街の雪

冬の雨が 雪の粉に変わったのは
少しやせた君を空が哀れんだから
掌へと溶ける雪をぼくに見せて
これが雪の涙なのと淋しく笑う
しん・かん・しん・かん 雪が降る ビルの谷間に
しん・かん・しん・かん 天使が描いた水玉模様
「あなたに逢えない毎日なんて
想像もつかない」と
だだっ子みたいにしゃがみこむ君は
昨日より無口だね

角のカフェで 湯気をたてた珈琲飲み
今からなら二時の汽車に間に合う時間
だけど君の想いつめた瞳見たら
死ぬかもって こわい夢に引き止められた
しん・かん・しん・かん 雪が降る ほら指先に
しん・かん・しん・かん 息吹きかけて あっためようね
「あなたの世界を追いだされたら
行き場所も無いのよ」と
涙で語って黙り込む君が
昨日より無口だね 昨日より無口だね

チェーン巻いた車たちが雪をはねる
街の雪は人に踏まれ黒く汚れる
ぼくは記者の切符破き 歩道橋から
紙吹雪は雪にまじり 見えなくなった
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