



中学生の頃からモデル活動を始め、1985年1月、ドラマ『毎度おさわがせします』で女優デビューした中山美穂。同年6月に「C」で歌手デビュー。当時15歳。「ザ・ベストテン」には、同曲で「今週のスポットライト」に初出演。この年の「第27回日本レコード大賞」で最優秀新人賞を受賞している。デビュー初期は2〜3ヶ月おきというハイペースでシングルを発売し、その多くは主演ドラマや主演映画の主題歌、大手企業のCMソングに。10代半ばでありながら大人びた容姿、落ち着いた言動、エレガントさは、他のアイドルにはない存在感を放っていた。
当時の人気を象徴する一つが、主演ドラマ『ママはアイドル』(87年4月14日〜6月16日放送)だ。中山が演じたのは、トップアイドル・中山美穂自身。3人の子持ちの中学校教師(演:三田村邦彦)と極秘結婚し、多忙を極めるアイドル活動の傍ら、結婚の事実を世間から隠しつつ、ママとして子供たちに認められようと奮闘するコミカルなストーリー。ママといっても当時17歳であった。同ドラマの主題歌が「派手!!!」である。軽快なアップテンポのナンバーで、ベストテンには4月2日から5週ランクイン、最高4位を記録。同じTBS系ということもあってか収録スタジオからの中継が多かった。劇中で「ミポリン」と呼ばれたのが実際に中山の愛称として定着した他、現実の芸能界とリンクしたドラマには、実在の番組や関係者がたびたび登場。完結篇では、ベストテンに出演して司会の黒柳徹子・松下賢次アナから結婚一周年を祝福されるシーンも。
翌88年8月18日には、主演ドラマ『若奥様は腕まくり!』の主題歌となった「人魚姫(マーメイド)」が自身初のベストテン第1位を獲得。中山の弟(当時6歳)がサプライズでスタジオに登場してお祝いした。さらに同曲は年間ランキングでも第4位となり、年末の「ザ・ベストテン豪華版」には『若奥様』でも夫役を演じた三田村邦彦が応援にスタジオに駆けつけて祝福した。
ベストテン終了までの期間にリリースしたシングル14曲すべてがランクインし、歌手別のランクイン総週数では104週(12位)とかなり多め。コンサートやドラマ撮影などで忙しいにもかかわらず、できる限り中継で歌ったのは特筆すべきことであろう。
その分、ハプニングも多かった。最も有名な迷場面は、86年8月21日、第10位に「JINGI・愛してもらいます」がランクインした時のこと。中山が乗った新幹線を米原駅のホームでテレビカメラが待ち受け、中継。乗降デッキに立つ中山に黒柳徹子が呼びかけるものの、中山のイヤホンの調子が悪く、会話にならず、歌うこともできない。その時、一緒にいたディレクターが自分のイヤホンを彼女の右耳に突っ込んだ。さらに別のスタッフが左耳にイヤホンを! 左右から男性にイヤホンを突っ込まれ、何とも言えない表情のままドアが閉まり新幹線は発車してしまう。その後、再び名古屋駅で中継がつながり停車時間に歌唱したが、ディレクターは黒柳から「美穂さんになんてことするの!」と名指しで怒られていた。
本格的女優へと成長を遂げつつ、歌手としては1999年までに39枚のシングル、21枚のオリジナルアルバムを発表。2002年の結婚を機にフランスへ移住し、活動を休止。数年後に活動を再開するも、女優業が中心だった。しかし歌手デビューから30周年を迎えた2015年、12月に「FNS歌謡祭」に出演し「世界中の誰よりきっと」「ただ泣きたくなるの」を歌唱。これが18年ぶりの歌番組出演となった。3〜4月に東京・愛知・兵庫で公演される舞台『魔術』に出演することが決まっているが、その後、歌手活動を本格的に再開するのでは…と期待が高まっている。