三山ひろし、新曲『恋…情念』& 15周年 ロングインタビュー!

三山ひろし、新曲『恋…情念』& 15周年 ロングインタビュー!「気持ちが溢れて出ちゃうんですよね…」9年連続「NHK 紅白歌合戦」出場中、けん玉でも知られる人気歌手! 19作目となる最新シングル『恋…情念』が 2024年 1月10日に発売! 自身初となる恋の情念を歌ったマイナー調の女歌!



インタビューの最後に、直筆サイン色紙 の 読者プレゼントあり!



Miyama  Hiroshi
三山 ひろし


19th Single『 恋…情念



★ 昨年 2023年末まで、9年連続「NHK 紅白歌合戦」出場中! けん玉でも有名!

★ 2009年『人恋酒場』で歌手デビューして 15周年!

★ 豊かな響きのさわやかな歌声と、その人間性で大人気!

★ 新曲『恋…情念』は、自身初となる情念を歌った女歌! マイナー調の歌謡曲!

★ 2021年には落語家デビュー! 新たに「落語歌謡」というジャンルを発表!

 

★「気持ちが溢れて出ちゃうんですよね…」 



 

三山ひろし「恋…情念」/ ミュージックビデオ(フル)
 
 
三山ひろし「恋…情念」2024年1月10日 発売 / コメント動画
 
 
 
 

■ シングル リリース 情報
 
 
 
三山ひろし 『恋…情念』
シングル CD / Digital
2024年 1月10日 発売
CRCN-8623
¥1,500
日本クラウン
 
<収録曲>
1 恋…情念 (作詞:原 文彦 / 作曲:弦 哲也 / 編曲:猪股義周)
2 雲    (作詞:日野浦かなで/作曲:弦 哲也/編曲:猪股義周)
3 恋…情念 [オリジナル・カラオケ]
4 雲    [オリジナル・カラオケ]
 
 
 
 
 
 
 




 

■ 最新 全曲集 アルバム CD リリース情報

 

 



三山ひろし 『三山ひろし 全曲集 ~落語歌謡「厩火事」入り~』

アルバム CD(2枚組)/ Digital

2023年11月22日 発売

CRCN-41476〜77

¥4,500

日本クラウン

 

<収録曲>

 

Disc1

01 北海港節

02 どんこ坂

03 人恋酒場

04 ダンチョネ港町

05 お岩木山

06 四万十川

07 女に生まれて

08 渡り鳥

09 望郷山河

10 杉の大杉

11 いごっそ魂

12 男のうそ

13 谺−こだま

14 浮世傘

15 望郷列車

 

Disc2

01 花恋歌~はなれんか~

02 酔待ち酒場

03 北のおんな町

04 男の路地裏

05 おまえの故郷

06 あやめ雨情

07 男の流儀

08 みちのく港町

09 棚田桜

10 純愛

11 茜雲

12 春恋のれん

13 夢追い人

14 貴方にありがとう

15 落語歌謡 厩火事



アルバムの歌詞を見る


三山ひろし 日本クラウン

 





■ コンサート Blu-ray / DVD リリース情報

 

 



三山ひろし『三山ひろし 15周年リサイタル 〜ありがとう 感謝を込めて〜』

ライブ Blu-ray / DVD

2023年 9月6日 発売

Blu-ray CRXN-10012 ¥6,200

DVD CRBN-132 ¥5,200

日本クラウン

 

<収録内容>

 

01 いごっそ魂

02 お岩木山

03 北のおんな町

04 ダンチョネ港町

05 夕焼とんび

06 おいらの船は300とん

07 出郷の作 (詩吟)

08 王将

09 人恋酒場

10 ミニドラマ「ケン玉刑事2」

11 昭和ブルース

12 太鼓ショー

13 三山太鼓(三郎方鼓)

14 長編歌謡浪曲 元禄男の友情 立花左近

15 四万十川

16 杉の大杉

17 渡り鳥

18 望郷山河

19 女に生まれて

20 花恋歌~はなれんか~

21 人生援歌(デュエット:松前ひろ子)

22 居酒屋 夢あかり(松前ひろ子)

23 夢追い人

24 どんこ坂

25 貴方にありがとう

26 北海港節

 

※ 2023年 6月2日 東京・渋谷「LINE CUBE SHIBUYA」にて収録。

 

 

 

 



三山ひろし『挑戦!ひとり大忠臣蔵 ~スペシャルコンサート 2023 in 明治座~』

ライブ Blu-ray / DVD(2枚組)

2024年 3月6日 発売

Blu-ray CRXN-10016 ¥6,800

DVD CRBN-137-38 ¥5,800

日本クラウン

 

<収録内容>

 

DISC 1

01. ジングルベル

02. 夢追い人

03. どんこ坂

04. 北海港節

05. ひろしの故郷自慢ぜよ

06. いごっそう纏

07. 風の旅人

08. 北のほたる酒

09. 酒場の噂

10. 夕陽が泣いている

11. 想い出の渚

12. バン・バン・バン

13. エメラルドの伝説

14. 青葉城恋唄

15. 我が良き友よ

16. 贈る言葉

17. 学生時代

18. 愛の終着駅

19. 越冬つばめ

20. 酔歌

21. 人恋酒場

22. お岩木山

23. 恋…情念

 

DISC 2

01. 長編歌謡浪曲 あゝ松の廊下

02. 花恨田村邸

03. 長編歌謡浪曲 赤穂城の内蔵助

04. ころは元禄十五年

05. 元禄男の友情 立花左近

06. 長編歌謡浪曲 元禄桜吹雪決斗高田の馬場

07. 長編歌謡浪曲 その夜の上杉綱憲

08. 長編歌謡浪曲 元禄名槍譜 俵星玄蕃

 

(曲順・曲目は、変更となる可能性があります)

 

※ 2023年 12月 東京「明治座」にて収録。

 



三山ひろし 日本クラウン

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三山ひろし 歌詞一覧





 

コンサート 情報

 

 

『三山ひろし 15周年記念コンサート ~ありがとう感謝を込めて~』(2024/1/21 以降 開催分)

2024年 1月21日 (日)  山形  やまぎん県民ホール (山形県総合文化芸術館)

2024年 1月24日 (水)  埼玉  大宮ソニックシティ大ホール

2024年 1月25日 (木)  静岡  静岡市民文化会館

2024年 2月  4日 (日)  滋賀  ひこね市文化プラザ大ホール

2024年 3月  9日 (土)  兵庫  神戸国際会館こくさいホール

2024年 3月21日 (木)  鹿児島 宝山ホール(鹿児島県文化センター)

2024年 3月22日 (金)   宮崎  宮崎市民文化ホール

2024年 4月25日 (木) 福島  いわきアリオス

2024年 4月26日 (金) 福島  二本松市民会館

2024年 5月12日 (日) 茨城  結城市民文化センター

2024年 5月23日 (木) 香川  レクザムホール

2024年 5月24日 (金) 岡山  岡山芸術創造劇場ハレノワ

2024年 5月25日 (土) 山口  下関市民会館 (最終公演)

 

『三山ひろし リサイタル 2024』(2024/1/20 発表分)

2024年 6月  6日 (木)   東京  LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂) 

2024年 6月20日 (木) 愛媛  松山市民会館

2024年 6月21日 (金)   高知  オレンジホール

                                    ……(以降、後日発表)

 

『三山ひろし特別公演 ゲスト 立川志の春』

2024年 2月18日 (日)   大阪 「池田市市民文化会館」

 

『三波春夫 生誕100年 特別企画 三波春夫メモリアルコンサート』

2024年 2月26日 (月) 大阪 新歌舞伎座

2024年 2月27日 (火) 大阪 新歌舞伎座

2024年 3月  8日 (金) 新潟 新潟県民会館

2024年 3月13日 (水) 東京 NHKホール

 

『志の春 とさ春 二人会  三山ひろしの春めく落語 第3回!』

2024年 3月 3日 (日)  東京  「かめあり リリオホール」

 

 

三山ひろし 最新コンサート情報

 

 

 



 


新曲『恋…情念』& 15周年 ロング インタビュー!



