のテーブルに伸ばしたこの生地を、 切り離して並べただけの小さな器。 ただそれだけのこと… 焼き色がついた皮にナイフを立て、 命と命の交換を繰り返す。 身も尽きるまで泳いでいた魚も、 色づいて間もない鮮やかな果物も。 香ばしい匂いの旗や地図は、 分かち合うために存在したはずだった。 かき回してばっかりのくだらない営みよ。 取り分けられた皿の上であたしを見て、全部理解できるの? 藍色のテーブルに伸ばしたこの生地を、 切り離して並べただけの小さな器。 ただそれだけのこと… 火を消せば冷めてしまう程浅はかな交わりで成り立つ空虚な生地を、 切り離して並べただけの小さな器。 悪臭がやまない… |
苔の生したこんな代はチリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | 人という名の生き物に人気の高いこの星は 今となりゃ宇宙のあくた 独り歩くこの身だって同じくらい哀れだと 真っ白な歯ならびの満月に笑われた気がした帰り道 私から奪っていらない感情を どれくらいのもの引き換えにでもいいから どうせまた同じ事繰り返すだけなら この体一つあれば事は足りるんだから ああこの檻は二度と出られぬ気がしてしょうがない 水槽の魚も社会にもまれては四六時中四苦八苦 私からふさいでいらない逃げ道を 溢れ出るふとどきな感情が隙間を作る 本当に歩みたい道が見つからなくって 手を出しちゃいけないものに目を落としてる 「私から奪っていらない感情を」 こんな思考がむしろ逃げ道と解かってても 答えは曖昧で真実はあやふやで 取り繕う事だけやたら上達していく 貴方から奪った心が離れたって 仕方がない程に今の私は壊れてる だってまたサイコロが同じ目しか出さないの 狂った世界でさえ日々前に進んでいくのにね |
シガーチリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | くゆらす煙り立ちのぼる、肌をさすような朝 ああ木枯らし、ため息さえ連れてくる時雨 いずれはこの指も、その肌に辿りつけるのか? ああユメかマコトか、瞼に画かれた道 窓辺に置かれた花は燃えたぎるその息吹を ああ誰に奉げようか? 君にも同じ事を問う 君は今何を感じています? 願わくは… 育て、奮い立て、僅か君の中のあたし しじまも、咽喉を通らぬ食事も日常となり ああ繰り返し、鼓動を掴みにやって来る君 旋律の狂った季節を知らす蝉たちの調べ ああユメかウツツか、脳が切り開く路 触れたいとその両手が欲しがる美しさなら ああユメかムボウか? 君の胸に宿る赤 君は今誰を想っています? 願わくは… 育て、揺り動かせ、あわや君の中のあたし |
灰と朗チリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | チリヌルヲワカ | | この爪で揺らされた水の動きで 果てしない力を持った自分を知りました。 不甲斐ないこの心がすぐに不安の雨を呼んでくる… 温かい陽の光を浴びていると 確実に燃やされるこの存在を知り 何より大きなこの星があたしを 受け入れてくれたことはゆるぎない。 野放しのこの心がすぐに憂鬱の種を拾ってくる。 ああいっそこのまま逃がして、 心行くままお別れしようか… |
蜻蛉チリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | 馬鹿な私をはじめ、この島に生まれ住む人は生かされてるとも知らず、 すぐ「独り」と言いたがる。 水を求めるように誰かの蜜を、枯れない海のように、 途絶えない日をくれよ… 生き急ぐ私は、「空」のようなスピードの時代を 擦り減らすその手を止めたいだけ。 イカレタ話だと笑うでしょう? それでもみずから朝を積む。 神の思いを軸に働くのがそう、「人」ならば、 捨て駒になるまいともがく私は今――短く 役立たずなこの触覚で、何かを探しだすのに 必死で生きる… 我が儘な私は、「怖い」だけの言い訳で自分を 擦り減らす「時間」を憎んでしまう。 イカレタ話だと笑うでしょう? それでもおのずと朝を詰む。 咲き乱れた花の命も、僅かな時を彩るため。 やれ落ちる陽もまた美しい色、「生きてる」 生き急ぐ私は、「空」のようなスピードの時代を 擦り減らすその手を止めたいだけ。 非力すぎる私は、黒い闇に覆われた街に星がないことに不安を抱く。 イカレタ現実と笑うでしょう? それでもここで生きている。 明日には何か変わるでしょう? だからまたこうやって朝を摘む… |
ノイロニテイルチリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | タマシイを飲まれていくのが分かる このカラダは貴方のために 誂えたようなカタマリ ソラでも思い出せるでしょ? 頭のナカよリ精密で 心臓より素直でタンジュン 「ネエ、昨日は何度思い出してくれた?」 答えもなくまた去るアナタは ウツロな仕草で飛び立つ ジカンという音のない雑踏へ 都会の朝ヨリ空虚で 水面よりまっすぐでドンヨク 細胞がマネく貴方は あたしの五カンを魅了し カザらない月より紳士で 草木よリココロが見えない 雲間に貴方のカゲを 見ているコドクが好きです キレイネ、まるであなたの 眼ノイロニ、ニテイル夜空 |
紫紺ノイズチリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | 「謝る」というよくある行為は、リセットするだけの容易い口実? 私の方から言わせれば、俗物と呼ぶにふさわしい あまねく染み渡る 限界という名のノイズ 色づく楓、その手の未熟さに枯れてあたしを喜ばして きれた頭はお次にどういった思考を働かすつもりでいるの? 私の方はと言えば「許す」というありふれた行為に終わりを告げる すべからくひれ伏し 自滅していくポーズ あからさまに心まで沈む、まるで夕陽の色褪せ 私は手を汚さない 私は足を洗うの よく晴れたお空に 爽快という名のノイズ 君のために廻る地球よ 高価な紙に埋もれたけりゃ 後濁してここから去るなら 一人でどうぞご勝手に… |
ヨスガチリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | あたしの体はいとも簡単に 目に映らない物さえ頼ってしまう 「昨日をやり直すクスリをくれないか」 飽きずにまた働く旭にねだる 血も繋がらないあたしをどうして愛せるの? 見えない膜をはってるあたしに対してあなたは 例えば全ての神経を操るやわらかな その器具をはずしてもまだあたしを求めるのかな あたしの体はいとも簡単に 連なる音をなぞり歌うことができる 「闘志を呼び覚ますクスリをくれないか」 選択ばかりの世は幸か不幸か 愛を知らない鳥はどうして群れをなしてるの? 一人きりなど恐れるほど子供じゃないあたしは 窮屈な腕の中張り裂けそうな心臓や 壊れそな想いをしてもまだあなたを頼るのかな あたしの頭はそれほど良くないのは知ってる それでも自分を守る術は分かってるはずだけど 例えば全ての神経を操るやわらかな その器具をはずしてもまだあたしを求めるかな 窮屈な社会なんてここに微塵もなかったら 心をなでるようなあなたを必要とするのかな |
コノハギスチリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | 続くのはきっと理由があるんでしょ? あたしが止まれば何か変わってしまう きみどり色の葉っぱ浮かんだ 池に落とした涙は水面の色さえ変えないけど 息をころし地を這う日々はもうやめ 霧雨同様不確かな力を振り絞った 向日葵の黄金に憧れた体は命の紐をほどいた 息を吸い込む時きょうを始めて 息を吐き出すときにきょうを終わらせる 痛くもない痒くもない少し曇った日 ひた廻る歯車は老朽化してくのみ 皆と同じなら安らいでいた青き日 アネモネ同様鮮やかなもてなしで今を… 生まれ持った能力それがたとえ寿命(いのち)を繋いでも、称えられても 救えない想いがあるのだから …もう恐れない 向日葵の気丈さに憧れた体は危険など百も承知で… もう戻れない もう逃げない |
なずきチリヌルヲワカ | チリヌルヲワカ | 中島優美 | 中島優美 | | なんで人と火と日はいつか消えてしまうか解かる? ずっと手と手をつないで離さないと誓っても 人類に勝る力持った自然が欲しがるからだよ しってた? なんで出来事はいつも願いとは反するか解かる? どんな前書きがあろうと一寸先は真っ白だよ 自然には劣る力持ったあたしは「今」を見るしかない そうでしょう? いくつの通行人に 罵られ、罵声を浴び 倒れそうになっても しおれそうになっても あたしを消せるだろうか いいえ、もう遅すぎる なんで意思と詩と死は心に刻まれるか解かる? この世に残したもの絶対に消えないからだよ 首かしげた貴方、あたしが目を細め微笑むのはなぜ 気付いた? あたしの「今」は すでに記録された 愛しい貴方の存在の中に あたしがもしもここで 生きることをやめても あたしの「今」は すでに記憶された 貴方の脳裏に 貴方の心に 貴方がもしもそこで 生きることをやめても |