たかが10年されど10年。

 2022年2月16日に“家入レオ”が、10周年を記念し、ベストアルバム『10th Anniversary Best』をリリース!今作は、13thシングル「ずっと、ふたりで」以降にリリースされた全10曲の大型タイアップ曲と未発表新曲2曲を含む、家入のベストアルバム第2弾となっております。アルバムの1曲目に収録される新曲は「Borderless」。そして、アルバムの最後、14曲目に収録される新曲は「花束」です。
 
 さて、今日のうたコラムではそんな“家入レオ”による歌詞エッセイを3週連続でお届け!今回が最終回。綴っていただいたのは、今作のラストに収録される新曲「花束」のお話です。ストックフォルダのなか、時が来るのを待ち続けていたメロディーに、やっと綴ることができた想いとは…。歌詞と併せて、このエッセイを受け取ってください。



「花束」が「花束」になるまでには、とても長い時間を要した、と思う。曲のイメージを擦り合わせ、久保田さんが作るトラックに浮かんだメロディを乗せては精査し、ふたりで制作していた曲が形になった日。
 
スピーカーから流れ出すメロディに現場にいる全員が耳を傾けている光景を部屋の隅から見つめながら、私は私の鼓動が早まっていくのを感じていた。ピアノの音と歌声が途切れ、一瞬だけ部屋に降りる沈黙。
 
言葉よりも先に表情を読んでしまうのは、真実にしか人の心を動かす力がないと思っているから。率直な意見がより良い作品に近づく為には必要で、主観と客観のバランスがいつも難しい。だから、あったかくて大きくて何処か懐かしい気持ちになるメロディが出来たね、と口元に微笑みを浮かべながら家路に着きながらも、しばらくの間このメロディで私が歌いたいことは一体何だろう? と反芻しながら生活していた。
 
ストックフォルダに追加され、時が来るのを待ち続けていてたこのメロディと再会を果たしたのはその少し後。デビュー10周年のアニバーサリーライブが東京ガーデンシアターで決まった時、あのメロディにこれまでの想いを綴りたいと思った。
 
たかが10年されど10年。時間の捉え方は生きてきた年数やその時間に対する快楽度合いによっても変わってくるのだろうけれど、本当に色んなことがあった。
 
10代から20代になり、自分の中で自然に形を変えていったもの。知りたいと感じたものに心のまま手を伸ばすことの純粋な喜びと酸味。家入レオは何処に向かおうとしてるんだろう? と心配させてしまったり、驚かせてしまったり、私が私に迷ったりきっとお互いに思うことがあったはずだ。だけどそれも全て一緒にいるからこそ生まれるものであり、過ぎてしまえば、喧嘩したこと、涙したことの方が懐かしく語り合えたりするから、生きるって計り知れないな、と思う。
 
もう一度言う。本当に色んなことがあった。そして多分きっと、これからが本番なのだと思う。私は歌を歌う。その気持ちに正直に道を選んでいきたい。私の上を通り過ぎる日常や直面する困難や誰かを深く求める心が音になって言葉になって、聴いてくれる人の物語になること。私のドラマがあなたの人生と深く少しでも結びついたら、とまだ夢を見続けていたい。
 
数日前に花瓶にいけたラナンキュラスはもうすぐ見頃を終えるはずで、美しさに終わりがある、と眺めるから精一杯の黄色がこんなに目に鮮やかで。それは悲しみではなく、喜びなのだと私は知っている。
 
私が送り続ける音楽の「花束」があなたの胸に届くのか、それは分からない。分からないけれど、届くかもしれないし、届かないかもしれないから、音楽は人の心を掴んで離さないんだと思う。

<家入レオ>



◆紹介曲「花束
作詞:家入レオ・Kanata Okajima
作曲:家入レオ・久保田真悟(Jazzin' park)

◆『10th Anniversary Best』
2022年2月16日発売
初回限定盤A:2CD VIZL-1989 ¥4,950(税込)
初回限定盤B:CD+DVD VIZL-1990 ¥4,400(税込)
通常盤:CD VICL-65638 ¥3,300(税込)
10th Anniversary盤:CD+Blu-ray+Goods NZS-874 ¥11,000(税込)
※ビクターオンラインストア限定販売
 
<収録曲>
01. Borderless
02. 空と青
03. Answer
04. 未完成
05. Prime Numbers
06. この世界で
07. Spark
08. もし君を許せたら
09. あおぞら
10. 恋のはじまり
11. 春風
12. Relax
13. ずっと、ふたりで
14. 花束