LIVE REPORT

水樹奈々 ライヴレポート

水樹奈々 ライヴレポート

【水樹奈々 ライヴレポート】 『NANA MIZUKI LIVE HOME 2022』 2022年8月7日 at さいたまスーパーアリーナ

2022年08月07日@さいたまスーパーアリーナ

撮影:kamiiisaka/取材:榑林史章

2022.08.22

水樹奈々にとって約3年振りとなるツアー『NANA MIZUKI LIVE HOME 2022』が開催された。8月7日、さいたまスーパーアリーナ公演では、最新アルバム『DELIGHTED REVIVER』収録曲を中心にライヴの定番曲を含む全24曲を歌唱し、“ライヴ=ホームグラウンド”に帰ってきた喜びをファンとともに爆発させた。

アメリカ西部のようなセット、ツアータイトルのロゴ看板には“WELCOME BACK TO OUR HOME GROUND”の文字。ウェスタンハットをかぶった水樹が登場し、“みんな帰ってきたよ!”と第一声。ステージは2003年にリリースされた“7枚目”のシングル「New Sensation」で幕を開けた。キャッチーなサビメロと前向きな歌詞、ライヴならではのアレンジで、水樹とバックバンド・Cherry Boysとの掛け合いが観客を魅了する。続いてライヴのお馴染みナンバー「POWER GATE」、そして最新アルバム『DELIGHTED REVIVER』のラストに収録の「Go Live!」とたたみかける。冒頭からパワー全開のポジティブソング三連発によって、背中をドンッと押された勢いのまま走り出してしまうような雰囲気。水樹らしい力強いエールが、みんなの心にライヴの醍醐味を呼び覚ましてくれた。

“ここがホームグラウンドだと実感してもらえるような、夏らしく容赦ないセットリストです。(熱い曲の連続に)“鬼”って言われるかも”と語る水樹の表情は実にうれしそうで、楽しくてたまらないといった笑みがこぼれまくっていた。

各日ごとに選曲が変わる「お楽しみコーナー〜水樹奈々 初めての○○〜」は、2年前に開催予定だったツアーのために考えていたものをブラッシュアップしたとのこと。この日は“初めての作詞曲”「つばさをひろげて」が披露された。19歳の時にインディーズでリリースされた楽曲で、ライヴで歌うのは22年振りとのこと。ポップで日だまりのような暖かさを持った同曲を、懐かしさを噛み締めるようにやさしく歌った水樹。“今では絶対に書かないような歌詞”と語った水樹だが、シンプルに直球で表現された歌詞の言葉は、非常に親しみ感にあふれていたように思う。ちなみに他の公演では、“初めてのアニメ主題歌”や“初めてのカバー曲”などが歌われたとのこと。

中盤は恋の駆け引きや大人の女性としての揺らぎを歌った楽曲を多く歌い、“水樹=強さ”だけではない、新たな表現で会場を魅了した。裏切りや二面性が表現された楽曲「ダブルシャッフル」ではスカートを翻しながら激しく踊りアツく歌い上げ、2009年の楽曲「MARIA&JOKER」ではカジノ風の映像をバックに映し出して楽曲の持つスリリングな世界観を表現。まるでラスベガスに来たような、ワクワクとドキドキが会場に広がった。

「Reboot!」でキャデラックを模した“Nanallac”に乗って登場し、ダンサーチーム・team YO-DAの紹介映像に水樹が怪盗役で出演していたことを受け、お宝を盗み出し勝利の帰還を表現するような演出で楽しませた。その後のセクシーなダンスを繰り広げながら歌う「GUILTY」、そしてラテンのリズムに乗せた洋楽調の楽曲「DNA -Dance 'n' Amuse-」では、間奏でフラメンコを取り入れたようなダンスでも魅せ、会場にはクラップが広がり、ダンサブルな楽曲もまた現在の水樹の魅力のひとつであることを印象づける。

