紫蘭の花

軒端(のきば)の鉢植え 紫蘭の花は
むらさき薄紅 涙の花よ
昨夜(ゆうべ)も移り香 襟(えり)に乗せ
酔って帰った あなたのことを
知らん 知らんと 首を振る

男の夢など 女は知らぬ
女の淋しさ 男は知らぬ
今夜もどこかの 浮かれ町
悪い噂が 届いて来ても
知らん 知らんと 横を向く

いつかはあなたの その目が醒(さ)めて
こころも戻って 来る日があるわ
それまで妻の字 逆さまに
待つと読み替え 暮しています
知らん 知らんの 花になる
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