追想花

空は霞深く 月は朧(おぼろ)に消え
流れ落ちた星は 海へ漂う

想い疼く胸を そっと水に浸す
欠けた貝の縁に 滲(にじ)んだ囁き

何処へ行けば消える 色褪(あ)せぬ哀しみ
時計を止めた あの日の笑顔に未だ 囚われて

いま 闇を照らす蛍たち 波間へ咲く花のように
叶わぬ願いのせては あてもなくただ揺れて 彷徨(さまよ)う

走り去る潮風 珊瑚まじりの砂
あふれては零れた 貴方の幻

穢(けが)れることの無い あなたかな想い出
振り返る度 輝き増す面影に 問いかけて

ああ 命焦がす蛍たち 夜明けに散る花のように
生まれ変われぬ心を 青白く抱き上げて 漂う

幼子のように 泣き腫らした瞼(まぶた)
貴方の指で 優しく撫でて

抱き締めて 不器用なその腕で
微かによぎる 過ぎし日の薫り 失うことなく

闇を照らす蛍たち 波間へ咲く花のように
叶わぬ願いのせては あてもなくただ揺れて 彷徨う

闇を照らす蛍たち 貴方へ咲く花のように
忘れえぬ想いのせて あてもなくただ揺れて 彷徨う
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