これを恋と呼ぶには苦すぎてきっとむせてしまうでしょう。

 2024年4月24日に“とた”が新曲「片依存」をリリースしました。恋人への一方的な依存をやめられない女の子の盲目的な恋愛が歌われた楽曲。POPで中毒性のあるトラックに、可愛らしさと歪さが共存する、とたワールド全開の楽曲アレンジにも注目です。プロデュースは、数々の話題曲を手掛けるESME MORIが担当。1stシングル「君ニ詠ム。」以来のタッグとなります。
 
 さて、今日のうたでは“とた”による歌詞エッセイをお届け! 綴っていただいたのは、新曲「片依存」にまつわるお話です。コロナ禍に生まれたこの歌。どんなきっかけから歌詞が作られたのか。また、サウンドのお気に入りポイントは…。片依存から抜け出せないあなたへ。ぜひ歌詞と併せて、エッセイをお楽しみください。



「片依存」という曲をリリースしました。
共依存になれないフラストレーションを歌っています。
 
この曲を最初に作ったのはコロナ禍。その頃の生活といったら酷い時は1日のうち22時間くらいゲームに費やしていたし、常に誰かからの連絡を待っていました。取り戻せない時間と視力。今思い返しても勿体なくて怠惰、不健康な高校生活です。暮らすというよりただ時間が過ぎる毎日でした。
不健康な環境におかれると心も歪み偏っていきます。それこそスマホ依存症。友達にさえ依存していたんじゃないかと思います。
その生活から脱却するべく、戒めのように書いていた歌詞を曲にしました。
 
この曲の我ながら面白いと思っているところは、視点が二層になっているところです。基本的には主観的な目線で書きましたが、Dメロからは少し引いて客観視しています。<これを恋と呼ぶには苦すぎて きっとむせてしまうでしょう>この曲の中では、やけに冷静さを帯びている歌詞。
 
ワンコーラスを制作してから時間をあけてフルに取り組んだことで、逃げ道のヒントのようなパーツを組み込むことができました。2年の間があったからです。
依存していると分かって対処法を調べたり、友達に相談したり、答えを求めて処方薬を受け取ってもその薬を飲むことを後回しにします。その繰り返し。
そんな私も最近SNS依存から抜け出そうと心がけていますが、この文章を書きながら気がついたらInstagramを開いていました。困った。
頭の中を無意識に支配されていること、気づいているんですけどね。お薬アラームみたいな歌詞です。
 
甘くて重たいめんどくさい歌詞ですが、曲にしたら案外聴けたもんだと思いました。メロディーを作る時ギターを手にしていたので、跳ねたアルペジオを弾いていました。そこからフルを制作し、アレンジをESME MORIさんにお願いしました。
ポテトチップにチョコをかけて美味しい、みたいに甘重(あまおも)だけど塩っぱくて乗れるといったサウンドです。かわいいだけじゃない狂気をブラスで表現してもらっていて、特に私のお気に入りです。たくさんライブでうたいたい。
 
歪んで傾いていく自分を知りながら、きっとなんとなくその状況を楽しんだりします。やめたくてもやめられないほど好きなものが蝕み、形づくられたものもまた自分です。溺れもがきながら泳ぐのが上手になっていくので、それまでの間この曲がビート板になればと思います。そして時間が経ってまたこの曲を聴いた時、もう必要ないと思えたらうれしいです。
 
<とた>



◆紹介曲「片依存
作詞:とた
作曲:とた