 

 

 三山ひろしの歌唱は、嫌味がなく、さわやかだ。デビュー時の三山ひろしのキャッチフレーズ「ビタミンボイス」とは、うまく言ったもので、聴くと元気になれる。

 

 その歌声は圧倒的で、豊かな響きで、「鳴り」の深さが違う。しかも、演歌だけでなく、歌謡曲やポップスを歌ってもうまい。おそらく、今の若手、男性演歌・歌謡曲歌手の中では、一二を争う実力だと思う。

 

 加えて、その人柄も、歌唱と同じく、嫌味がなく、さわやかだ。明るく、真面目で、礼儀正しく、素直。サービス精神も旺盛で、その憎めないキャラクターから、誰からも愛され、まわりの人が、つい応援したくなってしまう。常に、感謝の気持ちも忘れない。テレビなどで見る軽妙な受け答えや話のうまさからは、頭の良さを感じるし、やや古風な話し方も、生真面目な彼らしい。

 

 生命保険や電力会社のテレビ CM のオファーがくるのも当然だし、NHK 連続テレビ小説『らんまん』に呼ばれて出演したのも、ただ単に、ドラマの舞台が高知だったというだけの理由ではないと思う。

 

 その魅力は、意外なところにも伝播していて、演歌・歌謡曲とはほど遠いところにいるような人たち、たとえば、フリーライターの 武田砂鉄 らにも好かれている。武田砂鉄 がパーソナリティを務める人気のラジオ番組『武田砂鉄のプレ金ナイト』(TBSラジオ、旧『アシタノカレッジ』)に、三山ひろし は 2021年から毎年、これまで計3回も呼ばれてゲスト出演している。

 

 氷川きよしに憧れ、なんのつてもない中、歌手を夢見て、高知県南国市から 24歳の時に上京した。最初は、青果市場に勤めていたが、歌手で、現在の師匠でもある 松前ひろ子 と、その夫で作曲家の 中村典正(なかむら てんしょう)との出会いにより、運命が変わった。なんのつてもなく上京して、わずか 3年、2009年 6月3日、28歳の時に、シングル『人恋酒場』(作詞:仁井谷俊也 / 作曲:中村典正)で歌手デビューした。人気歌手になるために必要不可欠な「運」も持っている。

 

 デビュー 7年目の 2015年には、7作目となるシングル『お岩木山』(作詞:千葉幸雄 / 作曲:中村典正)で、「NHK 紅白歌合戦」に初出場。以来、昨年末、2023年の第74回まで、9年連続で出場している。

 

 今年、2024年 6月で、歌手デビューから、まる 15年となる。2023年〜2024年にかけて、「15周年記念コンサート」が 1年間で 100本近くも、日本全国の大ホールで開催されている。演歌・歌謡曲の世界に限らず、なかなかここまでの本数をやる人はいないし、できる人も少ない。

 

 単純に考えても、3日に 1回は、日本全国のどこかで自身のソロ公演をやっていることになる。そのための移動もあるし、ラジオのレギュラー番組『三山ひろしの演歌の夜明け』『えんか侍』や、テレビ番組『名曲をあなたにうた恋!音楽会』(BS-TBS)の司会などに加え、数多くの音楽番組にもゲスト出演している。さらに、昨年、2023年は、「大阪 新歌舞伎座」での劇場公演や、「明治座」で 1ヶ月間にわたって行われた『梅沢富美男・研ナオコ 特別公演』にも出演するなど、まさに多忙を極める。

 

 しかし、そんな忙しい中でも、新しいことへの挑戦を続けている。ギターやドラムの演奏のみならず、昨年、2013年には、演歌・歌謡曲ファンにはよく知られている「長編 歌謡浪曲」のような作りで、これまで、誰もやっていなかった「落語歌謡」というものを作って発表した。まさに、パイオニアだ。

 

 近年では、紅白の風物詩のようにもなっている「けん玉」も、デビュー後に、何か歌以外に特技があった方がいいと考え、2013年ころから始めたもので、現在は、免状を出せる「2級 指導員」にまでなっている。

 

 デビュー以来、「山」「川」「ふるさと」「家族」といったテーマのメジャー調(キー)の歌を多く歌ってきた 三山ひろし だが、2024年1月10日に発売となった最新曲、通算 19作目となる『恋…情念』(作詞:原文彦 / 作曲:弦哲也 / 編曲:猪股義周)は、これまでになかった詞の世界のマイナー調の歌謡曲で、まさに新境地と言える。これまでのシングル曲とは、全く違った雰囲気の曲だが、見事に歌い上げていて、新たな魅力を感じる。

 

 三山ひろしは、いわゆる「歌のレッスン」というものを受けたことは、ほとんどない。三山ひろしの場合、その鋭い感覚と感性によって、多くの人が理論的に学ぶ技術を、自然に身に付けた。「歌うことが大好き」だから、「より上手く歌いたい」と思うのは当然で、大好きな、三波春夫、三橋美智也、春日八郎、村田英雄ら、往年の昭和の大歌手たちのように歌いたいと思い、徹底的にマネをすることにより、歌の技術を感覚的に身につけた。まさに、「習うより慣れろ」の実践だ。

 

 そして、より良い歌を歌うためには、「歌う技術」ではなく「人間力」だと言う。

 

 たしかに、その人柄や人間性が、歌にも滲み出ている。

 

 

 

<もくじ>

1 前作『北海港節』に続き、また新たな魅力を見せた新曲『恋…情念』

  〜「試練を与えられてる感じがしたんですよね…」〜

 

2 これまで歌ってこなかった詞の世界と曲調

  〜「ギュ〜ッと心をつかんでくるんですよ…」〜

 

3 ちゃんと歩んでこれた 歌手デビューからの 15年

  〜「お客様にとっていいのかなと…」〜

 

4 この 15年で、一番、困った歌

  〜「気持ちが溢れて出ちゃうんですよね…」〜

 

5 ギター、ドラム、けん玉、裁縫、包丁研ぎ … 多彩な特技

  〜「どこまで自分ができるかなっていうのを見たいんです…」〜

 

6 三山ひろし が 新たに作り出した「落語歌謡」というジャンル

  〜「ひとつのジャンルを作りたいなっていう思いがあったので…」〜

 

7 より良い歌を歌っていくために

  〜「自分の心が育つかどうか っていうところに関わってくる…」〜

 

 

 

 

1 前作『北海港節』に続き、また新たな魅力を見せた新曲『恋…情念』 〜「試練を与えられてる感じがしたんですよね…」〜

 

 

ーー 2009年にシングル『人恋酒場』(作詞:仁井谷俊也 / 作曲:中村典正)で歌手デビューして以来、2015年の紅白初出場曲、7作目となるシングル『お岩木山』(作詞:千葉幸雄 / 作曲:中村典正)を含め、12作目となる 2020年 1月に発売された『北のおんな町』(作詞:喜多條忠 / 作曲:中村典正)までは、三山ひろし の師匠だった作曲家、中村 典正(なかむら てんしょう)が、シングル曲の全てを作曲していた。

 

ーー しかし、2019年8月に 中村典正 が亡くなったことで、2021年に発売された『谺 -こだま』(作詞:いではく / 作曲:四方章人)以降、この約 4年間は、四方章人、影山時則、岡千秋、弦哲也、原譲二(北島三郎のペンネーム)らが、三山ひろし のシングル曲の作曲を担当してきた。

 

ーー そして、通算 19作目となる最新シングル、2024年 1月10日発売の『恋…情念』(作詞:原文彦 / 作曲:弦哲也 / 編曲:猪股義周)は、2023年 1月発売の『どんこ坂』(作詞:さいとう大三 / 作曲:弦哲也)、2023年 7月発売の『北海港節』(作詞:いではく / 作曲:弦哲也)に続き、3作連続で、弦 哲也 が作曲を担当している。

 

ーー 2023年12月に「第56回 日本作詩大賞」を受賞した前作の『北海港節』は、それまでの 三山ひろし のイメージにはなかった、まるで 北島三郎 が歌っていそうな力強い「漁師もの」の「男歌」で、新鮮だった。そして、今回の最新シングル『恋…情念』は、またもや意外な曲だった。マイナー調 3連の「女歌」で、これまで、三山ひろし が歌ってこなかった詞の世界と曲調だ。あえて言うならば、水森かおり が歌っていそうな曲だが、三山ひろし の歌唱が見事で、また新たな魅力を感じさせてくれる。

 

三山: いや〜、もう最初っから、もうね……、なんて言うか完成度が高すぎて……。まず、初めて、弦(哲也)先生から『花恋歌 〜はなれんか〜』(作詞:かず翼 / 作曲:弦哲也)(2022年1月発売)をもらった時のことなんですけど、もう、デモ(テープ)の時点で、「僕は、今度、誰かのカバー曲を歌うんじゃないか?」っていうくらい、もう出来上がりがあまりにも完璧すぎて。(でもテープは、弦哲也の)弾き語りなんですけど、前奏も間奏も全部ついてるから、「誰かの歌なんだろうな」と思って、「ああ、カバーを今度やるのが、へえ〜珍しい」って、最初、思ったんですよ……(笑)。

 

