六文銭

あなたがいた だから名曲

「もう惨めな想いはしたくないんだ」
そう嘆き俯いた日のこと
優しいあなたは俺の手を握りしめたりなどしなかった
代わりに床に散らばったペンを拾い集めては
強く固く握らせた
「やるんでしょ? やらなくちゃでしょ?
知ってるよ 私は知ってるからね」
そう言って ひとりぼっちにしてくれた
その健気さを その愛しさを
痛みを 怒りを 光を綴った
その夜 俺はラッパーになれた
「華がないなぁ」
って言われてた俺が それでもいいんだと心から思えた
あなたが気高く凛と咲くのなら俺はあなたの土になりたい

あなたの名前を呼びたくなる曲
それを略した言葉が名曲
目を閉じる 誰思う故の名曲
あなたがいた だから名曲

オカルトは嫌い 神様はいない
見える気がしない 幽霊は信じない
天国はない 地獄だってない それでも
お前がどこにもいないなんて思わない
自らで選んだ命の使い道
お前の気持ちなんて誰にもわからない
ツイートで追悼? そんなのは野暮
だからアコギとラップ合わせ合掌
サシで話したいからもう集まりは行かないよ
仮に命日すっぽかしたっていいだろ
ふとした時に思い出すよ
お前を忘れるまで忘れない
遺骨の中に心はなかったらしいな
よかった ちゃんと持ってったか
大事なものは 灰にはならない
なら恐れずに言う またな ばいばい

あなたの名前を呼びたくなる曲
それを略した 言葉が名曲
目を閉じる 誰思う故の名曲
あなたがいた だから名曲

なぁUK 俺達どこまでいけるかな?

いつだって飄々と無表情
俺よりも遥かにタフな相棒のど根性
そんなあいつが初めて見せた悲しい顔は
俺が俺を否定したその時だった
「もう消えたいわ」
と情けない ラッパーに
送られたギター フレーズのレター
音楽に救われた事なんてない
人の想いに救われてばっかりだ
わかった 雨を風も避けず 叫ぶから
お前弦弾け 俺の横走れ
すぐに行くから先にステージに行っとけ
これは腐れ縁 じゃなく運命
片や喉やられ 片や腱鞘炎
満身創痍で這いずる板の上
俺のがヤバイの宛先が今夜も
俺よりヤバイ音 鳴らしてる
共に駆け抜けた 金も稼いだ
余りある財産 だがしかしもう一つ
お前と二人で手を伸ばし掴み取る不動産
待たしたな 九段下 日本武道館

あなたの名前を呼びたくなる曲
それを略した 言葉が名曲
目を閉じる 誰思う故の名曲
あなたがいた だから名曲

「就職でライブ来れなくなるんですけど
MOROHAに負けないように頑張ります」
そう言って去っていくあなたの横顔を
希望と呼ばずして何て呼ぶだろう
祝うべき門出 しばしの別れ
寂しさ押し殺し 言い聞かす
あの背中が俺達の作品だぜ
「人間は決して救われやしないんだ」
そう歌った筈 なのにあなたが
「あの歌に救われた」なんて言うから
憎しみでつくられた歌が救われた
「人は孤独だ」
なんて叫べば 会場に沢山の寂しさが集まって
弱さ虚しさ見つめ合い
分け合えずとも共に寄り添った
友達じゃない家族 恋人でもない 全員他人だ
なのに 同じ音 同じ時代に揺れて生きてそこにいる
それが奇跡 出来過ぎた奇跡だ
この国で五本指に入るラッパー
じゃなくていい MOROHA アフロは
あなたの握った拳の中だ
闘う気持ちの側にいるから

あなたの名前を呼びたくなる曲
それを略した言葉が名曲
目を閉じる 誰思う故の名曲
あなたがいた だから名曲
あなたの名前を呼びたくなる曲
それを略した言葉が名曲
目閉じる 誰思う故の名曲
あなたいた だから名曲

MCアフロ 本名 滝原勇斗
俺こそが本物 本物の音楽
本物のラップ 本物の表現だ
なんて胸を張る俺より遥かに
バカにされてないか?笑われてないか?
間違ってないか?これでいいのかな?
なんて悩んでる俺こそが何より
痛いくらい本当で本物の俺だ
それでもそんな俺の事を信じてくれるあなたがいたから
俺は迷わず俺を疑い続ける事ができたんだ

諦めに向かう地図を破れば
何かを成す為にやって来たんだ
ドリームはゴーしてトゥルーにしていく
命をかけて命を描け
追いかけ続ける 問いかけの答え 答えは
あなたがいた だから名曲

あなたがいてくれたから名曲でした
×