合鍵

鉢植えに水をやり
ふと思い出す
今頃は枯れたはず
不精なあなたの部屋のすみれたち

ポケットに眠ってた
銀色の鍵
散らかったレコードや
本を片づけて待ってたあの頃

海辺に捨てましょうか
思い出にかけた鍵は
貝穀のように閉じた
哀しみに
波が打ち寄せる

誰にだって使えない
合鍵がある
そのドアの向こうには
過去って名前の世界があるだけ

海辺に捨てましょうか
砂浜に深く埋めて
永遠に似た時間が
この胸を
洗い流すまで

誰にだって使えない
合鍵がある
もう二度と開かない
ドアに背を向けて私は生きてく
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