三山: だけど、(レコード会社「日本クラウン」のディレクターの)高塚さんから何の説明もなく、いきなりカバーを歌わせるってことは、なかなかないと思うし、「まさかそんなことないよな」と思ってたんですよ。

 

三山: でも、何回も聴いても、やっぱり出来上がりがすごい良すぎて、それで自分で歌ってみても、「すごい、もう完成度高いな」と思って。新しい歌で、こんなに完成度が高くて、弦(哲也)先生も(デモテープでは)ご存知の感じで歌われてますから、「これを超えていくっていうのは、相当、難しいな」と思ったのが最初だったんですよ……、『花恋歌 〜はなれんか〜』の時。

 

三山: それから何度か作品をいただいてて、で、今回の『恋…情念』にしても、いただいたときには、「すごい、またいい作品が出てきたな」と思って……、前回(『北海港節』)とは、またテイストが全然違うじゃないですか。だから、僕は、弦(哲也)先生から「こういう歌を歌ってみろ」って言うか、「これはできるか? これはどうだ?」っていう感じで、挑戦っていうかね、チャレンジしてみろと、なんか試練を与えられてる感じがしたんですよね。

 

三山: で、今回も、全くの初のチャレンジで、この「情念の世界」っていう……。僕の歌は、基本的に、「海」とか「山」とか「川」とか「ふるさと」とか、「母」であったり「家族」とか、あったかいイメージがほとんどなんですよね……。あったかいって言うか、ちょっと、何て言うのかな……「牧歌的」と言うか。

 

三山: そういう作品が多い中で、突然、この「女性の燃え上がる恋の姿」っていう作品きたので、本当に「どうなるのかな」っていうのは、僕もドキドキしてるんですよ。今までのお客さんの反応がどうなるのかなっていうのが……。ないですもんね、こういう作品は、僕の歌の中で。

 

ーー 三山ひろし にとって、師匠であり、恩人であり、義理の父でもあった作曲家の 中村典正 が(デビューまでのヒストリーを知りたい方は、前回のインタビューで詳しく語ってくれているので、そちらをお読みください。最下部にリンクをつけておきます)、デビュー以来、12作目となる 2020年 1月に発売された『北のおんな町』まで作曲を担当していた。その 中村典正 と新曲を作っていた時とは、全く違うと言う。

 

三山: 中村(典正)先生は、もう出来上がってますから。メロディーも全部、もう譜面があって、書いてあるメロディーを「歌ってみろ」って、先生が弾いて、僕は隣で歌って、部分部分で「どっちがいいか?」っていうのは……、「こっちの節がいいか?」とか「どっちがいいか?」っていうことはあったんですけど、大枠はもうできてたんですよ。

 

三山: で、まあ、今回って言うか、弦(哲也)先生になってからは、最初のデモは、ピアノとかギター 1本で、レッスンのときには、アレンジの打ち合わせが若干ちょっと入ったりするんですよ。そういうことは今までなかったので、そういう部分で、ちょっと「こんなイメージが出てきますよね〜」とか、「こんな雰囲気ですよね?」っていうのを、作曲家の先生方とディスカッションできるっていうことはなかったので、それは新しいかなと思いました。

 

三山: 中村(典正)先生のときは、歌い方については、「どっちがいいか」って聞いてくれることあったんですけど、「どういうアレンジがいいか」とか、「どんなふうな雰囲気がいいかとか」っていうことはなかったんですよ、全然。

 

三山: だけど、弦(哲也)先生のところでレッスンしていただいくときは、もうクラウンのメーカーさんのディレクターさんが来てて、編曲者がそこにいるわけじゃないんですけど、「これはこんな雰囲気だよね」とか「こんな感じだよね」とか、「だから、こういう感じの楽器が来て、こうだよね」とかっていう「なんとなしの道筋」みたいな、そういうアレンジのふわっとした打ち合わせみたいなのにも参加できるんですよね。だから、「新しいな」と思いましたね。

 

ーー 中村典正 から作曲家が代わった当初、戸惑いはなかったのだろうか?

 

三山: そうですね……、あの……、戸惑いというよりは、「気持ちの切り替えをしなきゃいけないな」と思ったのが、『谺 -こだま』っていう作品で、これが、中村(典正)メロディーじゃない初めての作品だったので、このときから、やっぱり「もう、ひとりで歩んでいかなきゃいけないんだ」っていうのをすごく感じました。「とってもさみしいな」って思ったのが正直なところで……。

 

三山: でも、この作品で、独り立ちを促してくれた……。その『谺 -こだま』っていう詞を書いていただいた いではく 先生のその「思い」っていうのが歌の中に入ってるし、やっぱり、その「師匠の声が、こだまとなって返ってくる」じゃないですけど、「頑張れよ〜!」って言ってくれてるようにも感じるような作品になってて、もう僕の中では、「こっからは、もう、いよいよひとりなんだな」っていうのがあって、覚悟を決めて「これから先も、師匠のために歩んでいかなきゃいけない」って思いましたね。

 

三山: やっぱり、中村(典正)先生に(三山ひろし という)名前をつけてもらいましたからね。だから、この名前が、やっぱり大きくならなきゃいけないから、そういう責任もあるし、いろんな意味で、「また、ここからのリスタート」じゃないけど、そんな感じでしたね、この『谺 -こだま』が。

 

 

2 これまで歌ってこなかった詞の世界と曲調 〜「ギュ〜ッと心をつかんでくるんですよ…」〜

 

 

ーー 通算 19作目となる 2024年 1月10日 発売の最新シングル『恋…情念』(作詞:原 文彦 / 作曲:弦哲也 / 編曲:猪股義周)は、これまでの 三山ひろし にはなかったイメージの、マイナー調(キー)3連の「女歌」。そもそも、三山ひろし のシングル曲には、マイナー調(キー)の曲は少ない。19作中、マイナー調(キー)の曲は、『ダンチョネ港町』(2011年、3作目)と『浮世傘』(2021年、14作目)、前作の『北海港節』(2023年、18作目)ぐらいで、あとは全部メジャー調(キー)だ。

 

ーー 力強く歌う「漁師もの」で「男歌」だった前作の『北海港節』とは正反対とも言える今作『恋…情念』は、歌声も印象的だ。たとえば、出だしの「♪あなたを手放す くらいなら」や、サビの「♪あなたの胸に」のところなどの歌い方は、あまり聴いたことのない感じで新鮮だ。

 

三山: あっ、頭は、あれなんですよ……、うちの師匠(松前ひろ子)がですね、ちょっと切ない歌なんで、「切ない歌のときほど笑顔で歌う」みたいなのがあるんですよ。そういうセオリーを最初の頭に持ってきたんですよね。

 

ーー 自分のオリジナル曲は、カバー曲とは違って、歌のお手本のようなものはないため、自分がお手本を作らなければならない難しさがある。どう歌ってもいいという自由さがある反面、絶対的な正解もない。以前のインタビューでは、「先輩歌手ならどう歌うか?」というイメージで考えると話していたが、今回は、どういうイメージで歌ったのだろうか?

 

三山: あっ、そうですね。今回はですね、どちらかと言うと、先輩歌手というよりも、今まで、お芝居とかで……、なんて言うんすかね……、たとえば「新歌舞伎座」とか「明治座」とかでやってきたその芝居をしているであろう姿、演じている姿をちょっとイメージしてやってみました。だから、『恋…情念』の「この主人公の女性の役を渡されたら、どんなふうに演じるだろうか」っていうことを考えながら、今回は、そんなイメージで。「僕がもし女性だったらどんなふうに歌うかな」「どんなふうに演じるかな」っていうことを、ちょっと舞台を想像しながら歌ってみたのが今回の作品ですね。

 

三山: でも、あの……、レコーディングのときに、自分の中では、あんまりこうね、気持ちが入りすぎると、(音程が)フラットしたりとかシャープしたりするんで、いけないと思いながらも、この詞の世界が、(心を)つかんでくるんですよ。

 

ーー 『恋…情念』は、聴いていて、言葉が耳に残る。毎コーラス、出だしの Aメロ、1番の「♪あなたを手放す くらいなら この世を生きてく 価値がない」、2番の「♪あなたを疑う くらいなら 心を捧げた 甲斐がない」、3番の「♪あなたを裏切る くらいなら すべてを投げ出す 意味もない」だけでも、すでに、心をつかまれる。

 

ーー 以前、三山ひろし をモデルに書かれた『ありんこ一匹』(作詩:原文彦 / 作曲:中村典正)(2020年1月発売 12作目『北のおんな町』のカップリング曲)などを作詞した 原 文彦 が、今回の『恋…情念』を手がけた。よくできた、いい詞だ。

 