今回唯一のバラード「Stand by you」も聴き応えがあった。暗闇の中で膝を抱えている者に寄り添ってくれるような楽曲だけに、《親愛なる友よ》というフレーズは全てのファンに捧げた言葉として響く。この約3年、コロナ禍によって水樹自身もアーティストとして葛藤し、さまざまな困難を乗り越えてきた。そうしたここにいたるまでの日々に対する、労いのようなやさしい歌声が、まるで背中をさすってくれている心地良さを与えてくれた。

今回のツアーは、楽曲に込められたメッセージやライヴ感を主体に選曲された印象だ。幕間のムービーは声優としての水樹を感じさせ、ファンにとっては嬉しいコーナーだっただろう。今回のツアーはタイトルが“HOME”ということもあり、アメリカンホームコメディ風の映像に、水樹とゲスト声優が吹き替えをするというものだった。会場によってお相手を務める声優が変わり、この日のゲスト声優である杉田智和とのアドリブ感満載の掛け合いに、会場には堪えきれない笑いがあふれた。

終盤は“私の全力を受け取ってください”との言葉をきっかけに、悲しみを超えて前を向く強さを歌った疾走感あふれる楽曲「MY ENTERTAINMENT」を繰り出す。バックに映し出された不死鳥の映像を味方に、観客は水樹とともに拳を振り上げながら心の声でコーラスを重ね、まさしく会場が一体となった。その一体感を引き連れ、水樹自身が作詞作曲を手がけたアッパーのメタル調ナンバー「アパッショナート」、ライヴの定番「ETERNAL BLAZE」へと続き、会場はオレンジ色のペンライトで埋め尽くされた。“やっぱりライヴは最高に気持ち良い”と水樹。“これからも全力で歌を届けたい”と力強く約束し、本編のラストは疾走感あふれるポップロック「全力DREAMER」で締め括った。

アンコールでは今回のツアータイトルでもある「HOME」が歌われ、バックには1月に開催された841日振りの有観客ライヴ『NANA MIZUKI LIVE RUNNER 2020 → 2022』の映像が映し出された。「HOME」は同ライヴでの感動をもとに水樹自身が作詞作曲を手がけたもの。“みんなの青い海の光景をどうしても歌にしたかった”と彼女。ライヴという奇跡と感動を明るく親しみある雰囲気で歌い上げると、観客は水樹と一緒に青いペンライトを左右に揺らし、会場は温かいムードでひとつに。「HOME」が示す、現場でなければ体験できないアツさと一体感が、まさしく目の前に広がった。

“最高に幸せです。いつかマスクを外した完全体でまた会いましょう”。

アーティストにとってツアーは生活の一部であり、ツアーでの経験が次のツアーを生むもの。ツアーの中止によって足踏みを余儀なくされた約3年の間、水樹はファンのことや自分にとっての音楽は何なのかを、休むことなく考え続けたことだろう。その考え続けたことの答えと言えるのがこのツアーだ。最新アルバム『DELIGHTED REVIVER』を軸にしたセットリストは今までのどのツアーとも違って新鮮であり、今という時代にアップデートされた水樹奈々の姿が、実に頼もしく光り輝いていた。

撮影:kamiiisaka/取材:榑林史章

水樹奈々

ミズキナナ:声優、歌手として高い人気を誇る。声優としてのデビュー作は1997年のプレイステーション用ゲーム『NOёL〜La neige〜』門倉千紗都役。歌手としては2000年12月にシングル「想い」でデビュー。09年6月に発売された7枚目のオリジナルアルバム『ULTIMATE DIAMOND』で声優として初のオリコンチャート1位を獲得し、11年12月と16年4月には東京ドーム2デイズライヴも大成功に収めた。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

    〜OPENING MOVIE〜

  2. 4

    3. Go Live!

  3. 7

    〜Cherry Boys コーナー〜

  4. 10

    8. つばさをひろげて

  5. 13

    11. Reboot!

  6. 17

    〜SHORT MOVIE〜

  7. 24

    <ENCORE>

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