LIVE REPORT

『二重スリット実験』 ライブレポート

『二重スリット実験』

GReeeeN/High Speed Boyz/kz (livetune) /八王子P/CTS/Kiyoshi Sugo

2014年04月06日@EX THEATER ROPPONGI

撮影:HIRO SATO(except Kiyoshi Sugo)/取材:石田博嗣

2014.04.23

“映像とリアルが融合”したイベント『二重スリット実験』。告知用のティザー映像で“体感する仮想音楽”と謳うも、“実験”と掲げられているだけに、仕掛ける出演者側も手探りであり、当然体感する我々、オーディエンスにとっても予測が立たない。しかし、それは両者にとって未知なる可能性であり、そこに“未来への提示”があることだけは感覚が感じとっていた。

“映像とリアルの融合”が意味するものは、トップを飾ったKiyoshi Sugoのステージで判明する。大音量で無機質なビートがループし、グリーンのレーザーが飛び交う中、銀色のマンモスの骨、頭蓋、ミロのヴィーナス像、サモトラケのニケ像...などが次々と現れ、プレイするKiyoshi Sugoの姿もシルエット状に浮かび、開始早々、観客を異空間へと導く。テクノ~エレクトロ~EDMを踏襲した楽曲に合わせさまざまなモチーフとリアルなプレイが交差し、ラストの映画『I, Robot』を彷彿させるロボットと人工心臓が意味するものは?など、イマジネーションを掻き立てられたのは僕だけではないはずだ。

一番手のKiyoshi Sugoが“映像と音楽の融合”なら、続くHigh Speed Boyzはまさに“映像とリアルの融合”。オープニングの映像はこれから始まるアクトのプロローグとなっていて、JIN(Vo&Gu)が事前インタビューでも語っていた変形ギター、そして“サン・フォーエヴァー”と称する者との出会いのストーリーが字幕になって紹介されていく。そして、1曲目「Mr.Dizzy」。もちろんHigh Speed Boyzが演奏しているが(JINは変形ギターをかき鳴らす!)、そのステージのセンターを務めるのはヴァーチャルな存在“サン・フォーエヴァー”。それは『ジョジョの奇妙な冒険』で言うところのスタンドであり、繰り出される重厚かつキャッチーなナンバーに合わせて華麗にブレイクダンスを踊り、時に分身し、時にヴォーカルも務める。バーチャルと生バンドとの融合という、前代未聞のステージが繰り広げられたのだった。

そして、さらなる“映像とリアルの融合”を実現させたのがGReeeeNのアクト。言うまでもなく、今まで一切顔出しをしていない彼ら。今回のイベントに関しても“メンバー本人による出演はございません”とアナウンスされていた。そんなGReeeeNのステージに登場したのは、メンバー4人をコピーしたようなアバターだ。さらにステージ奥の両サイドに大きな球状のセットが2個設置され、視覚的な奥行きも生んでいた。となれば、バーチャルとか、リアルとか、もはやそういったことは関係なく、フロアーはグリーンのサイリュウムを揺らし、純粋にGReeeeNを楽しんでいる。しかも、MCタイムも用意されていて、“只今、実験中です”と話したかと思えば、“今日はバラードなんか聴きたくありません! 「キセキ」や「愛唄」はしません! ダンサブルな曲を用意しました!”と宣言。その言葉のままに「陽の光」や「パリピポ」などダンスチューンで観客を上下に揺さぶり、沖縄音階を取り入れた「レゲレゲ」でタオルを旋回させる。これは前述した“体感する仮想音楽”なのだろうが、もはやロックバンドのライヴと遜色ない。そのことを何よりもファンの笑顔が物語っていた。

暖まった場内をさらにアツくさせたのは、八王子P。歌い踊る初音ミクが映し出される中、“こういうイベントって楽しんだ者勝ちなんで、君たちにかかってるよ”と観客を煽り、ボーカロイドをフィーチャーしたナンバーで会場の熱気を高めていく。“適当に体を動かしておけばいいから”と客席に呼びかける八王子Pと、それに呼応する会場。そこにライヴならでのはコミュニーケーションが生まれていたのも特筆すべきところだろう。正直言ってGReeeeNファンが多く見受けられたフロアーはいわゆる“クラブ的なノリ”に慣れていない様子もうかがえたのだが、終盤を迎える頃にはそれぞれが思い思いに体を動かし、飛び跳ね、一緒になって歌っていた。

続いてのアクトはkz(livetune)。開口一番で“ダンスミュージックの時間です。もうちょっと深いところに行ってみましょう”と観客を煽動し、クラップをうながす。初音ミクなどのボーカロイドが歌うメロウな旋律、フロアーを床ごと揺るがすような痛快なダンスビート、そして映像×ミラーボール×レーザーによる視覚的アプローチでもって、加速度的に観る者の高揚感を引き上げていくさまは圧巻だ。しかも、粒子や水泡などのモチーフの中にkz(livetune)の姿もくっきりと浮かび、“ビートが鳴った時に手を挙げるとDJは非常に喜びます!”との煽りもあって、その一挙手一投足に観客は反応していた。そして、最後はlivetune adding Fukase(from SEKAI NO OWARI)名義で発表した「Take Your Way」のリミックスバージョンで、会場はひとつになるのだった。

そのタイトル通り、映像とリアルによる実験が繰り広げられた本イベントのトリを務めるのは、LED覆面ユニットのCTS 。映像とリンクしながら鳴らされるダンストラックに乗る、ハートフルなメロディーとポジティブなリリック。オートチューン処理されているとはいえ、生身の人間の歌声であり、楽曲はまさに歌モノだ。J-POPに慣れ親しんでいる観客の取っ付きも良く、“楽しんだ者勝ち”のモードで躍動的なビートに体を預け、サイリュウムを揺らしている。そんなフロアーのテンションを最後に爆発させたのが、事前予告されてたGReeeeNのカバー! メロウな「遥か」がCTS 流に料理され、楽曲が持つウエットな世界観や温もりはそのままに、ダンスチューンとして昇華されていたのはさすが。GReeeeNファンにとっても新鮮な感動だったことだろう。

計6組のアーティストがそれぞれのスタイルで斬新かつ画期的な実験を行なった『二重スリット実験』。事前インタビューでJIN(High Speed Boyz)が“ライヴの進化という形態で、未来のひとつを提案”と語っていたが、確かにこの“提案”が新たなライヴの在り方だったり、音楽の楽しみ方となってくるのかもしれない。それはこの場にいた者...出演者であり、オーディエンスが肌で感じているはずだ。きっとそんな両者の経験が今日の“実験”を、数年後の“当たり前”に変えていくのだろう。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. <SET LIST>

  2. 【Kiyoshi Sugo】

  3. 1.Doors(Intro)

  4. 2.WIZMIZ

  5. 3.Spiral Lines

  6. 4.Not Anymore

  7. 5.Stellar

  8. 6.I'm With You

  9. 8.Knocking On Your Door

  10. 【High Speed Boyz】

  11. SE.Tokyo 0:30 am

  12. 3.タイトル未定新曲

  13. 4.I Wanna drink tonight

  14. 5.Apple

  15. 【GReeeeN】

  16. 【八王子P】※DJプレイ

  17. 【kz(livetune)】※DJプレイ

  18. 【CTS】

  19. 1. Opening(SE)

  20. 2. Sayonara Twilight

  21. 7. 遥か(GReeeeNカバー)