三山: いいんですよ〜。いや、だから、『ありんこ一匹』とか『杉の大杉』(作詩:原文彦 / 作曲:中村典正)とか、どちらかと言うと、勇ましい感じの歌をお作りになってる原(文彦)先生から、今回、繊細な一途な女性を描いた作品をいただけたんで、なんかねもう本当に、レコーディングときに思わず涙が出て……、ギュ〜ッと心をつかんでくるんですよ。

 

三山: 「ちょっと離れて、ある程度、俯瞰で歌わないと、ちゃんと歌えないだろうな」って思うような深い、とっても情熱的な詞なので、本当は「ちょっと距離をおかないと」と思ったんですよ。だけどね、それをさせてくれないんですね、詞が……。どんどん引き込んでいくんですよ、で、引き込まれちゃったら、もう泣けてきますよね〜。

 

三山: でも、だいたい「情念」って言うと、ドロドロしてるとか、そういうふうに言う人がいるんですけど、(この『恋…情念』は)そうじゃないんですよね。これはもう本当に、一途にその人のことを愛して、でも離れなければいけない……、障壁があるわけですよね。その壁にぶつかっても、なお、その人のことを愛する……、「どんな形であってもあなたの心の中に咲ければそれでいい」っていうような、そういうなんかもう、なんて言うのかな……、「無償の愛」みたいなのが、あるんですよ。それを感じたときに、こんな素敵な女性は、ちょっとすごいなと思いましたね。

 

ーー 『恋…情念』は、たしかに、「情念」というタイトルが付いているが、よくあるような「ドロドロとした情念の世界」ではなく、純愛に近い。

 

三山: そうそう、「純愛」に近い感じで……、と言うか、どっちかと言うと「超純愛」ですよね。「してはいけない恋」とか、「好きになってはいけない人を好きになっちゃった」とか、そういうことではなく、全くもって、その愛し合ってる二人なんだけども、なんかの理由で離れなきゃいけなくなってしまって、そこに障壁があるわけですね。だから、「ロミオとジュリエット」とか、お互い愛し合ってるんだけども、環境とか身分とかそういうのがあって、離れざるを得ないものがあるんだけど、好きでしょうがない……、もう離れて暮らすぐらいなら死んでもいいって思えるくらい、相手のことを愛していると……。いうそういう女性なので、もうこの純真さに泣けてきますよね。

 

ーー 『恋…情念』は、アレンジも含め、満足できる出来上がりになった。

 

三山: いや、もう、出来上がりを聴いたときは、感動しました。それこそ、オケ録りのときに行って、今回、猪股(義周)先生にアレンジしてもらったんですけども、もう、なんていうんですかね……、心の中にあるものを全部引き出して、全部見てもらうというような、そんな感じの激しいイントロから、アレンジが、涙であり感動を誘う感じになってますね。

 

ーー たとえば、『天城越え』のような雰囲気のアレンジになっている。

 

三山: ああ〜、雰囲気的にはそうですね。ティンパニがドカーンとか、もう感情に訴えてくるところがすごくありますね。

 

ーー まさに、前作に続き、新しい一面を見せた新曲となっただけに、ファンの反応も気になるところだ。

 

三山: そうですね〜。だから、自分の歌の世界で、こういうのが初めて来たもんだから、コンサートで「どこで歌おうかな」っていう、これが、すごい悩みどころなんですよね。もう、今、スタッフの皆さんと話し合って、どこでどうしようかなっていうのを聞いてやろうかなと思うんですけど、「間には入れられないだろうね」っていうことは言ってるんですよね。突然、色がありすぎて……、自分のオリジナル世界の中でもこれだけ異質で他にはないので。今までだったら、『お岩木山』の流れで『望郷山河』とか、繋がりとか流れがねあったんですけど、これ、全然、繋がらないんですよ。全くもって違う世界だから、「どうやってやろうかな」っていうのは悩みどころですね。

 

ーー 今回のカップリング曲『雲』(作詞:日野浦かなで / 作曲:弦 哲也 / 編曲:猪股義周)は、また、『恋…情念』とは真逆で、メジャー調ポップスのさわやかな曲だ。三山ひろし らしい伸びやかな歌声で歌われている。

 

三山: そうですね。どちらかというと、演歌じゃなくてポップス寄りの歌謡曲っていう感じですね。これもいいんですよ〜。この歌の中に「花鳥風月」が全部入ってるんですけど、ある意味、これは「平和への祈り」がこの中に入ってる作品なんですね。「自分が死んでしまって、雲になって好きな人に会いに行く」っていうそういう歌なんですけど……、なんでしょうかね……、殺伐としたこの世の中に、新しい命の芽吹きを感じるような、そういう作品を今回いただきました。

 

ーー 歌い上げすぎていないところがいい。だから、聴き手に感情が伝わってくる。

 

三山: そうですね。これ……、今回、全部が全部、歌い上げると、やっぱり良くないなと……。まあ、最後はやっぱり「♪咲き誇れ」なので、歌い上げる感じで、希望を感じてもらいたいなと思ったんですけど、やっぱり、最初は、語りかけるような感じで歌いたいなと思ってたんです。

 

ーー サビの「♪いとし君の 生きる今日が」部分など、強く歌ってしまいそうなところも、抑制が効いているから、スッと聴く人の心に入ってくる。

 

三山: そうですね。だから、この『恋…情念』とのメリハリと言いますか、全く違う両方を聴いていただいたときに、CD を買っていただいた方が「どんなふうに思うかな?」っていうのは、いつも思うんですよね。やっぱり、1枚の CD で 2曲とも感じが違ってて、「いい CD を買ったな」って思ってもらえるようなね……。作品全体を通して考えたとき、それをいつも考えますね。

 

三山: 「こっちが激しかったら、やっぱりこっちはちょっとクールだね」みたいな。前回の『北海港節』のカップリングの『三面川暮色』(作詞:いではく / 作曲:弦哲也)もそうなんですけどね。やっぱり、すごくバーンとした感じの歌をいただいたら、ちょっとこっちはクールダウンじゃないけど、しんみりしたところであったりとか、感動的で、なんか空気感が全然違うものを作りたいなと思ってて、そういう意味では、今回、すごくいい組み合わせですね。

 

 

3 ちゃんと歩んでこれた 歌手デビューからの 15年 〜「お客様にとっていいのかなと…」〜

 

 

ーー 2009年 6月3日、28歳の時に、シングル『人恋酒場』(作詞:仁井谷俊也 / 作曲:中村典正)で歌手デビューしてから、2024年6月で、まる 15年となり、2023年〜2024年にかけて「15周年イヤー」を迎えている。

 

三山: 15周年……、そうですね……、う〜ん……、早くもなく、長くもなく……。なんて言うんでしょうかね、「ちゃんと歩いてこれた 15年」っていう感じですね。ちょっとずつ……、やっぱりこの道は平坦じゃなくて、気持ち上がってるんで、しんどかったりとかもするんですけど、「きちんと右肩上がりで、ちゃんと歩んでこれたかな」っていう 15年だと思いますし、節目ってことで言うと、今年(2023年)の 15周年に関しては、本当にいい形で、三山ひろしの成長を皆さんに見ていただけるポイントがたくさんあったかなと思ってますね。

 

ーー 「15周年イヤー」となった 2023年は、とくに忙しくて、大変だったと思う。4月には、「大阪 新歌舞伎座」

で座長公演『デビュー 15周年記念 三山ひろし特別公演 〜飛翔!歌の道遥かに!〜』を開催。5月31日までは『15周年記念 三山ひろしコンサート ~歌う門には夢来たる~』を日本全国各地で開催し、6月からは、東京「LINE CUBE SHIBUYA」を皮切りに、2024年5月まで 約1年間で 100本近くが予定されている『三山ひろし 15周年リサイタル 〜ありがとう 感謝を込めて〜』がスタートしている。そんな中、6月23日~7月23日までは、東京「明治座」での『梅沢富美男・研ナオコ 特別公演』にも出演している。

 

ーー また、2023年 1月11日には、17作目となるシングル『どんこ坂』(作詞:さいとう大三 / 作曲:弦哲也)が発売。6月3日には、CD 5枚組に DVD が付属する 計6枚組の豪華ボックスセット『三山ひろし 15周年記念 愛蔵ボックス』が発売。7月5日には、2023年 2枚目となる 通算18作目のシングル『北海港節』(作詞:いではく / 作曲:弦哲也)が発売。8月2日には、カバーアルバム・シリーズ『歌い継ぐ!日本の流行歌パート 4』が、11月22日には『三山ひろし全曲集 ~落語歌謡「厩火事」入り~』が発売されている。

 

