あたたかな手

つき合いきれないってさ 毎度のことだけどね
がらんとした部屋はなんにもなかった顔で知らんぷり
これからどうするんだい? カチッ 鍵をかける音
階段2段飛ばしで駆け下りて今捨てたゴミ袋開けた

駅までの 帰りは
吐く息も 真っ白
ポケットに 入れた手を
ぎゅっと握りしめてみる

線の入ってない便箋 ちょっと斜めに傾いた字
20年後子どもとかいて 家で日々過ごす私は
洗濯物たたんで パチッ 痛っ 静電気
今日と同じくらい寒い冬の日 その拍子に思い出すの

ケンカして もうサヨナラって
君が言うから 頷いた
そのときの 君の顔
思い出して 笑っちゃうんだ

駅までの 帰りは
吐く息も 真っ白
ポケットに 入れた手を
ぎゅっと握りしめてみる

ぼくも今思い出してる 次から次へと溢れ出てくる
男のくせに手が冷たいね 私より君のがまつ毛長いね
ふるえながらアイスを食べた 夜中に起きて電話をかけた
笑うどころか泣きたいくらいだ 20年後のぼくは今

駅までの 帰りは
吐く息も 真っ白
ポケットに 入れた手を
ぎゅっと握りしめてみる

ああ今ぼくには
ああよくわかる
あの日君が見せた
涙のそのわけが
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