22/7
俯いていた、目の前の“僕”に問いかける。
2025年12月10日に“22/7”が3rdアルバム『ABC予想』をリリースしました。彼女たちは、秋元康の総合プロデュースによるデジタル声優アイドルプロジェクトです。今作には、3作連続アニメタイアップ主題歌となった、13th single「YESとNOの間に」、14th single「ロックは死なない」、5th single「あなたでなくちゃ」を含む全12曲を贅沢に収録。
さて、今日のうたでは、そんな“22/7”の歌詞エッセイを4日連続でお届け。第3弾は、収録曲「ロックは死なない」「あなたでなくちゃ」「箱庭の世界」にまつわるお話です。7曲目「 ロックは死なない 」は、作曲者のKubotyによるライナーノーツを。8曲目「 あなたでなくちゃ 」は、作曲者の中山翔吾のライナーノーツを。そして9曲目「 箱庭の世界 」は、作曲者のShoichiro Tokoによる短編二次創作をお届けします。ぜひ、歌詞とあわせてお楽しみください!
7.「ロックは死なない」 僕が尊敬してやまない大先輩、シライシ紗トリさんとの共作です。紗トリさんとの出会いは、僕がかつて所属していたTOTALFATというバンドをプロデューサーとして手がけていただいたのがきっかけでした。そこから長い時間をかけて親交が続いています。
僕がバンドを辞めたときや、行き詰まったときも紗トリさんのお家にお邪魔して相談に乗っていただきました。紗トリさんは僕にとって音楽のお師さんであり、心の兄貴分でもあります。余談ですが、お師さんという言葉を知らない方は北斗の拳を読んでください、聖帝サウザーの話です。この辺りの話は涙が止まりません。
さてこの曲のコンセプトは、"懐かしさ" と "新しさ" の両方が同居するロックチューンでした。ギターの歪みはいなたく、ドラムは現代的なタイトさを持たせ、ボーカルラインはアイドルポップの煌めきを残す、そんなハイブリッド感を目指しました。
制作の過程としてはまず、僕が楽曲のベーシックを作り、そこから紗トリさんがメロディとアレンジを徹底的に洗練させていくという流れでした。紗トリマジックは本当に凄まじく、メロディの展開の付け方、アレンジの緩急、どれひとつ取っても学ぶことばかりでした。
そして完成したこの楽曲に対して秋元先生が「ロックは死なない」というタイトルを付けてくださったことも、作り手としてとても誇らしく忘れられない出来事です。僕とシライシ紗トリさんには、"ロックに育てられた"という共通点があります。その気概のようなものが、この楽曲を通してきっと伝わったのではないかと思っています。
ロックは音楽理論や技術だけではどうにもならない「感情」を表現するための音楽だと僕は思っています。ギタリストである僕は、ギターサウンドに必ず自分の魂を込めています。そんな想いの一端がこの楽曲を通してナナニジの皆さんの歌声に乗り、リスナーの皆さんに届いていたらこれ以上嬉しいことはありません。
<Kuboty>
8.「あなたでなくちゃ」 「あなたでなくちゃ」は、自分の生活がそのまま混ざっていった曲になりました。
この曲を書いていた頃、僕自身の毎日には、学生でもないのに“夏休みみたいな時期”がふいに訪れていました。明日はなんでもできるような気がして、でも気づけば一日が静かに終わっていくような日々です。そんな感覚と、一瞬で過ぎ去ってしまう時間への名付けようのない焦りが、この曲の感情になっていきました。
夏休みの期間に熱中していたゲームやスポーツへの向上心、一方的で、ある種の恋のような気持ちも主題としていました。特定の誰か・何かではありませんが、"それを強く想いすぎて戻れなくなる感情や情熱"をテーマに置いて書くことになりました。
