アリア

困らせてよ、あと少しだけ。
僕に出来ることがひとつ増えるなら。
下らないだろ? 僕はいつも
そんなことばかりを望んでいたんだ。

遠くを見ている君が、
二人の未来を探してないのは分かってる。
「報われない想い」なんて
煤(すす)けたフレーズの代わりに、
今は温もりがあればいいよ。

どうかこのまま、ただ側にいて。
出会いは決して間違いじゃなかった、
もう一度だけ、最後にそんな夢が見たいから。

「思い通り」が案外窮屈とか、
都合のいい解釈に冷めてるとか、

一人の時間の意味がこんなに変わるなんて、
想像以上で、もう笑ってる。
君を浮かべるのは悪い気分じゃない。
鈍い痛みは相変わらず、この先もきっとそう。

どうかこのまま、僕を忘れて。
誰かの待つ場所へ君は帰る。
振り返りもせず、何も持たずに。
すべてを置いて行こう、この短い夜に。
色んなものがこぼれ落ちて散らかったって、
今日だけはもう構わないから。

轟音の静寂のような夢。
数えるほどだったけど、
意志の強い君がこぼした囁きが
今も胸を締め付ける。

時間だよ。このまま、そっと離れよう。
月明かりに決心が溶けてしまう、その前に。
これ以上傷を抉(えぐ)りあうその前に。
時間だよ。ほら、もう行かなきゃ。
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