雲のふるさと

常夏の 椰子の木蔭に
戎衣(いくさぎ)を解きて 憩いつ
かえり見る 雲のはるけさ
ますらおの われというとも
故しらず 涙落つるを

誰ぞ叱る われも人の子
胸熱く 思い出づるは
旗すすきなびく 信濃路
河鹿鳴く 清き川辺に
かの雲は 今も翳らむ

すめらぎに 捧げたる身の
死にてよと 汝は言わずや
まぼろしに 見ゆるふるさと
われ強し 汝のあればぞ
弾のなか ゆかんと思え
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