ーー さらに、7月5日には、4月の「大阪 新歌舞伎座」での座長公演の模様を完全収録した DVD / Blu-ray が発売され、9月6日には、6月にスタートし、2024年5月まで継続中の公演『三山ひろし 15周年リサイタル 〜ありがとう 感謝を込めて〜』の中から、6月の渋谷での公演の模様を収録した DVD / Blu-ray が発売されている。

 

ーー そして、12月には、東京「明治座」にて、『三山ひろし スペシャルコンサート 2023 挑戦!ひとり大忠臣蔵』を 3日間開催。第1部は歌謡ショー、第2部は、敬愛する 三波春夫 が歌謡生活 15年目に発表した、歌と語りと浪曲で綴った 3時間半にもおよぶ『大忠臣蔵』を、『あゝ松の廊下』や『元禄男の友情 立花左近』や『元禄名槍譜 俵星玄蕃』といった「長編 歌謡浪曲」7曲に殺陣や芝居の要素を取り入れ、和風ミュージカルのような雰囲気にした 80分バージョンで披露した。

 

三山: いや〜、15周年は、もう目白押しでした。今年(2023年)は、忙しかったですね〜。だから、今年(2023年)で言うと、本当にそういう舞台で歌うお仕事もありながら、テレビの方では、初めて「朝ドラ」にも出せていただきまして……、いや〜緊張しましたね。自分がやったのが、高知の呉服屋の若旦那の役だったんですけど、ただ、自分のふるさと(高知)の言葉なんで、わりと、すっと出られたところはありましたけど。

 

三山: でも、僕、知らなかったんですよ、「一発撮りじゃない」っていうことを……。あの、(ひとつのシーンを)何回か角度を変えて、カメラを変えて撮るっていうのを知らなくて、同じセリフを何回も言うんですよね。でも、1回だと思ってるから、その一点集中でやってて、最初は良かったんですよ。2回目からは、もう安心して気が抜けちゃって、「えっ、なに、もう1回撮るの?」と思って……(笑)、それでちょっと NG を何回か出したりとかいうことはありましたけど。

 

三山: でも、まあ、思い出としましては、それこそ 松坂慶子 さんと「けん玉」やったりとか……。僕、2級指導員なんで免状を出せるんですよ。「ちょっとやってみてください」って言って、その時に見て、9級合格してます……(笑)。

 

三山: そんなことがあったり、あとは、そうですね『松尾芸能賞』で優秀賞をいただいたりとか、それから、けん玉の方でいうと、今年、初めて「けん玉協会」主催の大会というものに出まして、30年以上やってる大会で、新人王決定戦っていう大会があるんですけど、そこで「社会人新人王」になったりとか、もう本当に今年は、いろんなトピックが多いですよね。

 

ーー 2023年 3月29日には、日本の文化・芸能の保存、向上に寄与した人物を表彰する『第44回 松尾芸能賞』で、尾上菊之助、天海祐希、山村友五郎、吉田玉男らとともに、三山ひろし が優秀賞を受賞した(大賞は市村正親)。そして、三山ひろし の故郷、高知が舞台となった NHK 連続テレビ小説『らんまん』(2023年4月3日〜9月29日)では、俳優デビューも果たした。高知の呉服商「仙石屋」の主人、浜村義兵衛(はまむら ぎへい)役を演じ、松坂慶子と共演した。そして、年末には、「第74回 NHK 紅白歌合戦」に、初出場から 9年連続で出場した。

 

三山: 紅白が決まった時は、やっぱりホッとしましたね。やっぱり、毎年、勝負なので……。毎年、年が明けた瞬間からビクビクしながら、「この新曲、どうなるかな」みたいな……。今年(2023年)は、2曲でしたけどね、『どんこ坂』と『北海港節』と。

 

三山: まあ、やっぱり、1年を通して 1曲をずっとそれでやっていければ一番いいんですけどね。でも、やっぱり、今、この時代で、なかなか難しいですからね、1曲を長く歌っていくっていうのは……。

 

三山: だいたい、1曲歌ったら、同じ歌で 2回は番組に出られなかったりするじゃないですか。番組もそうだし、やっぱりそのサイクルが、とっても今早くて、時代の流れが。だったら、同じものを「タイプなんとか」とかで出すよりも、新しいものを出して楽しんでもらう方が、お客様にとっていいのかなと。そう思って、「毎回、違う作品を出しましょうよ」っていうお話をしてるんですけど、でも、そうすると、変な話、「その歌の売り上げ」みたいなのは、要するに 1年通してやってるわけじゃないから、(2曲 出すと)半分になっちゃうわけですねですよね。

 

三山: そうなると、いわゆる(CD の売り上げ)実績みたいな、そういう部分に関しては、やっぱりちょっとね下になっちゃうんですね。でも、それだけで(紅白は)決まるわけじゃないので、活躍度であったりとか、認知度とかそういうのもありますから、そういうところでもってやってるので、活躍っていう意味では、今年どれだけコンサートの本数であったりとか、いろんなところにお邪魔させていただいて歌ったかとかっていうことも、全体的にまるっと含めて見てもらって、総合的に「今年の顔」なのかどうなのかみたいなところで選んでいただくわけじゃないすか。だから、ドキドキしますよね……、「今年、大丈夫かな……」みたいな。

 

 

4 この 15年で、一番、困った歌 〜「気持ちが溢れて出ちゃうんですよね…」〜

 

 

ーー 三山ひろしの歌唱は、嫌味がなく、さわやかだ。デビュー時の 三山ひろし のキャッチフレーズ「ビタミンボイス」とは、うまく言ったもので、聴くと元気になれる。その歌声は圧倒的で、豊かな響きで、「鳴り」の深さが違う。おそらく、今の若手、男性演歌・歌謡曲歌手の中では、一二を争う実力だと思う。しかも、演歌・歌謡曲だけでなく、歌謡曲やポップスのカバーを歌ってもうまい。

 

三山: ありがとうございます。でも、カバーは、やっぱり、すごいセンシティブな感じになりますね。とっても怖いんですよ。やっぱり、その、皆さんの(オリジナル歌手の)イメージがあるじゃないですか。きっと、その歌が売れた理由もあるし、そこをある程度、網羅した上で、自分の中に落とし込んで歌うっていうのは、結構、労力で言うと、自分の歌を歌う以上に気を遣いますね。

 

三山: なので、たとえば、カバー曲がくると、有名な曲だったら、そのカバー曲を歌っている人って、ひとりじゃない何人もいたりするじゃないですか。そしたら、その全員の歌を聴くんですよ。たとえば、YouTube とかで上がってたりとか、あと自分のレコーダーに入ってるもので見たりとか聴いたりとかして、ある程度、全員、いろんな人がいろんなカバーをしてる歌い方を 全部 聴くんです。

 

三山: で、あらためて、自分が声を出して歌ってみて、いいところ、悪いところを差し引きして、最終的に、ご本人、オリジナル歌唱をされている人の歌とどれだけ違うか……、乖離(かいり)がないかとか、そういうことをちょっと擦り合わせながらやってくんで……。しかも、意外とすぐ収録あったりすると、それを、わずかな時間でやんなきゃいけないですから、だから、早く知りたいなっていうのはすごくありますね……(笑)。

 

ーー 歌手が、テレビでカバー曲を歌う場合、一見、簡単でラクそうには見えるが、実は、歌う方にとっては、大変な苦労があったりするものだ。有名な曲であればあるほど、うまく歌えなければみっともないことになってしまうし、聴く人が持っているオリジナル歌手のイメージを壊すような歌唱でもいけない。しかし、モノマネではダメで、三山ひろし らしさもなければいけないという難しさがある。

 

三山: そうですね。まさしく、そういうことです。

 

ーー テレビの音楽番組などでは、予想もしていなかったような、意外な曲を歌わなければならない場合も少なくない。三山ひろし も例外ではなく、たとえば、三山ひろし が 由紀さおり とともに司会も務める BS-TBS の音楽番組『うた恋!音楽会』(現在は『名曲をあなたに うた恋!音楽会』)では、新浜レオン、青山新 とともに 3人で、少年隊の『仮面舞踏会』を踊りながら歌ったこともあった(2023年2月24日 放送回)。

 

三山: あのときはね……、もうね……、なんかもう、よくわかんなかったですね……(笑)。踊りもちゃんと踊らなきゃいけないし、歌は自分のパートがあるし、歌い分けなきゃいけないから、もう大変でしたね……(笑)。

 

ーー そういう「えっ! この曲をオレに歌わせるの?!」と思うことも、たまにはあるだろう。

 

三山: あります、あります。いろんな歌がありますからね。

 

ーー なんでもうまく歌ってしまう 三山ひろし だが、困ってしまった曲もあった。

 