制作期間中、僕の頭の中では「あなたでなくちゃ」という部分のメロディーがずっと鳴り続けていて、そのフレーズが曲の方向を自然に形作っていきました。メロディーが鳴り止まず、頭の中で反芻し続けることはそこまで多くはなく、自分にとっても珍しい経験でした。また、そのイントロのメロディーができた時の最初の感動は、今でも強烈に記憶に残っています。
この曲のアイデンティティは、歌以外のメロディーが多数存在することです。考えが渦を巻くように、消えない思い出が次々に浮かんでくる。その散らかった思考をそのまま音にしたくて、多層的な裏メロのラインを配置していきました。やり残したことや宿題がどこか片隅に残り続けるような、少し落ち着かない感じにも近いのかもしれません。
振り返ると、この曲はいろんな意味を背負うことになりました。TVアニメ『カッコウの許嫁 season2』のEDとして、西條和さんの卒業前の最後のシングルとして、そしてさまざまな環境にいる人がこの曲を聴き、それぞれの生活の中で違う温度を感じていく歌になってくれたらいいと思っています。自分が書いた以上の重みを持って広がっていく姿を見て、曲というのは、本当に受け取った人の数だけ、それぞれに違う表情を見せていくのだと感じました。
改めて、あの時の自分の生活と気持ちが、そのまま音楽になっていたのだと思います。
この曲が、聴く人それぞれの“夏の記憶”のどこかにそっと残ってくれたら嬉しいです。
<中山翔吾> 9.「箱庭の世界」 短編二次創作「It's a small world.」
まただ。
同じことを延々と繰り返すだけの平穏な夢。
管理され、限界を決められた哀しい夢。
得体のしれない恐怖が僕を包むその世界に、いつも引きずり込まれそうになる。
早く朝になってほしい、たかが夢にこんなことを思うのは僕だけだろうか。
さて、いつもの電車に間に合うよう家を出なければ。
窓の外に広がる青空もどことなく冷たい。
昨夜見た天気予報通りではあるが…。
満員電車の乗り方も慣れたものだ。
乗客の大半が次の駅で押し合いながら降りていく。
僕の目的地はまだ先だから、このタイミングで座っておきたい。
周りを見渡していると、ちょうど乗降口寄りの座席が空いた。
パーテーションにもたれかかることができる人気席だが、幸運にも座ることができた。
今朝の夢のせいで少し寝不足かもしれない。
発車アナウンスを聞き流しながら、少しだけ目を瞑ることにした。
その後、どれくらい寝てしまったのか。
やけに静かな車内に違和感を覚える。
しまった、目的地を通り過ぎたかもしれない。
焦る僕の他には、もうひとりしか見当たらない。
まるで鏡を見ているような奇妙な感覚。
それは明らかに“僕自身”だったからだ。
「あなたは、誰?」
俯いていた、目の前の“僕”に問いかける。
「僕は、僕だ。そう決められているから。」
感情のないような、それでいて自信に満ちた返事。
どこかで見たことのある光景だ。
そうか、これは夢だ。
同じことを延々と繰り返すだけの平穏な夢。
管理され、限界を決められた哀しい夢。
もし、目の前にいる“僕自身”があの夢の僕なのだとしたら。
かけるべき言葉は既に決まっていた。
「狭すぎる世界だ、箱庭の外へ…。」
<Shoichiro Toko>
◆紹介曲「 ロックは死なない 」 作詞:秋元康 作曲:Kuboty・シライシ紗トリ 「 あなたでなくちゃ 」 作詞:秋元康 作曲:中山翔吾 「 箱庭の世界 」 作詞:Shoichiro Toko 作曲:Shoichiro Toko・平松建治 ◆3rdアルバム『ABC予想』
2025年12月10日発売
<収録曲>
1. 22/7
2. Why are you crying ?
3. スパシーバ!
4. あざす
5. 佐藤さん
6. YESとNOの間に
7. ロックは死なない
8. あなたでなくちゃ
9. 箱庭の世界
10. 春雷の頃
11. 後でわかること
12. 理論物理学的 僕の推論