Namid[A]me

色褪せた涙のどしゃぶり
その胸の淵ギリギリで
乾涸びた傘を差し出した
名前も知らぬあなたがいる

声枯れた孤独の方舟
誰も受け付けぬ心の戸
どこか遠くで聞こえるあれは
またひとりぼっちの涙雨

涙目 変わらずの雨模様
その夢の淵ギリギリで

空ろげな顔で生きるのが
当たり前になった僕にさ
乾涸びた傘を差し出して
「はじめまして」あなたが笑う

問いかけるは僕の心か
それともあなたの意固地か
耳元で弾ける言葉で
この頭はフラつくばかりだ

戸惑いと哀しみに狂う凪をなぞるように
灯ひとつない夢の中をまた、ひとり、歩く?

揺らいだ僕の心
どうやって今、飛べると思う?
はにかむように結ぶ手と手、
傘ひとつ、笑っている

夜に浮かんだあなたの姿は
何より綺麗だと思った
間違ったって良いと言える
そんな凡庸を探している

涙溜りに揺らぐ蜃気楼
心の戸の奥の奥で
微かに応える僕がいる
その音の瀬のギリギリで。

草臥れた心の方舟
名前も知らぬあなたを乗せて
どこか遠くへ逃げられるかな
ふたりぼっちで落ちてけるかな

「ねえ、あたしが
この雨をずっと探していたって
どうやってなら叫び足りない
君の胸に届くでしょう」

戸惑いも哀しみも狂わせたその台詞を
ふたりだけの秘密にでもしよう
ずっと結んでいよう

「泣いているあなたの背は
どこへだって飛べると思う
間違ったって、
あなたとなら、
良いと思える気がする」

そこで笑ったあなたの姿は
何より綺麗だと思った
間違ったって良いと言える
そんな凡庸を探して、探している
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