三山: 僕ね……、この 15年で、一番、困った歌があるんですよ……。北原白秋 先生の詞で、山田耕筰 先生作曲の作品で『松島音頭』っていう歌があるんですよ。いや、これは困りました〜、本当に……(笑)。いや〜、大変でしたね。

 

三山: 『松島音頭』で、「音頭」って言ってるんですけど、「音頭」じゃないんですよね。どちらかって言うとね、「歌曲」に近い感じで、なんて言うのかな、いわゆる演歌歌手とか流行歌を歌う人とはちょっと違う、声楽をやってる人が歌うような、そういう感じの作品なんですよ。で、どっから歌い始めていいのかもわかんないし……(笑)。これは困りましたね……(笑)。

 

三山: あれは、『昭和の歌人たち』(2016年9月25日 放送 NHK BSプレミアム)っていう、由紀さおり さんと 石澤典夫(元 NHK アナウンサー)さんが司会をやってた番組で、船村徹さんとか、作曲家の先生を特集する番組で、山田耕筰 先生を特集した回だったんですよ。

 

三山: あれが、一番、ツラかったですね。もう、あの歌は、もう毎日聴いて、死ぬほど練習しましたね。先輩とか歌謡曲を歌っているような人でカバーしてる人がいないので、それこそ、声楽を学んでる人が歌ってるのが、ちょうど YouTube に上がってたので、それを見て、歌い方を覚えて歌ったんですけど……。それでも、本番でも、一回、失敗して、やり直しましたから……、それも、お客さんが入っての公開収録ですからね……(笑)。いままでで、第1位ですね……(笑)、ホント、困りました……(笑)。

 

ーー 逆に、歌ってみて好きになった曲はあるのだろうか?

 

三山: あ〜……、あの……、大瀧詠一さんの歌とか、歌ったことがなかったんですけど……、『うた恋!音楽会』(BS-TBS、現在は『名曲をあなたに うた恋!音楽会』)で、シティ・ポップの特集がありまして、その時に、大瀧詠一さんの『幸せな結末』を歌ったんですよ。あれは「なかなかいいな」って思いましたね。難しいんですけどね。僕の中では、「ちゃんと再現できてるかな……」って感じで歌ったんですけど、番組の構成作家の方から「なかなか良かったよ。大瀧詠一さんの歌、いけるんじゃないの」って言われて、で、そのあとにも、もう 1曲歌ったんですよ。

 

ーー そういうポップスも、実にうまく歌う。

 

三山: でもね……、僕が歌うと、どうしても「コブシがまわる」って言われちゃうんですよ……(笑)。コブシまわしてないのに、「あっ、コブシ入ってるね」って言われるんですよ。入れると、絶対に変だと思うから、入れてないはずなのに……、だから、「それ、見た目でしょ」って……(笑)。

 

ーー 2023年 12月1日に、「NHK BS-1」と「NHK BSプレミアム」が「NHK BS」に統合されるにあたり、その前日、2023年 11月30日に生放送された特番『BSプレミアムがお引っ越し! カウントダウン SP』では、「NHK BS」の音楽番組『新・BS日本のうた』を代表して 三山ひろし が出演した。

 

ーー そこで、『新・BS日本のうた』から、2019年4月に放送された、吉幾三、三山ひろし、福田こうへい の 3人がスペシャル・ステージで共演した VTR が放送された。三山ひろし が 吉幾三の『かあさんへ』をカバーして歌い、歌いながら思わず涙ぐんだシーンだった。生放送では、その VTR を見ていた 三山ひろし が、また涙ぐんでいた。

 

三山: そうですね……、あれは、何回、見てもダメですね。あれが流れて、もうどうしても我慢できなかったですね……。吉幾三さんも大好きですし……、あれは、やっぱり、誰もが感動する作品ですよね。

 

ーー デビュー前、若い頃から、三山ひろし は 吉幾三 が大好きだった。実際、17歳、高校2年の時に、歌手を夢見て、地元で開催された「NHK のど自慢」に出場したときには、吉幾三の『雪国』を歌った(デビューまでのヒストリーを知りたい方は、前回のインタビューで詳しく語ってくれているので、そちらをお読みください。最下部にリンクをつけておきます)。

 

三山: 僕、やっぱり、歌を歌うときは「気持ち先行」なんですよ。メロディーとか、歌い方とか、譜わりとか、リズムとかっていうよりも、最初に気持ちがいっちゃうんですよ……、「思い」が……。だから、その詞の世界が「いいな」と思ったら、もう「その詞をどうやってお届けしようか」っていうふうに思うのが先に出ちゃって……、自分の思いとか、同じように思ってる人がいるだろうなって思うと、やっぱり、気持ちが溢れて出ちゃうんですよね。

 

三山: それが、たとえば、涙になったりとか、微妙なその楽譜にはない「揺れ」であったりとか、そういうのが出たりするのが僕の特徴というか……、いいとこであり、悪いとこであるというか……、自分の中で、そんな感じがします。

 

 

5 ギター、ドラム、けん玉、裁縫、包丁研ぎ … 多彩な特技 〜「どこまで自分ができるかなっていうのを見たいんです…」〜

 

 

ーー 2023年 5月までは、『15周年記念 三山ひろしコンサート ~歌う門には夢来たる~』を全国で開催し、その後、新たに 2023年 6月から 2024年 5月まで『三山ひろし 15周年記念コンサート ~ありがとう感謝を込めて~』を日本全国の大ホールで開催中だ。約 1年間で 100本近くが予定されている。演歌・歌謡曲の世界に限らず、ポップスも含めても、そんなにたくさんやっている人は、そんなにいないし、そもそも、できる人も少ない。「スターダスト☆レビュー」くらいしか知らない。

 

三山: そうですね〜。結構、やってますね〜。15周年っていうことで、結構、詰め込んで……(笑)。番組も、レギュラーが増えましたから、結構、忙しくやってますね。

 

ーー 2023年 6月2日(渋谷)と 8月21日(大阪)に行われた記念コンサート『三山ひろし 15周年リサイタル 〜ありがとう 感謝を込めて〜』では、自身の歌のルーツでもある「詩吟」も披露している。(詩吟に関してなど、生い立ちを知りたい方は、前回のインタビューでヒストリーを詳しく話してくれているので、そちらをお読みください。最下部にリンクをつけておきます。)

 

三山: 今回が初めてではないんですけど……、たしか 3周年のときにもやってたと思うんですけど、今回、15周年なんで、あらためて「三山ひろし ヒストリー」をやりたいっていうこともあって、久しぶりに「詩吟」を入れましたね。

 

ーー さらに、和太鼓や、ギターの弾き語りに加えて、ドラムも演奏している。

 

三山: はい、やってますね。ドラムは、前回は、カバー曲で叩いたんで、今回はオリジナルってことで、『花恋歌 〜はなれんか〜』を、ドラムが目立つ編曲にアレンジし直して、叩きながら歌ってます。だから、ツイン・ドラムでやってるんですよ。でも、基本的には、全部、自分が刻んでやってるんで、ソロパートみたいなところも入れて……、結構、いいですよ。DVD(2023年9月6日 発売の『三山ひろし 15周年リサイタル 〜ありがとう 感謝を込めて〜』)に 入ってます……(笑)。

 

三山: ギターは、第2部で幕が開くと、サス(真上からの1本の照明)で、僕だけがセンターにいて、『別れの一本杉』を弾き語りで……。前奏からなんで、やっぱり、最初の頃は緊張して、途中で止まって「もう 1回やってください」とかありましたけど……(笑)、最近は、ないですけどね。で、途中 2コーラス目からバンドさんも入ってっていう。

 

三山: そんなことをやって、そのあとは、ガットギター(ナイロン弦のギター)を置いて、今度は、フォークギター(スティール弦のギター)で、『四万十川』をフォークギター・バージョンをお送りして、そのあと、立ち上がって『落陽』(吉田拓郎のカバー)をやって……、そんな感じでギターのコーナーはやってますね。

 

三山: もともと、ギターは持ってはいて、なんとなくコードをおさえてやってたんですけど、ステージで披露するっていうのはあんまりなかったんですよ。でも、それこそ、『歌う門には夢来たる』(2023年5月まで開催された『15周年記念 三山ひろしコンサート ~歌う門には夢来たる~』)のときに、『嵐を呼ぶ男』とかドラム演奏もしたんですけど、そのころから、ギターも「ちょっとステージでやってみようか」っていう話になって、小林旭 さんの『ギターを持った渡り鳥』を弾くことになったんですよ。

 

