こんなん聴いてんのお前だけ。

 激動の活動を続けてきた“ヒトリエ”が2022年1月22日に8周年を迎えました。このメモリアルなタイミングに2週連続で新作をリリース!1月19日にライブアルバム『Amplified Tour 2021 at OSAKA』をリリース。そして、1月26日に新曲「ステレオジュブナイル」をリリース。同曲は、新章へと歩みを進めたヒトリエの初期衝動すら感じさせるバンドイズム満載の音楽への高い純度とエネルギーに溢れた快作となっております。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな最新作を放った“ヒトリエ”のシノダによる歌詞エッセイをお届け!綴っていただいたのは、新曲「ステレオジュブナイル」についてのお話です。歌の核となる<こんなん聴いてんのお前だけ>というワンフレーズ。その言葉に込められた想いとは…。是非、歌詞と併せてこのエッセイを受け取ってください。



<こんなん聴いてんのお前だけ>
 
この一節が浮かんだので、あーもうこの曲は大丈夫だわ、と根拠の無い確信を得ました。それ以外の歌詞は全部まやかしだと思って頂いて結構、「ステレオジュブナイル」の完成です。
 
昨年開催されたフジロックに関する記事で、「最近の若者はロックを聴かない」みたいなことが書いてあり、それを読んだわたしは驚愕しました。最近どころか20年くらい前から、それこそわたしがクソ田舎の高校生だった頃からロックなんて誰も聴いてなかったからです。
 
勿論みんな聴いてるロックも余裕であったんですけど何かそういうものは10代特有の排斥エンジンにより一旦無かったことにされいつの間にか「俺しか聴いてない音楽こそロックである」という最悪の認知に到達しがちなのがまたロックの恐ろしいところでもありますね。
 
学力、スポーツ、人間性という3つの大きな風穴を空けたわたしが高校時代をサバイブするには誰よりもヤバい音楽を聴いて、自意識を増幅させ続けるしかなかったのです。
 
勿論、ロックを聴く友人、コミュニティはわたしの周りにもありましたがその中でも細かな食い違いを感じ続けたわたしは最終的に「俺よりロックを聴いている人間は存在しない」と思い込む最悪の生物に変身して教室から姿を消し、戻ってくることはありませんでした。
 
あなたが普段足を運んでいるライブ会場は上記のような生物の集まりである可能性が高いみたいなことを想像したら何か嫌ですね。そうでないことを祈ります。
 
ここまで読んで、「何言ってんだこいつ」と思う人と「わかるなー」って人とで大きく二分化されると思うんですけど、人生なんてマジでそんなことの連続で生きていく過程で様々なものを間引いたり間引かれたりした挙句最終的に残ったカードでデッキを形成していくしか無いわけで何言ってんだこいつって思う人に徹底的に理解してもらおうなんて気力は流石にもうそんなに湧かないんですよね。この世には争っても仕方の無いことの方が多い。
 
それよりも、より剥き出しのわたしを言葉にした方がより多くの共鳴を得られるのではないか~等と最近は考えており、それが何故かというと自分が自分のことをオンリーワンなどという戯けた考えなんて徹底的に排斥した方がよくて、むしろ1匹いたら30匹、くらいのノリで考えてないとマジでやってられないというかわたしみたいなやつが本当にわたししか居なかった場合の方が圧倒的に寂しいし恐ろしいし、わたしみたいなやつがもっと居てくれないとこの先マジで困るんですよね。
 
わたしみたいなやつにしかわからない救難信号を出すような気持ちで日々、歌詞を綴っています。救難信号なので、なるべくノイズが乗らないように気をつけては居ますが…ただ10代の頃、こんなん聴いてんの俺だけだと思って観に行った、ナンバーガールのライブ会場が押し寄せる人波で爆裂したあの時の余波で今を生きているのでヒトリエもそうなったらいいなあというおまじないのような意味も込められた「こんなん聴いてんのお前だけ」。我ながらなかなか勇気づけられる言葉を書くじゃないの、と満足しています。
 
<ヒトリエ・シノダ>



◆紹介曲「ステレオジュブナイル
作詞:シノダ
作曲:ゆーまお

◆新曲「ステレオジュブナイル」
2022年1月26日発売