三山: で、その前も、ちょこちょこ、番組とか、あと、亀有(東京・葛飾区「かめあり リリオホール」)の方で『歌い継ぐ!昭和の流行歌 コンサート』っていうのを、毎年、やってて、そこでは、ちょこちょこやってたりしたんですけど。

 

三山: ドラムは、『歌う門には夢来たる』のときに、『嵐を呼ぶ男』をやったんですけど、最初は、ハイハットしかやってなかったんですよ。それから、ソロパートのところを作って、で、やっているうちに、「自分の歌を叩きながら歌いたい」っていうふうになってきて、で、その翌年に『花恋歌 〜はなれんか〜』でやろうってことになったんですよ。だから、2年ぐらい前からってことですかね。

 

ーー 2023年 8月2日に発売された、三山ひろし のカバーアルバム・シリーズ最新作『歌い継ぐ!日本の流行歌パート 4』にも、『嵐を呼ぶ男』が収録されており、ドラムは、三山ひろし が叩いている。

 

三山: はい、やってます。だから、初めてですよ、レコーディングでドラム叩いたのは……。「えっ? いいんですか?」って感じですよ……(笑)。レコーディングなんで、やっぱね、スタジオミュージシャンの方がやられるんで……。で、当然、スタジオミュージシャンの方もいらっしゃったんですけど、「自分のソロパートは自分で叩いてください」って言われて、それで(ドラム)セットを借りて、やらせていただいて、録音しました。緊張しましたね〜、「ああ、こんな気持ちなんだ、みなさん」って……(笑)、スタジオミュージシャンの気持ちを味わえましたね。

 

ーー ほかにもやってみたい楽器があったりするのだろうか?

 

三山: いまのところは、とりあえず、ドラムとギターを、さらに深めていこうと思ってます。いろいろやるのもいいかもしれないですけど、どうもね、今、ギターとドラムが一番合ってるような気がするんですよ。だから、それらをまず深めていって、ある程度の位置までいったら、次のことを考えます。とりあえず、今は、ギターの方は、ペンタトニック・スケール(5つの音からなる音階)で、アドリブ(即興演奏のソロ)ができるぐらいまで高めたいと思ってます。

 

三山: ドラムの方は、いろんなリズムがあるじゃないすか、それをさらに取り入れて、フィル(「フィル・イン」一定のパターンを叩いたあとの短い装飾的な演奏、「オカズ」とも言う)とかも自分で即興でできるもの、オリジナルのフィルを作ったりとかっていうことを考えてます。

 

ーー 休みもないくらいの多忙な中、よく練習する時間があるものだ。

 

三山: 練習は、もう毎日……、今日もそうですけど、毎日、(ドラムの)スティックは持ってて、エチュード(練習曲集)を見ながら練習したりとか、そういうのをやったりとかで、隙間で練習……、カバー曲を歌うときもそうだし、隙間で覚えていく感じですかね。

 

三山: だから、やりたいことはたくさんあるけど、時間がないので、もう本当に一点集中で、「今から10分間はドラム」、「今から10分間は長編歌謡浪曲を覚える」、「今から10分間はギターの練習」っていう自分の中で時間を決めてやらないと、ちょっと難しいです、まんべんなくやるのは。

 

ーー けん玉、ギター、ドラム、裁縫、包丁研ぎ……など、三山ひろし の特技はたくさんあるが、いずれも、それなりのレベルになるまで突き詰める。そういう性格なのだろう。

 

三山: そうですね……。僕、どっちかっていうと、「やり始めたら、どこまでいけるかな」って試したくなるタイプなんで……(笑)。「行けるとこまでは行きたい」って思ってんですよね……(笑)。

 

三山: でも、やっぱり、限界は来ますよね。「向いてる、向いてない」もあるし、限界は来るんですけど、自分の限界を見るまでは、やっぱり、その道を極めたいなと思うんですよ。ドラムにしても、ギターにしても、どこまで自分ができるかなっていうのを見たいんですよね。

 

三山: 「これは、もうこれ以上やっても無理だな」と思ったら、やめて、違うことやるかもしれないですけど、それが見えるまでは、やり続けていたいタイプなので、「まだ行けるな、まだ行けるな」と思ったら、どんどん進んでいって、やっていきたいですね。

 

 

6 三山ひろし が 新たに作り出した「落語歌謡」というジャンル 〜「ひとつのジャンルを作りたいなっていう思いがあったので…」〜

 

 

ーー さらに、驚くべきことに、2021年 9月には「三山家 とさ春」として、落語家デビューもしている。2021年のテレビ番組の企画で「落語」に挑戦したことがきっかけだった。

 

三山: そうです、そうです。(CS)「歌謡ポップスチャンネル」で、『学芸のすゝめ』っていう番組があって、そこで「三山ひろしが落語を学ぶ」っていう……。

 

三山: 落語をやるきっかけはそうなんですけど、もっと言えば、以前、明治座で座長公演したときに、『坂田三吉物語』という落語のお話で作ってあったものを劇化したんですけど、その落語を作ったのが、僕の今の落語の師匠で、立川 志の春(たてかわ しのはる)さんなんです。その(立川)志の春さんが、まだ真打になる前だったんですけどご一緒させていただいて、そこが出会いのきっかけだったんです。

 

三山: で、(立川)志の春さんと、いろんな話をしている中で、「落語とかできそうですね」みたいな話になって、「いや、ちょっと難しいんじゃないですかね」「いや、できますよ〜」っていう話で終わってたんですけど、その「歌謡ポップスチャンネル」さんといろいろとお話してる中で、「チャレンジ企画で、落語にチャレンジしてみませんか」ってことになって、「ちゃんと教えてくれる人がいないとできないんじゃないすか」みたいなこと言ってたら、「(立川)志の春さんがいるじゃないですか、教えてもらいましょう」ってことになったんです。

 

三山: それで、まず、落語と歌謡曲の対談から始まったんですよ(2021年4月25日 放送『三山ひろし×立川志の春 落語対談』CS「歌謡ポップスチャンネル」)。で、対談してみて「できそうですかね?」みたいな話で、落語界の歌謡界の違いとかっていうのを対談してる中で、「ちょっと、やってみませんか」って言うんで、1ヶ月の修行期間というか覚える期間があってやったのがきっかけだったんですけどね。

 

ーー そうして、2021年4月に CS「歌謡ポップスチャンネル」で放送された『三山ひろし×立川志の春 落語対談』の約 1ヶ月後、2021年5月に、特番『三山ひろし 落語 ~日本の伝統芸に挑む~』が放送された。

 

三山: いや〜、めちゃくちゃ面白かったですね。もう今もハマってやってるんですけど。

 

ーー その後、落語家の 立川志の春 の下で、本格的に落語を習得し、2021年9月には、「三山家 とさ春」として落語家デビューを果たした。現在、「1部は落語、2部は歌謡ショー」という特別公演も開催している。

 

三山: はい、やってます、やってます。そんなに数は多くないですけど、もう 3年くらいやってます。キャパシティもあんまり大きくないところでお届けしたいってことで……、落語って、あんまり大きいところだとちょっと……、だから、規模で言うと、5〜600人から800人ぐらいのところで、それぐらいのところでやると、結構、いろんなとこに行けるんですよ。

 

三山: いろんなところに、歌もお届けしたいし、落語の世界もお届けしたいっていうので、(落語と歌謡ショーの)両方やってるパッケージっていうので、北海道に行ったりとか、熊本に行ったりとか、あと、土佐清水とか徳島とか福井県の小浜とか、こないだは滋賀県の野洲に行ったりとか……、そういうところに行って、落語を見てもらって、歌もお届けするっていうのをやってますね。

 

ーー そして、今度は、「落語」と「歌」を組み合わせることを考えた。2023年 11月22日に発売された、最新の全曲集『三山ひろし 全曲集』には、「落語歌謡『厩火事』(うまやかじ)」(作詞:立川志の春 / 作曲:宮下健治 / 編曲:伊戸のりお)が収録されている。

 

三山: はい、作ったんです。

 

ーー 落語歌謡『厩火事』は、「落語をベースにした歌」と「落語部分の節」で構成されていて、「長編 歌謡浪曲」と同じような作りになっている。

 

三山: はい、見た感じは、そんなふうになってるんですよね。「浪曲と歌謡曲」とか、「講談と歌謡曲」っていうのは、結構、相性が良くて、すぐ形になってたんですね。で、それは、歌い手としても、ある程度、できるんですよ。

 

三山: でも、「落語と歌謡曲」っていうのは、「落語」をまるっとお話できないと、できないんですね。CD(に録音されているもの)は 9分30秒くらいなんですけど、あれを実演でやるってことになると、「間」(ま)が抜けてるんですよ。その「間」(ま)を埋められるということは、「落語」ができないと埋められないので、実際に、あれを歌おうと思ったら、「落語ができてる人」と「歌謡曲ができてる人」との両方をやんなきゃいけない。で、そういうジャンルを作ってはどうかということで、今回、「落語歌謡」を作ったんです。

 

ーー たしかに、「長編 歌謡浪曲」であれば、歌手なら歌えるだろうが、「落語歌謡」となると、三山ひろし も言うように、歌うことだけでなく、ちゃんとした落語ができないと難しい。「落語歌謡」は、これまで、誰もやったことのないことで、まさにパイオニアだ。

 

三山: 初めてです。たぶん、一番最初なんです。だから、作っているときに、ディレクターさんと冗談で、「これ、宗家(そうけ)だね」って言ってたんですけどね……(笑)。

 

ーー 落語歌謡『厩火事』は、師匠である落語家の 立川志の春 が作詞した。

 

三山: はい、歌の部分も全部です。作詞は全部(立川)志の春さんがお書きになったんですけど、なかなかいいですよ。『厩火事』っていうのは、もともと古典落語なんですけど、その「前からずっとあるお話を歌にしたらどうなるんでしょうか」っていう話でご相談して、時系列で話を 1番 2番 3番に分けてもらったので、だから、基本的には落語の『厩火事』の話の流れになってるんです、1番 2番 3番と。

 

三山: で、間に「アンコ」を入れるようにして、やってるんですけど、それも全部中身を書いてもらって……。けど、(立川志の春 は)歌を作る人じゃないですから、「歌の行き方」とかっていうのは、やっぱりおわかりにならないわけですよ。

 

三山: なので、(作曲を担当した)宮下(健治)先生に相談したんですけど、でも、今度は、宮下先生は、落語があんまりおわかりにならないから、「どういうふうに書いたらいいものか……」と。そこで、僕が、「歌い方は、きっとこんな感じになると思います」「ここはやっぱり落語にしたいです」っていうのを伝えて……。だから、初めて「作品づくり」と言うか制作にも携わったっていう感じですね……(笑)。

 

三山: だから、浪曲の部分の節なんかも自分で考えたんです。結構、飽きがこないようにしたいなと思ってて、最初は、全部、同じ調子で歌うようになってたから、「これちょっと間延びして面白くないな」と思って、「1番 2番 3番の間は、歌になるところと、歌詞になるところ、セリフになるところを分けたいです」って、テイストを全部変えたんですよ。そしたら飽きがこないものになったんです。「あっ、もう終わったんだ」っていう感じで、意外と短く感じる。

 

三山: で、今回、アルバムの中での 第1弾なので……、でも、シングルにはちょっとなりそうにないんですよね、長いですからね。でも、企画として、毎年、1作は必ず作っていきたいなと思ってるんですよ。

 

三山: やっぱり、それなりにこのジャンルを確立していって、落語界のためにも……。で、「長編 歌謡浪曲」といえば 三波春夫 さんで、「落語歌謡」といえば 三山ひろし みたいな……(笑)、ゆくゆくは。それ、何年かかるかわかんない、何十年なるかもわかんないし、わかんないけど、やっぱりせっかくだったら、この歌の世界に、ひとつのジャンルを作りたいなっていう思いがあったので……、はい。

 

 

7 より良い歌を歌っていくために 〜「自分の心が育つかどうか っていうところに関わってくる…」〜

 

 

ーー 現在、2023年6月〜2024年5月まで、『三山ひろし 15周年記念コンサート ~ありがとう感謝を込めて~』が、全国各地の大ホールで開催中だ。その数は、1年間で 100本近くにもなるが、他にも様々な公演が予定されている。

 

三山: そうですね〜。あとは、(2024年)3月に、亀有(東京・葛飾区「かめあり リリオホール」)で、立川志の春 さんとの「二人会」があって(『志の春・とさ春 二人会 三山ひろしの春めく落語 第3回』)、そこで、落語歌謡『厩火事』を初出しにしようと思ってます。

 

三山: それから、三波春夫さんの『生誕 100年 メモリアルコンサート』(2024年2月〜3月、大阪、新潟、東京)にも参加させていただいて……、えっと……、あと、だいぶ先ですけど、9月には、「大阪 新歌舞伎座」で座長公演があります。1部は お芝居で、2部は歌謡ショーっていう感じになると思います。

 

ーー 三山ひろし は、以前のインタビューで、「より良い歌を歌っていくためには、もう何か他のその技術云々ではなくて、人間力なんだ」という話をしていた。

 

三山: はい、その通りです。なので、今も「人間磨き」をずっとやってるんですけど……。やっぱり、豊かな表現とか感情っていうのは……、なんて言うのかな……、日々の生活が、やっぱり色濃いものじゃないと、表現の幅が小さくなっちゃうんじゃないかと思うんですよね。

 

三山: だから、経験はたくさんあった方がいいと思いますし、できる範囲でですけど……。やっぱり、いつでも、何に対しても、感動できるような、そういう心は残しておきたいなと。

 

三山: 時代は「AIの時代」だとか、なんでもできたりする時代なんですけども、そういうことじゃなくて、やっぱり、ひとつひとつに心を動かせられるような、そういう位置にはいたいなと思ってるんですよ。そうじゃないと、やっぱり、いろんな歌をもらったりとか、あるいは、お芝居とかで「こんな役」とかっていうのが来たときに、表現できないんじゃないかと思うんですよね。

 

三山: だから、日々、「人間・三山ひろし」と言うか「恒石正彰」(つねいし まさあき、本名)を育てることによって、「三山ひろしの商品価値」というのがもっと高まっていくんじゃないかなと思ってるんですよね。

 

ーー 常に、いろんなことを感じることができるような心でいることで、感情の刺激を受けて、充電していくみたいなことだろう。それができる豊かな心でいたいということだ。

 

三山: そうですね、充電して、それをまたちゃんとアウトプットできるように、いろんな歌でもって表現できるようにしていかなきゃいけないなと思ってるんで……。

 

三山: やっぱり……、さっきとちょっと言ってること重なってしまいますけど、やっぱり、どちらかって言うと、気持ちが先行するそういうタイプなので、作品をもらっても、やっぱり「どんな思いでこの作品を作ったんだろう?」であったりとか、「主人公はどんな気持ちなんだろう?」とか、やっぱり、そういうなんか映像にしたいんですよ、先に。で、「先に映像になったものを、色鮮やかにして、お客様にお届けしたい」と思っているので、やっぱり「映像にできるか」っていうことは、「自分の心が育つかどうか」っていうところに関わってくるんだと思うんですよ。

 

ーー 今後、どういうふうになっていきたいのかを聞いた。

 

三山: そうですね〜、やっぱり、もう大きく言えば、やっぱり自分の名前を世の中に残したいなっていう……。もちろん、作品としてはね、素晴らしい作品をいただいて、皆さんにかわいがっていただいてるんですけど、なにか、この……、そうですね……、ひとつのジャンルであったりとか……、なんか、「やっぱり、この世界、あの人がいないと」みたいなところまで自分を高めていきたいなっていうのがひとつがあって、そのために「落語歌謡」という新しいジャンルであったりとか……。

 

三山: やっぱり、チャレンジを忘れないように、常にいろんなことにアンテナを張って、新しいことを探して、人がやってない、歩いてない道をどんどん歩いていって……、なんていうのかな……、自分の山をちゃんと作っていきたいなと思ってます。

 

ーー 最後に、一見、接点のあまりない、縁遠いとさえ思われる ライターの 武田砂鉄 が、いつも応援していることについて聞いてみた。武田砂鉄 がパーソナリティを務める人気のラジオ番組『武田砂鉄のプレ金ナイト』(TBSラジオ、旧『アシタノカレッジ』)に、三山ひろし は 2021年から毎年、これまで計3回も呼ばれてゲスト出演している。

 

三山: いや〜、ホント、よくわかんないんですけど、なぜか気に入っていただいて……(笑)、いつもかわいがってもらってます。

 

ーー それこそ、まさに、三山ひろし の「人間力」の証明だ。

 

 

(取材日:2023年 12月5日 / 取材・文:西山 寧)

 

 

 

三山ひろし の デビューまでのヒストリーが知りたい方はコチラ

 

いろいろわかる… 三山ひろし ロングインタビュー!(2020年)

いろいろわかる… 三山ひろし ロングインタビュー!「ボクは "氷川チルドレン" ですね…」デビューまでのヒストリーも詳しく! 最新シングルは、北海道を舞台にしたメジャー調の王道港町演歌「北のおんな町」に、新たな魅力に気付かされる2曲のオリジナルを加えた新装盤!

 

 

 

 
 
 
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